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freee、マジ価値開発の現場から

ノンエンジニアと二人三脚のビジネス基盤づくり――エンジニアリングによる業務改善とSalesforce活用

freee、マジ価値開発の現場から 第1回


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 freeeの価値基準の一つである、ユーザーにとって「本質的(マジ)で価値ある」ものを届けるということ。本連載ではそれに向かって、日々挑戦を続ける開発現場の事例をお伝えします。第1回は、ビジネスチームが活躍できる基盤を作るため、業務系SaaSである「Salesforce」の改善に取り組む「GYOMU(ギョウム)ハック」について紹介します。

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対象読者

  • 社内でビジネスチーム向けに業務改善を行っているエンジニアの方
  • 日々裏方として全社の事業運営や業務効率化を推進をしているITエンジニア

GYOMUハックエンジニアとは?

 freee株式会社のBiz基盤チーム(業務基盤など、ビジネスチームの基盤となるところのエンジニアリングを一手に引き受けているチーム)で「GYOMU(ギョウム)ハックエンジニア」をしている廣野です。2015年10月にfreeeにジョインしました。私はエンジニアですが、クラウド会計freeeをはじめとする、弊社が提供するアプリケーションの開発に携わっているわけではありません。freeeで働くノンエンジニアのための、社内システムのインテグレーションやアドオン開発を行っています。

 ここで言う社内システムとは自社開発しているものではなく、CRM・SFAツールである「Salesforce」や、マーケティングオートメーションツールである「Marketo」をはじめとする、ビジネス向けの業務系SaaSを指します。成長し続けるfreeeという会社での円滑な営業活動やマーケティング活動を支援し、基盤を整えるため、ビジネスチームはさまざまなSaaSを利用しています。その設定や連携、カスタマイズ時の設計などにはエンジニアの力が必要不可欠です。

 GYOMUハックエンジニアと聞いても、ピンとくる方は少ないと思います。そもそも「GYOMUハック」はfreee独自の言葉で、世間ではBPRや社内コンサルと呼ぶのが一般的です。ビジネスチームの業務を観察し、問題点や課題を発見の上、エンジニアリングでその課題に向き合います。

 以前はエンジニアがプロダクト開発の片手間にビジネスチームのリクエストに取り組んでいましたが、私が入社したタイミングでGYOMUハックが新設されました。専任者がいることのメリットは、ビジネスチームの活動が最適化・効率化されてスピードアップすることです。また、他のエンジニアも自社プロダクトの開発に集中できるため、プロダクト自体の成長の促進にもつながります。

円滑なエンジニアリングが実現するコミュニケーション

 エンジニアである皆さんの多くが経験することだと思いますが、社内のノンエンジニアの方とのコミュニケーションに苦戦したことはないでしょうか。

 例えば、使用してほしいソリューションがピンポイントで指定された依頼など、具体的なリクエストや相談をもらうことがよくあります。そんなとき、依頼を受けるエンジニア側としては「なぜその対応が必要なのか」「どのような効果があるのか」、それだけでは全くわかりません。

 この問題を解決するため、きちんとヒアリングの時間を持つようにしています。具体的には、現状「どのような業務を」「どのようなオペレーションで行っていて」「どんなことに困っているのか」について詳しく聞くということです。私はこのヒアリングの過程に最も多くの時間をかけています。

 しかしその際、相手が何を言っているのかわからないことがあります。その場合も「なんとなく、こういうことを言っているんだろう」と一方的な理解で進めるのは危険です。頭の中で行った翻訳が間違っている可能性もあるからです。必ず、自分の口で「こういうことですか」と言い換えて、相手の同意を得るようにします。認識の齟齬が極力生まれないようすることが大事です。

 ヒアリングの結果を受けてエンジニアとしてやるべきことは、課題を解決するための最適解を提示することです。ビジネスチームのメンバーには改善案を提示し、現場のオペレーションに当てはめて説明します。これによって具体的なイメージができるため、円滑に対応を進めることができます。

SaaSを使うための悩みと努力

 冒頭でも伝えたとおり、弊社では多岐にわたるSaaSを利用しており、エンジニアもそのツールに精通する必要があります。昨今はさまざまなSaaSが提供されているため、それらを利用する会社も増えてきているのではないでしょうか。そういったサービス導入に尽力しているエンジニアの方も一定数いるかと思います。

 そういう私は、freeeに入る前は営業の経験があるわけでもない、ただの一システムエンジニアで、SaaSに特に明るいわけでもありませんでした。また、入社当初はビジネスチームのためのサービス導入を行う専属のエンジニアがいたわけではなく、同時期にセールス(営業)部門の立ち上げも重なったので完全に0からのスタートでした。

 私たちの業務ではSalesforceの改善を行うことが多いです。SalesforceはApexという言語で独自機能を開発することができるほか、標準機能でノンコーディングのカスタマイズが可能となっています。このノンコーディングのカスタマイズがなかなか厄介です。エンジニアでなくても容易にカスタマイズできてしまうため、いつの間にか設定が増えてテストが失敗するといったこともよくあります。非常にエンジニア泣かせです。

 こうした壁を乗り越えるために、とにかく知識が必要でした。そこで私は次のアクションを起こしました。

 まず、セールスの業務を知るために彼らの隣でオブザービング(業務を隣で観察すること)をして少しずつ業務を覚えました。さらにツールの知見を得るために勉強会などにも参加したのですが、言語やフレームワークに特化した勉強会が多く、なかなかマッチする勉強会もなかったためかなり苦労しました。

 そこで、Salesforceのユーザー会に参加するだけでなく、自分でコミュニティ「GYOMU Hackers Guild」を作って勉強会を開きました。そうやってインプット・アウトプットをしながら、ビジネスチームとともに改善を重ねてきました。その結果、セールスフォース・ドットコム社のSalesforce活用度を測るシステムにおいて、弊社の活用度ポイントは4.0満点中3.6を達成しました(2017年現在)。日本企業の平均が2.0で、3.0を超えている企業はほとんどないとのことで、かなりの高得点であることがわかります。私も聞いたときは驚きました。数値で活用度がわかるのはとてもいいですね。

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この記事の著者

Miry Gaddi Hirono(freee K.K.)(ヒロノ ミリ)

 一次創作をしたりイラストを書いたりベースを趣味にしたりしているエンジニア。セールスフォース・ドットコム社さんにTrailbrazerに選ばれた。 コーンスネークやフクロモモンガと暮らしていて、最近はピアノゾンビというバンドにハマりまくっている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/10476 2017/11/14 11:43

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