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「Grove IoT スターターキット for SORACOM」で始めるIoTプロトタイプ製作

IoTプロトタイプを気軽に製作しよう!「Grove IoT スターターキット for SORACOM」でセンサーデータの可視化をするまで

「Grove IoT スターターキット for SORACOM」で始めるIoTプロトタイプ製作 第1回


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 この連載では、LTEモデム搭載済みプロトタイプ(試作)向けデバイス「Wio LTE JP Version(以下、Wio LTE)」と、7種のセンサーに加えSORACOM Air SIMが同梱されたパッケージ「Grove IoT スターターキット for SORACOM」を用いたIoTプロトタイプの製作を、全2回でご紹介します。第1回となる今回は、Wio LTEの開発を行うための環境構築から、超音波測距センサーを用いたセンシングデータを表示するところまでを紹介いたします。

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はじめに

 早速プロトタイプを製作したいところですが、いったんIoT(Internet of Things; モノのインターネット)について、見つめなおしてみましょう。「モノ」がインターネットにつながると、何が生まれるのでしょうか?

 これまでモノは、出荷時に実装されていた機能から進化することはありませんでした。例えばインターネットにつながらないタイプの電子辞書だと、出荷後に語句数が増えることはなかったわけです。

 モノがインターネットにつながるようになると、インターネット上に存在する「クラウド」の膨大なリソースを活用することができます。先ほどの例を当てはめてみると「電子辞書の形状をしたモノ」は「最新の語句が提供されるサービス」の検索と表示をする端末となります。

 つまり、IoTとはモノをサービスの入り口に変貌させる技術(群)なのです。

 一方、従来モノを作るためには手間や費用の問題がありました。ましてや、インターネットにつなげるということは従来のモノづくりの技術だけでなく、ネットワークに接続する知識が必要となり、なかなか手を出しづらいのではないかと思います。

 今回紹介するWio LTEには、センサーを制御するマイコンとLTEモデムが標準搭載されています。簡単なプログラムでセンサーや通信の制御が可能で、IoTプロダクトのプロトタイピングを行うことができます。

「Grove IoTスターターキット for SORACOM」とは

 「Wio LTE本体」の他、「IoTでよく使われるセンサー群7つ」と「SORACOM Air forセルラー(日本向けSIMカード)」に加え「SORACOM 1000円分のクーポン(データ通信料に適用可能)」までついている、IoTシステム構築の道具がすべてそろうキットです。

Grove IoT スターターキット for SORACOM
Grove IoT スターターキット for SORACOM

 ソラコムからは「Wio LTE ハンズオン」というハンズオン用のテキストが公開されており、これで開発環境の準備から実際の開発まで一通りの知識を学ぶことができます。本稿ではそれ以外の、例えばキットの購入方法やGroveシステムの解説を重点的に行います。

LTEモデム搭載 プロトタイプ向けマイコンボード「Wio LTE JP version」

 IoTのプロトタイプといえばArduinoやRaspberry Piといったマイコン/シングルボードコンピュータからWi-FiやBluetoothを用いて、最終的にはインターネットに接続する構成が一般的です。

 このあたりの製品をお使いいただいた方は「もう少し手軽にセルラー通信+センサーのデバイス製作を行えないかな?」と思ったことはないでしょうか。

 この悩みを解消するのが「Wio LTE」です。

 Wio LTEは「ワィオ エルティーイー」と読み、「Wireless Input/Output LTE」が製品名の由来です。その名の通り、最初からワイヤレスであることを念頭に置いて設計されています。Wio LTEはセンサーを簡単に取り付けることのできるGroveシステムと、Armベースのマイコン、そしてLTE通信モジュールをすべてひとつにまとめた、プロトタイピング(試作)向けデバイスです。日本国内の技適も取れているアンテナも標準添付されているため、これひとつでLTE通信が可能となります。

 以下が主要な仕様です。

Wio LTE JP version

Wio LTE外観
Wio LTE外観
  • プロセッサー:STM32F405RG、ARM Cortex-M4、168MHz
  • フラッシュメモリ:1Mバイト
  • 内蔵SRAM:192kバイト
  • LTE Cat.1:FDD-LTE B1/B3/B8/B18/B19/B26
  • SIMサイズ:ナノ
  • フルカラーLED(オンボード):1
  • 電源兼シリアルコンソール microUSB:1
  • I/O(Grove コネクタ形状)
    • Digital:2
    • Analog(Digital兼用可能):2
    • I2C:1
    • UART:1

はんだ付けやブレッドボードを不要にする「Grove システム」

 電子工作につきもののはんだ付けやブレッドボードですが、挿し間違えたりすることはありませんか? Wio LTEは「Groveシステム」という仕組みでそれらを不要としています。

 Groveシステムは統一されたコネクタ形状で、電源線、GND線、信号線2本の計4本の線がまとめられているものです。このコネクタはGroveコネクタとも呼ばれ、逆に指すことができないようになっており、線の位置が決められています。これによって、電源やGND、信号線を誤って接続することがなく、またブレッドボードのような部材も不要になるため、より手軽にセンサーとマイコンを接続することができます。

Grove コネクタ外観
Grove コネクタ外観

 信号線2本は通信方式によって使われ方が変わります。デジタルI/OもしくはアナログI/Oとして使う時は信号線は1本だけ使われることもありますし、UART(Universal Asynchronous Receiver-Transmitter)やI2C(Inter-Integrated Circuit)として使う時は2本使われますが、そうしたことも含めて考える必要がない仕組みがGroveシステムです。

 「Grove IoT スターターキット for SORACOM」に同梱されてるセンサー7種も、すべてGroveシステム対応のセンサーです。

  1. 汎用的に使える「ボタンスイッチ」
  2. 物体の静止/運動状態を検出できる「3軸加速度センサー」
  3. ドアの開閉などに使える「磁気スイッチ」
  4. 精度十分の「温湿度センサー」
  5. 3cm~3.5m程度まで測量可能な「超音波測距センサー」
  6. みんな大好き「GPSセンサー」
  7. 出力用のかなり大きい音が出る「ブザー」

IoT向けデータ通信プラットフォーム「SORACOM」

 「SORACOM」は1日10円~、1回線から使えるIoT向けデータ通信として2015年9月からサービスを開始しているモバイル通信サービスです。

 一般的なモバイル通信は「人向けの通信に最適化されたプランや料金」が提供されていますが、SORACOMはモノが通信することを想定したプランや料金が設定されています。

 また、IoTにおいて作り込みが必要だったセキュリティやクラウド連携の開発を肩代わりするサービスも提供されており、しかもこれらのサービスも「使っただけ」の料金で利用可能です。

SORACOM サービス全貌
SORACOM サービス全貌

 これにより、モバイル通信をクラウドのように使うことができます。

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この記事の著者

松下 享平(株式会社ソラコム)(マツシタ コウヘイ)

 株式会社ソラコムの事業開発マネージャーとして主にデバイスの企画を担当しながら、エバンジェリストとして、SORACOMサービスを企業・開発者により理解、活用いただくための講演活動を担当。90年代半ばの地方ISPの立ち上げをキャリアスタートとし、主にインターネットを取り扱ったシステムインテグレーターを...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/10660 2018/02/08 16:23

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