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イベントレポート(AD)

アウトドア開発のススメ! 開発は最高のパフォーマンスを発揮できる場所でやろう

Oracle Cloud Developer Day 2016 セッションレポート

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 アプリケーション開発は、個々の想像力や環境で結果が大きく変わるクリエイティブな作業だ。しかもオフィスに行かなければできない仕事ではない。それなら最もパフォーマンスの上がる場所でやれば、より楽しくクリエイティブな仕事ができるのではないか――。そこで新しいアプリケーションの開発のあり方を追究しているのが、スノーピークビジネスソリューションズ 代表取締役の村瀬亮氏と、日本オラクル クラウド・テクノロジー事業統括 Cloud Platform事業推進室 エバンジェリストの中嶋一樹氏である。10月27日に東京・恵比寿のウェスティンホテル東京で開催されたイベント「Oracle Cloud Developer Day 2016」のセッションで、両氏はアウトドアでのアプリケーション開発を提案。そこにはどんな可能性があるのか。本稿ではこのセッションの模様をお伝えする。

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アウトドアとテクノロジーの融合で、人が人らしく働く環境を構築

最近、キャンプが好きで長野県に行く機会が多いという中嶋氏。キャンプに出かける主な理由は、趣味としてキャンプを楽しむことだけでなく、アプリケーション開発をするためでもあるという。「長年、仕事に携わっていると、どういう環境・時間だとパフォーマンスが良いか分かってくる。それが私の場合は朝であり、アウトドアだということが分かった」と中嶋氏は語る。

日本オラクル クラウド・テクノロジー事業統括 Cloud Platform事業推進室 エバンジェリスト 中嶋一樹氏
日本オラクル クラウド・テクノロジー事業統括 Cloud Platform事業推進室 エバンジェリスト 中嶋一樹氏

そして、そんなアウトドアでの働き方を以前より実践しているのが、村瀬氏である。村瀬氏が代表を務めるスノーピークビジネスソリューションズ(以下、SPBS)は、今年7月に設立されたばかりの新会社だ。アウトドア用品メーカーのスノーピークと、村瀬氏が1999年に設立したITコンサルティング企業、ハーティスシステムアンドコンサルティング(以下、ハーティス)の2社により設立された。企業における最大の問題は「人財」に関することという村瀬氏。SPBSはアウトドアとテクノロジーの融合により、人が人らしく働く環境や関係性を構築し、企業の人財に関する課題の根本的な解決を目指す。

具体的には、ビジョンシェアやチームビルディング、クリエイティブマインドの醸成、およびITリテラシーの向上とワークスタイルの変革体験などを通して、社員一人ひとりの人間力を高め、働きがいのある魅力的な組織づくりを総合的に支援していくという。

SPBSのコーポレートキャッチフレーズは「自然と、仕事が、うまくいく」。教育や研修を提供するだけではなく、無理なく社員が勝手に考えて勝手に働くいい会社を作っていくことに貢献したいと、村瀬氏は意気込みを語る。

「SPBSでは、やりがいのある仕事や仲間との良好な関係づくり、発想の転換の機会を与えられるサービスを企画した。それがSPBSが提案する新しい働き方『OSO/TO』(Outdoor Small Office/Third Office)です」(村瀬氏)

SPBSが提案する新しい働き方「OSO/TO」
SPBSが提案する新しい働き方「OSO/TO」

入社式での訓示もキャンプ場から

そもそも、なぜ村瀬氏は先のようなコンセプトを持つSPBSを立ち上げようと思ったのか。そんな中嶋氏の問いに対し、村瀬氏は次のように明かす。

「友人に誘われて1年に1回ぐらいキャンプに行っていたが、正直、キャンプなんて面倒くさいと思っていた。しかし、キャンプですばらしい時間を過ごしていくうちに、いつかこんな環境が日常にあればいいなと思った」(村瀬氏)

そこで村瀬氏は、ハーティスのサテライトオフィスを作ったり、テレワークを推進したりしたという。また、高知県で地域の資源を活かし、新たな出会いやアイデアを育む場を展開している特定非営利活動法人「土佐山アカデミー」に参加し、場所を一画借りてアウトドア生活も体験してみた。2015年4月のことだ。実はその体験期間中、ハーティスの入社式が予定に入っていた。

「だから、入社式の訓示をオンラインで行った」と村瀬氏は笑いながら話す。ただし、それには「ITを使えば、いろんな働き方ができる。そういう提案をIT企業として実践していきたい、という考えを明示する目的もあった」(村瀬氏)。

