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特集「ソフトウェア開発 自動化ツール」(AD)

アジャイルへの変化に恐怖ではなく喜びをもたらしたい――リックソフト代表取締役 大貫 浩氏 × アトラシアン長沢智治氏 対談

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 Atlassianなどのツールでソフトウェア開発現場を変えることにチャレンジし続けるリックソフト。同社の代表取締役 社長執行役員の大貫 浩氏は、いま一番気になっている現場として、ソフトウェアに重心を移しアジャイル開発も導入しなければと、もがく日本国内の製造業を挙げる。GEなど海外の大手製造業の動きに影響されたものだ。大貫氏が「アジャイルへの強迫観念」と呼ぶその心理・行動は、アジャイルの本来の目的である“魅力あるソフトウェア開発”から離れてしまう危険をはらむ。そこから脱するには何が必要か。大貫氏と、アジャイル開発の普及活動を長く続けているアトラシアン シニアエバンジェリスト 長沢智治氏のご両名に聞いた。

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アジャイル導入にもがく製造業

――大貫さん、リックソフトはどのような事業を展開しているのですか?

大貫 浩氏(以下、大貫):当社(リックソフト)はツールソリューション事業やソフトウェア開発事業を手がけるソリューションベンダとして、価値あるツールが魅力あるソフトウェアを作り上げ、組織の生産性を向上するというポリシーの下、システム開発やプロジェクト管理といった現場に多くのツールやサービスを導入してきました。とくに「JIRA Software」(以下、JIRA)をはじめとするAtlassian製品に関しては、おかげさまで、日本のみならずアジアパシフィックにおいて売上がトップになりました。ANAシステムズ様、リクルートライフスタイル様、IIJ様、慶應義塾大学様など、業種業界を問わずに幅広く導入いただいています。

リックソフト 代表取締役 社長執行役員 大貫 浩氏
リックソフト 代表取締役 社長執行役員 大貫 浩氏

――アトラシアンの正規販売代理店(プラチナエキスパート/エンタープライズエキスパート)でもいらっしゃいますよね。Atlassian製品はアジャイル開発を支援するツールが中心です。アジャイルという考え方も、国内の開発現場に紹介されてずいぶん経ちますが、現場のお客さんを見ている大貫さんの目には率直にどのように見えていますか?

大貫:これまでアジャイルはソフトウェアベンダや開発会社などで採用されてきました。しかし、最近では製造業などでもアジャイルが拡まりつつあって、今はそうした現場での動きが気になっています。

 製造業トップのGEが「ソフトウェア企業になる」と宣言して、ソフトウェアの重要性を前面に出した施策を次々と打ち出しました。あの影響も大きいと思うのですが、これまでソフトウェア開発とはあまり縁のない世界だった国内製造業などの間でも「ソフトウェアを会社の原動力にしよう」という空気が醸成されているのは確かです。でもそのソフトウェアをどうやって開発したらよいのかわからない。そこでもがいているのが現状だと見ています。

 受託のSIerも同様ですけどね。アジャイルにしなければ魅力あるソフトウェアを作れないのは分かっている。でもやり方が分からない。世界に対して魅力あるソフトウェアを、しかも速いスピードで提供していく。そんなことはいままでやったことがない、だから途方に暮れてしまう。

長沢智治氏(以下、長沢):やらなきゃいけないことは分かっている。海外の事例もたくさん紹介されている。でも、アジャイルに関する知見もノウハウも現場で共有されていないから、手のつけようがないという感じですよね。そもそもアジャイル開発というのは、まずやってみて、失敗するにしても早い段階で失敗して、顧客からフィードバックを得て改善していくというプロセスなんですが、そういう環境が整っていないところが多い印象はあります。

大貫:とくに製造業なんかは「フィードバックを得る」ということにまったく慣れていないですね。ソフトウェアを作る際にどうして“フィードバック”が必要なのか、たぶんその意義があまり分かっていない。そもそも、今までの製造業では、フィードバックはそんなに簡単に得られるものじゃないんですよね。ある程度のサイズのコミュニティも必要ですし。

