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イベントレポート

「デブサミ2019福岡」開催、官民連携のデベロッパー活性化活動や最新技術動向を紹介

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 ソフトウェア開発者向けの祭典「Developers Summit 2019 FUKUOKA」(デブサミ2019福岡)が8月29日、アクロス福岡(福岡県福岡市)で開催された。今年で5回目の開催となる。

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 基調講演の一つとして実施されたパネルディスカッション「エンジニアフレンドリーシティ福岡界隈の兆候」では、パネリストとしてヌーラボ橋本正徳氏、グルーヴノーツ熊野良氏、福岡市の上原里美氏が登壇。モデレーターはサイノウ松口健司氏が務め、2018年8月に福岡市の高島宗一郎市長が宣言した、官民一体でエンジニアが活躍できる街を創るための取り組み「エンジニアフレンドリーシティ福岡」の現況が紹介された。セッション参加者の約半数ほどが既に認知しており、今後の認知拡大と活性化が期待される。

株式会社サイノウ 取締役 松口健司氏
株式会社サイノウ 取締役 松口健司氏

 「エンジニアフレンドリーシティ福岡」の発表当初は、現地のITエンジニア界隈において賛否が非常に分かれていたという。橋本氏は中立的な立場をとっていたが、この対立を福岡の地の機会損失と捉え、「エンジニアフレンドリーについて考える会」という場を設けて、反対派を交えた意見交換を行った。

 ふたを開けてみると、表現が拙いだけで、福岡をITエンジニアがより活躍できる街にしていきたいという想いは同じであったことを理解した橋本氏は、そこでの意見を集約し、改善提案を福岡市に対して行った。

株式会社ヌーラボ 代表取締役 橋本正徳氏
株式会社ヌーラボ 代表取締役 橋本正徳氏

 熊野氏もこの会に参加したITエンジニアの一人で、当初反対の立場をとっていた。最初の印象で、自身が運営に携わるGoogle Cloud Platformのコミュニティ「GCPUG福岡」とどうつながるか分からなかったり、他のコミュニティでも声がかかっていなかったりと、施策に曖昧模糊とした印象を抱いていたからだ。

 その後、この動きが起点となり、官民で連携した全体的な動きに変わっていったという。

株式会社グルーヴノーツ サービス開発部 プロダクト開発チーム 熊野良氏
株式会社グルーヴノーツ サービス開発部 プロダクト開発チーム 熊野良氏

 この流れを受けて、象徴的なものとして先週8月21日にオープンしたのが「Engineer Cafe」だ。重要文化財の福岡市赤煉瓦文化館に開設され、エンジニアファーストのコワーキングスペースとして、朝の9時から夜の10時まで営業している。

 福岡市の上原氏は、「Engineer Cafeはオープン以降、途切れることがなくコミュニティイベントが活発に行われている。最大の辛さは無関心であること。当初反対されていた方々も、よりよいものにしようと積極的に関与してくれていたと理解している。福岡のITエンジニアの懐の深さに大変感謝している」と述べた。

 また、「『エンジニアフレンドリーシティ福岡』とうたうからには、行政は業界の人ほどITエンジニアのことを知りえないので、実際のITエンジニアの声を聞きながら施策を進めるべき。さもなくば看板が偽りになってしまう」という見解も述べた。「エンジニアフレンドリーシティ福岡」のサイトでは、福岡市による福岡のITエンジニアへのインタビューなども多数掲載されている。

福岡市 経済観光文化局 創業・立地推進部 新産業振興課長 上原里美氏
福岡市 経済観光文化局 創業・立地推進部 新産業振興課長 上原里美氏

 官民連携の動きとしては、他にも国家戦略特区での「エンジニアビザ」の創設もある。

 優秀なITエンジニアを拡充するには、海外にも福岡のことを知ってもらい、来て働いてもらう必要がある。エンジニアが来日してすぐに働けるエンジニアビザはその動きを後押しする。

 橋本氏は、実現に向けて、それ以外に必要な要素として、まず「福岡によい企業があることを知ってもらうこと」を挙げた。海外で知名度があるプロダクトやOSSを作り、海外へのアテンションを図ること。そのためには、福岡市が2012年から取り組んでいる、日本を牽引するスタートアップ事業の創出を目指した「スタートアップシティ福岡市」の施策にも期待が高まる。

 一方で、「継続的なリテンションをとること」の重要性も述べた。せっかく来日してもらっても、英語が話せないことによるコミュニケーション不足などで帰国されてしまうこともある。例えば、日本人だと出会いがしらの"Hello!"という挨拶も意外とできないことが多いので、そこからでも改善するとよいと述べた。

 また、海外からITエンジニアを招き寄せる上で、他業種のように単純労働者としてではなく、自分たちよりも優秀なITエンジニアを引っ張ってくることが、地域の成長に必要という点を橋本氏は強調した。

 もう一つの大きなテーマとしてモデレーターの松口氏が問いかけたのは、ITエンジニアの育成について。全国の大都市の中でも有数の学生数を抱える福岡。また、若い世代のエンジニアコミュニティも増えている中で、そこに対する動きはどうなのだろうか。

 熊野氏は、「エンジニアフレンドリーについて考える会」の発案で始まった「OSS Gate Fukuoka」の活動を紹介した。東京で開催されていた、OSS開発に参加する入り口を提供する「OSS Gate」という活動を福岡にもってきたもので、過去に2度開催したという。GitHubの使い方は分かるが、OSSプロジェクトにイシューやプルリクエストを出したことがないという人に向けて、ベテランが教え、実際にプルリクを送るところまでを伝授した。

 ちょうど第3回が9月10日にエンジニアカフェで開催される予定で、現在参加登録を受け付けている。

 また、前述のEngineer Cafeでは、そこに来ればロールモデルとなりうる凄腕エンジニアと直接会話できる場を志しており、ユーザーを支援するコミュニティマネージャーも常駐している。機会があれば、ぜひ一度足を運んでほしい。

会場受付の様子
会場受付の様子

 他にも、デブサミ2019福岡では、全15セッションの講演と、各スポンサー企業による展示などが行われた。

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この記事の著者

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテックジン)」...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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