スノーピークビジネスソリューションズ 代表取締役 村瀬亮氏
スノーピークビジネスソリューションズ 代表取締役 村瀬亮氏

そして、ハーティスではキャンプ用品を150万円かけて購入。費用は「福利厚生費として計上している」と村瀬氏。公園でのバーベキューはチームのモチベーションの向上にもつながっているという。また、「役員会も外でやっている。ドーム型テントで会議をすると、殺伐とするような議題でもそういう雰囲気にはならない」(村瀬氏)というメリットもあるそうだ。

それから半年後、村瀬氏はスノーピーク主催のイベント「スノーピークウェイ」で同社の山井社長と出会い、「チームビルディングのためにアウトドアを活用したい」ということを訴えた。新潟県三条市にあるスノーピーク本社へ相談に訪れた際も、村瀬氏はホテルに泊まるのではなく、燕三条のとある場所にテントを張り、そこで寝泊まりした。そんな村瀬氏の提案に、山井社長も「世の中を変える可能性がある。一緒にやろう」と賛同。SPBSはそうして設立された。

ドーム型テントで行っているハーティスの役員会。まさに風通しの良い会議になっている模様
ドーム型テントで行っているハーティスの役員会。まさに風通しの良い会議になっている模様

ソフトウェア開発者を幸せにする方法の1つがアウトドア

村瀬氏のその言葉に、中嶋氏も「そう、アウトドアでの仕事は気分を楽しくしてくれる」と相づちを打つ。中嶋氏は、アウトドアで開発を行うことの意義を、開発者コミュニティに提案したいと考えている。

中嶋氏はその動機の1つとして、あるショッキングな調査結果を紹介した。同志社大学技術・企業・国際競争力研究センターの調査によると、日本のソフトウェア技術者は、仕事に対する「やりがい」や「満足度」といった心的生産性指標が、調査対象国の中で最下位だったという。

「本来、ソフトウェア開発者にとって開発業務は“仕事とはいえない”というぐらいの楽しいもの。それが先のような感想を多数の開発者が持っているのは、何かねじれが生じているからだ。そのねじれを解消し、開発者が幸せになるための1つの手段がアウトドアではないかと考えた」(中嶋氏)

実際にその仮説が正しいか、中嶋氏は自身で検証を行うことにした。都内にある自宅を出て向かったのは、長野県伊那市郊外の千代田湖キャンプ場(標高1300メートルにあるため、冬期期間は閉鎖)。夕方の16時に到着し、その日の作業はシェルターの設営のみで、あとは燻製を作ったりしてまったりと過ごしたという。シェルターを選んだのは、リビングルームとして使え、インナーテントを用意すれば快適に寝泊まりできるから。そして朝を迎えるのだが、「朝のすがすがしさは最高。気持ち的にもポジティブになり、開発にとっても最高な時間だと実感した。最高な気分のまま、仕事を始めることができた」(中嶋氏)

中嶋氏が準備したシェルターとテーブル、チェア、コーヒーなど
中嶋氏が準備したシェルターとテーブル、チェア、コーヒーなど
すがすがしさ最高の環境で仕事をする中嶋氏
すがすがしさ最高の環境で仕事をする中嶋氏

中嶋氏は、このときに使用したキャンプ用品の多くをスノーピーク製でそろえた。「スノーピークが本社を構える燕三条の伝統産業は鍛冶産業。その伝統を今に受け継ぐ鍛冶職人がこだわって作られているスノーピーク製品に感動したため」とその理由を語る。例えば、スノーピーク製品の1つに「ソリッドステーク」というベストセラーがある。テントやタープを固定するために地面に打ち込む「ペグ」という杭だが、村瀬氏いわく「石を貫通するぐらいの性能を持つ」のだそうだ。

スノーピーク製品を使うと、仕事をする環境も簡単に作れるという。シェルターでゆっくり過ごすために使っていたローチェアを撤収し、代わりに「ワンアクションテーブル」と「FDAチェア」を設置すれば完了だ。

「設置が大変だとアウトドアで仕事をしようとは思わない。ワンアクションテーブルは、商品名のとおり、ワンアクションでセッティングができるので、心理的な障壁を感じることはないと思う」と話しながら、中嶋氏はワンアクションテーブルの設置を参加者の前で実演。その簡単さを紹介した。それだけでなく、「ぐらぐらしないなど、作りがしっかりしているところもおすすめポイント」(中嶋氏)と語る。

アウトドアで仕事をしていると、息抜きの時間が自然と「アイデアを練る時間になっていた」と中嶋氏。早朝から14時まで仕事をして、約1時間かけて撤収し、自宅に戻ったという。