長沢:そういった観点から言えば、IT系のWebサービス企業などでは積極的に情報共有しているのではないでしょうか。ソフトウェア開発の勉強会なども、都内であれば毎週のように開催されていますし、会社をまたいで情報を共有するという文化も拡がりつつあるように見えます。

アトラシアン シニアエバンジェリスト 長沢智治氏
アトラシアン シニアエバンジェリスト 長沢智治氏

大貫:そうですね。大手製造業の開発者の間でも、コミュニティの重要性に気づくところが増えているようです。ただ、製造業、とくに組み込み系は「ネットにつながる環境がこれまで当たり前ではなかった」という点で、Webサービス開発企業などと異なるんですね。

 たとえば、組み込みの制御系システムのファームウェアを、Webサービスのように1〜2週間でアップデートする、というのは以前だったらありえないし、そもそもOSの作りからして違うので無理だったんです。ところが現在は、Webアプリと同等のスピードや手法じゃないとお客さんが買ってくれなくなってしまっている。そうした意味で、組み込み系ソフトウェア開発の現場の文化はすごく変わりつつあります。

長沢:変化というのはある意味、恐怖でもあります。いまある事業が数年後にはまるまるなくなってしまうかもしれない。今まで蓄積してきた技術を捨てざるを得ないかもしれない。そういう劇的な変化が昔に比べて起こりやすくなっているし、対応を迫られるケースはこれからも増えるでしょう。不安に思う企業が増えるのは仕方がないのかもしれません。

大貫:リックソフトはそうした現場で起こりつつある変化に悩む企業に対し、ツールを通して魅力あるソフトウェアづくりを支援していきたいと思っています。Atlassianのツールはその最たるものですね。

 もちろん、いま引き合いに出した製造業以外にも多くの会社のお手伝いをしているんですが、個人的には日本の国力、そしてこれまでの経済発展の流れから考えると、やはり製造業が頑張っていかないとダメだと思うんです。ハードウェアとソフトウェア、その両方の魅力を備えた製品を日本の製造業から世界に数多く出していってほしい。心からそう願っています。

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測定からは生まれてこない「確実に現場の空気が変わる瞬間」

――長沢さんはアジャイル開発の普及に長く尽力してこられました。その間に感じた変化を挙げるとすると何がありますか?

長沢:コミュニケーションのあり方が大きく変わってきたと思います。先ほど話に出た勉強会もコミュニケーションの機会ですよね。情報共有というのは非常に重要なコミュニケーション手段ですから、社内でこれを積極的に進めることは、現場に合った環境づくりにもアジャイルの普及にも大きなカギになると考えています。やり方を変えるためにツールを導入することで劇的に変わった例を、コンサルの現場でもいくつも見てきました。

大貫:プロセス改善のお手伝いをしているときも、そう思う瞬間はありますね、「あ、この会社変わったな」と。

長沢:そう、確実に現場の空気が変わる瞬間がありますね。その1つの例が「無駄な会議が減り、現場での会話が増える」というものです。もっと定性的な表現をすれば「雰囲気が良くなる」「良くないものを良くないと言える」。こういう空気に現場が変わることは非常に重要です。

 隣の人間が何をやっているか分からない、そんな現場でいくら会議をやっても、問題点を洗い出すだけで精一杯で、解決にも向かわないし、雰囲気も良くなりません。ツールを使うとよく“定量的な数値を”ということにこだわりたくなる人がいらっしゃる。気持ちは分かるんですが、現場を見てきて、定性的な変化もすごく大切だなと思うんですよ。

 ツールはまず、現状を見える化する。それから、1つだけでもいいからできることを決める。たとえば「ソースコードのバージョン管理をちゃんとやる」とか、そのレベルで最初は十分なんですよ。そこを糸口にして「ソースコードのコミットのタイミングが人によって違っていた。それくらい同じにしようよ」とか会話が拡がっていく。こういう定性的な雰囲気は、無理に“組織横断的な横串展開”なんかをやるよりも、ずっと浸透しやすいんです。数字はその後からついてきますから。

