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「GrapeCity ECHO」レポート(AD)

システムのモダナイズに貢献する、開発支援ツールの活用事例――「GrapeCity ECHO week 2020」開催

「GrapeCity ECHO week 2020」レポート(後編)

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高性能なライブラリ製品の採用で画面表示や保存時間を劇的に圧縮

 イベントの最終日を迎えた5日目最初のセッションには、芳和システムデザインの金尾卓文氏が登場。「処理時間5分が6秒に! 大手製造業におけるWijmo活用事例」とのタイトルで講演を行った。

株式会社芳和システムデザイン コンサルティングチーム エバンジェリスト 金尾卓文氏
株式会社芳和システムデザイン コンサルティングチーム エバンジェリスト 金尾卓文氏

 芳和システムデザインは、自社開発したビーコンを「BLEAD(ブリード)」というブランドで提供していることで特に知られている。BLE(Bluetooth Low Energy)関連のハードウェア開発も得意としており、これらの自社製ハードウェアとソフトウェアを連携させた、唯一無二のソリューションを顧客のニーズに応じて提供していることが大きな特徴だ。ほかにもコンサルティングや運用管理なども含めたサービスの提供で、顧客企業を強力に支援している。

 今回のセッションでは、同社がグレープシティ提供の汎用JavaScriptライブラリ「Wijmo」を活用して取り組んだ、国内有数の大手製造業における2つのシステム構築事例が紹介された。1つ目は、受注にかかわるリスク分析システムの構築。この会社の扱う案件はかなりの大規模で100億円を超えるケースもあり、見積もりにおいてはリスクを徹底的に洗い出す必要があった。こうしたリスク分析のためのアプローチとして、要件定義書からリスク要素を定量的・定性的視点でデータ化するシステムと、あらかじめ用意した100問程度の定型的設問群に担当者が答えていくことでリスクの考慮漏れを防止するシステムを用意し、受注リスクのデータをローカルのExcelファイルに収集できるようにしていた。

 「もともとこのお客さまは担当者が手元のPC上でExcelを使用し、受注リスクの分析作業を行っていましたが、各人による個別作業となるため、データの収集や集計に大きな手間を要していました。それだけでなく、分析結果がローカルに保持されるため中央のシステムにフィードバックできないこと、さらには複数担当者が同時に単一のExcelファイルを編集できないことなどが課題として挙げられていました」と金尾氏は語る。

 システム構築時に掲げられた要件は、現場が長年慣れ親しんできたExcelと同様の使い勝手を維持すること。特に行のグループ化とソートが柔軟に行えることが必須条件であるのに加えて、低コストによる構築とレスポンスの高速性も求められていた。これらの要件を満たすための開発支援ツールとして採用されたのが「Wijmo」だったというわけだ。

 「ライブラリ選定に関して、お客さまからは有償の製品で、しっかりとしたサポート体制を有していることが求められていました。それを受けベンダー各社のツールを比較検討した結果、デモが充実しており必要な機能の実現可能性が容易に把握できる点や、トライアル版の利用が可能だった点、JavaScriptのみで既存の環境に干渉することなく実装できる点などを評価して『Wijmo』を選択しました」と金尾氏は説明する。

 その後着手された開発においては、初期コストを抑えるために同社内で稼働する既存のWebシステムを流用した。このシステムではサーバー側の処理が存在し、jQueryによる制御を行っていたが、『Wijmo』ではこれら既存の仕組みに影響を与えることなく容易に組み込むことができ、初期コストを大幅に削減することができたという。

 事例の2つ目は、人、モノ、カネといったリソースの予実管理のための仕組みのWeb化にかかわる取り組みだ。具体的な実施内容としては大きく2つ。1つは、ビジネスにおけるカテゴリ単位でのリソースの状況や消費状況など、全体像を把握できるサマリー管理の仕組みの構築。もう1つは、プロジェクトや費目、リソースなどの詳細な単位で予算と実績の詳細を入力するというものだ。

 従来、同社ではこうしたリソースの予実管理の仕組みをExcelマクロにより運用していたが、その処理が非常に重く、具体的にはデータベースからデータを流し込んで描画が完了するまでに5分、保存にも5分という時間を要していた。さらにマクロで実装されているため、処理の実行中にExcelを使ったほかの作業が行えない問題も抱えていた。

 「そこで、高速な表示と保存をシステムのWeb化により目指すこととし、さらにお客さまのご要望によりWeb版の開発中はExcelでの処理を並行稼働させ、順次移行を進めていくアプローチで望むことになりました」と金尾氏は振り返る。ここでも開発には「Wijmo」を利用した。具体的には「FlexGrid」と「FlexChart」を用いて、横棒グラフや棒グラフ、折れ線グラフなどの同時描画によりデータを可視化していくことにした。

 性能の担保に関しては最大で1000行×120カ月分のデータを取り扱うことを想定。同社の要望としては、フッタ行に集計値を表示できるようにしたいとのことだったが、Web版とExcelの並行稼働中は両者でデータベースを共有する必要があったため、既存のデータベースの内容を変更することはできなかった。したがって、集計データの項目をデータベースに追加できず、現在システム上に展開されている全データを取得して計算を行い、結果を表示する必要があった。

