既存システムのマイグレーションはなぜ必要なのか?
- 著者:アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 エンタープライズ・トランスフォーメーション・アーキテクト 佐藤伸広
みなさんも在宅勤務やいろいろな理由で生活様式が大きく変わってきていると思いますが、私も以前に比べて家事を担当することが多くなってきます。そんな中、私が担当している洗濯において特に思うのは、洗濯とは「段取りが重要」ということです。我が家は洗濯機と物干しが離れているため一旦洗濯物をカゴに入れるのですが、その際に干す順番を考えながら洗濯物をカゴに入れないと、実際に干すときに、タオルはこっち、T シャツはハンガーに掛けて、パジャマはハンガーに掛けつつズボンはこっちにかけて、とあっちこっちに手を伸ばすことになります。なので、カゴに入れる際に干すときのことを考えて、ハンガーを使うもの、洗濯物干しを使うもの、ベランダに直接干すもの等々、干すときのことを考えてカテゴリー分けをしてカゴに入れないと効率がものすごく悪い、ということの重要性を身にしみて感じている今日このごろです。
同じ様に「段取り」は既存システムのクラウド移行においてもとても重要です。これから3 回にわたり私が担当している既存システムのクラウド移行=マイグレーションについてお話をしたいと思います。この記事を読まれているデベロッパーの方の中にはあまりマイグレーションに関連していない方もいらっしゃるかもしれませんが、洗濯同様マイグレーションも段取りを最初に考えておくことがとても重要、ということがお伝えできればと思います。
今後 3 回にかけてマイグレーションについて順を追ってご説明します。
- 第 1 回:既存システムのマイグレーションはなぜ必要なのか ?
- 第 2 回:移行戦略と移行パスとは ?
- 第 3 回:具体的な移行方法とは ?
さて、第1 回では、「既存システムのマイグレーションはなぜ必要なのか」を考えていきたいと思います。
システムは大きく分けて3 つに分類できます。
SoR (System of Record)
既存ビジネスの稼動を保証し安定稼働やコスト削減が要求されるシステム。いわゆる基幹システムとその周辺システムで構成される
SoE (System of Engagement)
顧客接点があり新たなビジネス創出や企業の競争優位性を追求するシステム。ただしシステム構築時にROI (投資対効果) の見極めが困難であり、走りつつ機能追加や改修ができるようなビジネスの変化に対応できる俊敏性が必要
SoI (System of Insight)
SoR と SoE をまたがりデータを繋ぐ連携を行い、お客様の要求や行動を分析しインサイトを導くシステム。構造化されたデータと非構造のデータの両方を取り扱う

特に、SoR の歴史が長く、古くはメインフレームを中心とした中央集権的なシステムに始まり、3 層 Web アプリに業務機能単位でダウンサイジングを実施し、それらを仮想環境に載せ替えプライベートクラウド化し、今はパブリッククラウドで提供される IaaS / PaaS / SaaS が虫食いで利用されている状況ではないでしょうか。またそれらは時代に応じて完全に次の世代のアーキテクチャーに移行することなくゴチャ混ぜになりブラックボックス化して各々今も存在しているというのが実態かと思います。
このような状況では刻々と変化するビジネス環境に対応できるわけがなく、情報システムの複雑性が新しいニーズへの対応やイノベーションの提供などが必要なビジネス環境のドラスティックな変化への対応の足かせになり、言わば IT が負債となってしまっています。
※この記事で紹介したサービスの資料をダウンロードいただけます。資料は会員の方のみダウンロードしていただけます。