 ツールを入れるとなると「費用対効果を出せ」と言われるケースも多いのですが、そこは「現状では費用対効果は出せない」と逆に突っぱねてほしいですね。「費用対効果が出せないからこそ、現状を見える化するためにツールを入れる」という提案に変えてもらったほうがよいと思っています。

アジャイル導入による開発現場のビフォー・アフターをあまた見てきたお二人からは「どうすれば・何をすれば開発者に幸せがもたらされるか」を熟知した安心感があふれている
アジャイル導入による開発現場のビフォー・アフターをあまた見てきたお二人からは「どうすれば・何をすれば開発者に幸せがもたらされるか」を熟知した安心感があふれている

共有したいのに誰もが隠す「失敗情報」を出したくなるツール

大貫:ただ、製造業に話を戻すと、そう簡単にはいかない部分もたしかにあるんですよね。先ほども話したように、現場では環境も意識も変わりつつある。世の中が変わっているのだから作り方も変えないといけないと、みんな強く思っている。でも、ツールを入れるだけでは改善しにくい部分があって、それはやはり文化の問題が根強いのかなと。日本の製造業は「正しい情報を記録する」ということにはすごく積極的です。ところが「不確かな情報を共有する」という文化はまったくないんですね。噂とか、思いつきとか、失敗の原因とか、そういうことは記録から除外してしまうんです。

――しかし、現場が欲しがるのはきっと失敗情報でしょうね。

大貫:そのとおりなんです。失敗の情報や不確かな思いつきが誰かの役に立つ、そういうモチベーションをもってもらえるようになれば、きっと製造業の現場はもっと生産的になれるんじゃないでしょうか。そういう意味で、Confluenceは、何か情報を発信したくなるツールだと思います。

長沢:一方、JIRAは隣の人との連携を強化してくれるツールです。現場で誰が何をやっているのか、それを抽象化して見ることができるから、情報共有の速度が速くなります。現場の人は自分の作業に注力しがちなので「成果物」に目が行きますが、情報共有するには「行動」が見えることが大切なのです。そういう意味で、製造業の現場には本当にJIRAを入れてほしいですね。人が本来するべきコミュニケーションを図りやすくしてくれますから。

大貫:JIRAは、情報にステータスを持たせることができますからね。「このバグは直ったのか、直っていないのか。誰がいつ直したのか」ということがすぐに判明します。現場ではJIRAのチケットIDを指して「500番のバグなんだけど」という感じで会話が進むシーンもよくあります。こうしたところでもコミュニケーションが速くなるのを実感できるはずです。

長沢:ツールを入れるだけでコミュニケーションが良くなるとは私も思っていません。でも、JIRAやConfluenceを入れることで、「コミュニケーションがうまくいっていない」ことがあぶり出されるわけです。これも大事な見える化の一環ですね。ツールだけではダメ、でもツールがないと問題の見える化すらできない、ということもよくありますから。

――今日は開発現場、とくに製造業に関してのお話をずいぶんしていただきましたが、最後にアジャイルに悩む開発現場の方々へメッセージをお願いできますか。

大貫:何か作業をアサインされたとき、「どうやってやるのがベストか」と考えると同時に「より短い時間で作業を終わらせるにはどうしたらいいか」を考えてみてほしいですね。そう考えることで、自分に投資すべき技術分野も分かるでしょうし、ツールの有用性も理解しやすくなるのではないでしょうか。与えられた作業を機械的にこなすのではなく、「より良い方法は」「より短く済ませるには」と考える時間を少しだけでいいから常に持つ。こうした姿勢はソフトウェア開発のすべての場面で必要で、組織をより良く変えていく原動力になると信じています。

Atlassian製品を通じてあらゆる現場に“魅力あるソフトウェア開発”をデリバリーしていく盟友のお二人
Atlassian製品を通じてあらゆる現場に“魅力あるソフトウェア開発”をデリバリーしていく盟友のお二人

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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