失敗と成功で変わっていたのは「自分」だった? DevOpsを起点にコラボレーションの在り方を考える
ここで横田氏は、かつて以前の自身の経験を振り返った。まだ経験がない頃に、技術コミュニティに参加し、大いに刺激を受けたことでモチベーションが上がるプラス面の一方、レガシーな現場に不満を感じ、「皆より知っている」という勘違いに陥ることも少なくなかった。
「意識の高い、期待の新人っぽい雰囲気を出しつつも、何の改革もできなかった」理由について、横田氏はダニング・クルーガー効果とも言われる「見事なアンチパターン」と分析し、「なんとなく」レガシーなのがイヤという目的の曖昧さと、他者を味方として信頼せず思い込みにとらわれていたことの2点をあげた。
その後、経験を重ねる中で「頭でっかち」だったことを認識し、大きな変化が生まれたという。まず行動できるようになったこと、ゴールを常に意識するようになったこと、そして相手の立場や目指していることを想像するようになった。その3つにおいての変化により、前述の6つのポイントを意識しながら考え行動することで、エンジニア広報としての法務担当者と連携した案件で成功体験を得ることになる。
横田氏は「お互いの要望を満たした状態でゴールを達成できると信じ、関係性を作り上げたことで、時にチェックし合う対立が生まれる場面においても、一緒に作業している達成感が生まれた」と語り、「失敗経験と成功経験の両者を比べた時に『変わったのは自分』という実感があった」と振り返った。

そうしたコラボレーションの価値を実感すると、もっと進化させたくなるだろう。そこで、横田氏がおすすめするのが、ツールや方法論を参考にすることだ。さらには行き詰まった時には、具体的な行動の仕方を真似をしてみるとよい。前述の本に加え、『カイゼン・ジャーニー』(翔泳社)や『アジャイルレトロスペクティブス』(オーム社)、イベントストーミングなどの手法などが紹介された。
個人のコラボレーションの推進から、改めて「DevOpsの組織への導入」というテーマに立ち戻って考えると、そもそもゴールに至る旅のどこにいるかが重要になってくる。「DevOpsって何?」という地点から、開発・運用チームの協力のレベル、ツールや文化、事例研究などさまざまなフェーズに至り、最終的には「顧客に素早く価値を届ける、フィードバックループを素早く回す、変化に対応する」といったゴールにたどり着き、再び改善へと戻っていく。その中で、必ずしもコラボレーションすべきは「開発と運用」だけではないと言う。
組織が多様化し、ソフトウェアが複雑化する中で、開発・運用を進めると、さまざまな人と関わり、その協力が必要になる。セキュリティや社内IT、QAなどさまざまな部門との連携もあれば、営業とエンジニア、数カ国のメンバーなど、多彩なコラボレーションが行われている。
横田氏は「DevOpsよりも複雑に見えるが、基本は何も変わらない」と言い、「人に影響を与えるモデル」の最初の2ステップの重要性を強調した上で、「そこが固まれば、3ステップ目以降は既に仲間がいる可能性もあるので最初から心配しすぎないでいい」とアドバイスした。
そして、「まず自分と向き合い、課題を見つけ、その上で動けばどんな人にとっても動きやすいのではないか。そしてゴールと方向性を定めて動き出してから、DevOpsと違う? と思ったとしても、それで昨日よりよくなる、幸せになれるのなら正解。DevOpsを目指すことではなく、DevOpsを起点にして本当の目的、ゴールに気づくことが大切」と語った。
他にも行動するためのヒントはたくさんある。デブサミのようなイベントや、DevOpsやアジャイルなどの記事や書籍、SNSでのつぶやき、そして実際に行動して考え、話し合うことで得る気づきも多いだろう。失敗も含め、経験から学ぶことも大切だ。
最後に横田氏は、「誰もがニューノーマル時代の働き方において、試行錯誤をしているはず。距離が遠いからこそ、コラボレーションが大切になる。ぜひ、できることから始めてほしい」と強調し、セッションを締めくくった。
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