ワンアクションテーブルを広げたりたたんだりするコツを伝授する中嶋氏
ワンアクションテーブルを広げたりたたんだりするコツを伝授する中嶋氏

アウトドアでは「フロー状態」で開発できる

しかし、いくらアウトドアでの開発がすばらしいといっても、アウトドア専用のテーブルやイスをそろえるにはある程度の出費が伴う。また、家族がいれば、そもそも「キャンプで仕事」を認めてもらうこと自体が難しいかもしれない。この点について、中嶋氏は次のようにアドバイスする。

「スノーピークの製品は品質が高いので、自宅でも仕事用として活用すればよい。また、キャンプとまでいかなくても、子供をつれて近所の公園で仕事をするのでも十分効果がある」(中嶋氏)

実際、中嶋氏は子供といっしょに駒沢公園(都内にある広い公園)に行き、子供を遊ばせながら、仕事をして休日を過ごすこともあるという。

キャンプ場以外でも活用できるアウトドアテーブルとイス
キャンプ場以外でも活用できるアウトドアテーブルとイス

アウトドアで開発を勧める理由について中嶋氏は、「フロー状態を作りやすいため」と説明する。フロー状態とは完全に没頭した状態のことで、集中ゾーンに入っていることを指す。「桁違いの早さでコーディングできるだけではない。1つ1つのコードの品質も高く、すばらしいアウトプットが期待できる」と中嶋氏は力強く語る。

また、中嶋氏は「開発者は自分自身の精神状態・作業環境にセンシティブであるべき」と指摘する。中嶋氏にとって最高のパフォーマンスを発揮できる場所が「キャンプ場」なのだ。「アウトドアもアプリケーション開発も好き。キャンプ場で開発すると、仕事と好きなこととの境界線がなくなり、好きを仕事にできる。世の中の開発者が健全な状態で仕事をすれば、もっと開発が楽しくなるのでは」(中嶋氏)

アウトドアでの開発は、試す時期も大事だと村瀬氏は続ける。「ベストシーズンは春と秋。最初はベストシーズンに実践してほしい」(村瀬氏)

天候も重要な要素だが、たとえ雨が降っても、スノーピーク製のテントやタープでは「絶対、中は濡れない」のだそう。ただ「強風時はNG」と中嶋氏。また、雨だと撤収作業が大変なので、やはり天気の良い日に実行するのが得策だろう。

あと、アウトドアで仕事をする際、テーブル高は65cm前後、イスの座面は40cm前後であるものが使いやすいと村瀬氏。電源への不安については、「最近のMacBookであれば、1日なら充電しなくても使えるはず」と中嶋氏はいう。心配であれば、PC用モバイルバッテリーを持参するのもいいのではとアドバイスする。ネットワークについては、データ通信カードやテザリングが基本となる。ただし、キャンプ場によっては圏外のところもある。事前に調べておくことが重要だ。

こんな場所でパソコンを広げたら、開発が何倍も捗りそう
こんな場所でパソコンを広げたら、開発が何倍も捗りそう

チームビルディングにもアウトドア開発が効く!

そしてもう1つ、あれば便利なモノとして中嶋氏が挙げたのが「プロジェクター」である。超短焦点で、バッテリー内蔵のものが便利だという。プロジェクターがあると、チームでアウトドア開発を行う場合に成果物を共有しやすいからだ。また、キャンプはチームビルディングそのものにも役立つと中嶋氏はいう。「テントやタープの設営、炊事は最高の共同作業。特別な体験を共有したチームは結束力が強くなる」(中嶋氏)

中嶋氏と村瀬氏は最後に参加者に向けてそれぞれ次のように呼びかけ、セッションを終えた。

「自分が本当にいいと思う環境で、好きな開発作業に取り組むことは、本当に幸せ。ただし、アウトドアは1つの手段でしかない。ぜひ、一緒に開発者が幸せになる環境を整備していきましょう」(中嶋氏)

「SPBSでは、アウトドアでの開発やミーティングを体験してみたいという方に、その良さを知ってもらうための研修サービスを用意している。ぜひ、参加して体感してほしい」(村瀬氏)

なお、このセッションの後、スノーピーク製のキャンプ用品で用意された「アウトドア開発」環境の展示も行われた。ホテルの一室の中なので新鮮な空気まで体験することはできないわけだが、開放感は十分想像できた。空間の壁を取り払うと、思考の壁や意思疎通の壁まで取り払われるのは間違いなさそうだ。

アウトドア開発環境の展示。これがキャンプ場などの広々として空気のおいしい場所にあれば、確かに仕事を気持ちよく進められそうだ
アウトドア開発環境の展示。これがキャンプ場などの広々として空気のおいしい場所にあれば、確かに仕事を気持ちよく進められそうだ

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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