 この問題に対してはサーバーサイドを新規で作り直すことによってクリアしつつ、サーバー側の処理時間と転送時間を5秒に短縮。また、画面描画のスピードについても「Wijmo」の活用によって1秒程度で完了し、全体の画面表示も6秒で完了するようになった。もっとも、Webシステムとして6秒という時間は長いとの見方もある。「とは言えデータ量が極めて膨大で、そもそもこれまでのExcel版では5分を要していたことを考えると劇的な改善でしょう。また保存についても従来は5分かかっていたところを、『Wijmo』のオブジェクトから差分のみを抜き出す方法で1秒程度にまで所要時間を圧縮しました。システム全体の性能も、お客さまには大いに満足していただいています」と金尾氏は述べる。

 以上2つのプロジェクトにおいては、「Wijmo」を活用することでシステム性能の担保や開発コストの削減において多大な成果を享受することができた。さらに「Wijmo」は標準機能も非常に充実しており、顧客から寄せられるさまざまな要望にもきめ細かく応えられた。「特に、やりたいことがプロパティの変更だけで実現できるケースも多く、テストにもさほど多くの労力をかけることなく高い品質を実現できました。これらの点も含めて、『Wijmo』の学習コストの低さには大いに感じ入りました」と金尾氏。当該顧客の案件に限らず、芳和システムデザインが取り組むビーコンや各種センサーを使ったIoT案件など、広範なプロジェクトにおけるアプリケーション実装の局面に「Wijmo」活用の可能性が大きく広がっていることを強調した。

図3 リソース予実管理システムの画面イメージ例(サマリー管理画面)。
図3 リソース予実管理システムの画面イメージ例(サマリー管理画面)。

豊富なUIコンポーネント群を配布ライセンスフリーで提供

 今回の「GrapeCity ECHO week 2020」を締めくくる5日目最後のセッションでは、初日に続いてグレープシティの村上功光氏が登場。「多様な要件にコレ1つ! オールインワンなJavaScriptライブラリ『Wijmo』の魅力(増補版)」と題した講演を行った。「Wijmo」が多様な案件をカバーする「汎用型」のJavaScritpt製品で、データグリッドやチャート、入力、ゲージ、ピボットなど40以上の各種コントロールをオールインワンで提供していることは、初日の村上氏のセッションでも触れられた通りである。

グレープシティ株式会社 ツール事業部 マーケティング部 村上功光氏
グレープシティ株式会社 ツール事業部 マーケティング部 村上功光氏

 例えば開発の中では、データグリッドコントロールを使ってデータの一覧表示をすることや、それらのデータをチャートで可視化すること、多彩な入力系コントロールを使って顧客のデータ入力を支援することなどは多い。「もちろん、必要となる各種コントロールを個々に調達することも可能です。しかし部品同士の相性が悪いなど、何らかのサポートが必要になった際、製品ごとに異なる窓口にアクセスしなければならない問題があります」と村上氏は指摘する。各種UIコントロールをオールインワンで提供する「Wijmo」であれば、コントロール間の相性の問題が生じることは決してなく、サポート窓口も一元化できる。開発者が頭を悩ませることなく、UI実装にかかわる幅広い要件に対してトータルに応えることができるというわけだ。

 また「Wijmo」では、そうした豊富なUIコントロールに加えて、ユーティリティ系のライブラリなども充実している。例えば、データグリッドコントロールである「FlexGrid」を使って表示した内容をExcelやPDFファイルとして出力する「FexGridXlsxConverter」「FlexGridPdfConverter」といったコントロール、あるいは単一のコードで日本語や英語、中国語、韓国語など多様な言語による表示を可能にするメソッド、さらにはUIコントロールをまたがる画面全体での変更内容を追跡し、Undo・Redoを実現するUndoスタック機能なども用意されている。

 さらに、ライセンス体系でもユニークなアプローチをとっている。開発ライセンスについては年次更新スタイルのサブスクリプション形式となるが、配布ライセンスは基本的に無料だ。「配布ライセンスでこうした対応をする背景には、『Wijmo』を開発の標準ツールとして採用いただき、どんどん利用してもらいたいという当社の思いがあります」と村上氏は語る。

図4 Wijmoで提供されるグローバリゼーション(多言語対応)機能。
図4 Wijmoで提供されるグローバリゼーション(多言語対応)機能。

 現在、企業においては、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が切実に求められている状況だ。そうした中で、老朽化した既存システムをいかにモダナイズしていくかが企業にとって重要なテーマとなっている。また一方で、一連のコロナ禍においてはリモートワークへの移行を中心に、働き方にかかわる「ニューノーマル」を模索する動きも加速しており、そこでは既存業務アプリケーションのWeb化が強く求められている。

 こうした昨今の動向に応えるシステム開発に対し、グレープシティは高度な生産性と品質のツールで支援を続けている。今回の「GrapeCity ECHO week 2020」における各社からの事例報告は、同社に対する期待がますます高まっていることを実感させるものだったと言えよう。

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この記事の著者

丸谷 潔(マルタニ キヨシ)

 フリーランスライター。1963年生まれ。慶應義塾大学文学部卒。システム開発(メインフレーム、OS/2等)、IT関連雑誌・書籍の編集を経て現職。執筆領域はIT系全般、FA系など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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