コードジンのヘッダーが入ります Developers Summit 2009

日本Rubyの会

【12-B-3】Ruby 1.9の現状と導入ポイント
Ruby 1.9.1リリースマネージャー Yugui

2009年1月31日、Rubyの新しい歴史の幕開けとなるバージョン1.9.1がリリースされた。1.9系列からの初の安定版リリースとなる。これまでのRuby 1.8系から実に6年ぶりのマイナーバージョンアップだ。とはいえ、メジャーバージョンが「2.0」になるのは「いつか手に入る理想のRuby」とされているので、実質的には今回がメジャーバージョンアップようなものだといえる。機能の面でも、文法の改善、仮想マシン「YARV(ヤルヴ)」の導入、多言語対応などなど、Ruby 1.8から大きく進化している。デベロッパーズサミットでは、「Ruby 1.9の現状と導入ポイント」と題して、Ruby 1.9系列リリースマネージャを務めるYugui氏が、1.8から1.9に移行する際の注意点や、Ruby 1.9の利点について、中の人ならではの知見を交えながら語った。

安定した開発が続く1.9系

Ruby 1.9系では、機能面での変化も大きいが、Yugui氏が強調したいことはむしろリリースに伴う「開発体制の強化」だという。つまり、今回リリースされた1.9.1のみならず、今後も引き続き、改善されたRubyが提供される道筋がついた。安定して開発が続けられるということは、それだけで1.9系を使うひとつのアドバンテージにもなる。

その中核となるのが、課題追跡システム「Redmine」だ。Webベースのシステムを導入したことで情報の検索性が高まるなど、開発効率の向上が見込まれる。また、Railsアプリケーションなので、Ruby開発者はこれでRailと「一蓮托生になった」(笑)。

また、ブランチごとにリリースマネージャを決め、それぞれポリシーに従ってリリースを行っていく。Yugui氏が担当する1.9系では、最低1つのブランチをメンテナンスする。というのは、1.9.2が出たときの1.9.1の需要がまだわからないためだ。

1.8系については「私がやるんじゃないし」と突き放した発言で会場の笑いをさそいつつ、2つのブランチをメンテナンスすると説明した(現在は1.8.6と1.8.7)。次にリリースが予定されている1.8.8では、1.9.1のソースがパースできるような改良が加えられる見込みだ。これは「非常に保守的な方法で1.9系に移行するための手段」を提供する。

そのほか、「Supported」「Best effort」「Perhaps」「Not supported」の4段階のサポートレベルを定め、サポートするプラットフォームを明確にした。Supportedな環境で問題が起きている間はRubyはリリースされない。どのプラットフォームがどのサポートレベルかも、Redmineに書かれている

移行の時期は「今日帰ったらすぐ」

さて、Ruby 1.9系が安定してリリースされる見込みが立ったということで、それではどのタイミングで1.8系から乗り換えるべきだろうか。Yugui氏によれば、日常のスクリプティングに使用する程度であれば、1.9.1ですでに十分な安定性があるという。そういう意味で、移行タイミングは「今日帰ったらすぐ」にでも取りかかれるとした。

業務などでメンテナンスしているライブラリやフレームワークがあれば、そろそろ準備する時期だ。1.9.0のころはまだ言語仕様に揺れがあったが、現在では仕様も安定しており、むしろ今のうちに移行しておいたほうが、後で楽になるはずという。

とにかくこれからもRuby開発チームがリリースするRubyを利用し続けるなら、1.9に移行し、2.0への道を進んでいくことになる。Yugui氏も「移行はみなさんするんですよ」と念を押した。

最後に、Ruby 1.9の現状をまとめると次の4点になる。

日常業務にRubyスクリプトを使っている人は、そろそろ移行を検討し始めてはいかがだろうか。

図1:Rubyのロードマップ
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