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【デブスト2021】セッションレポート

事業をスケールさせるエンジニアへの転身で、技術のコモディティ化に打ち勝つ【デブスト2021】

【B-1】事業をスケールさせるエンジニアたち ~技術のコモディティ化にエンジニアは敗北する~

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エンジニアリングを武器にスケールに注力するエンジニアになる

 続いて石垣氏はエンジニアリングを武器に事業をスケールするエンジニアの5つの特徴について紹介した。第一の特徴は、事業もエンジニアリング構造で捉えられることだ。石垣氏はDXを例に説明。DXではすべての活動がデジタルによりデータとして出力されるようになる。事業やサービスの流れ、振る舞いが、すべてデータとして記録され把握できるようになる。

 例えばECサイトであれば、どんな属性の人がどんな流れでこのサイトにたどり着き、○月×日にどんな商品を購入、どんな手段で決済をし、その際にクーポンを使用したかどうかなど、訪問から購入に至るすべての流れをプロットできるようになる。これらの情報をビッグデータ基盤に蓄積し、分析することで、「事業のナラティブ(物語)を読んでいるのです」と石垣氏。

 第二の特徴はKPIで事業が語れること。データを使いながら業務改善を進めていくには、共通言語が必要になる。そこで使うのが「KPIというアプローチ」と石垣氏は言う。構造で捉え、データで細かく分析できるからだ。石垣氏のチームでは、エンジニアやデザイナー、プランナーともKPIで会話することが増えているそうだ。「この機能を作りたい。なぜならこのKPIに効きそうだからと、いう文脈で話してくれる。こうすることで、感覚ではなく事業構造×データというエビデンスを基にした意思決定ができるようになります」(石垣氏)

 第三は仮説と実験で、転がしていけること(仮説実験主義)。不確実性の高い事業環境の中、仮説と実験の繰り返しにより伸ばしていかなければ、事業は廃れてしまい、作ったシステムもなくなってしまうからだ。「私を含めて多くの人は天才ではないので、ビジネスが勝手に伸びていくことはありません。データを武器とし、大きなブレークスルーよりも1パーセントの改善をどれだけ繰り返せるかが重要です」(石垣氏)

 とはいえ、高速に開発してリリースすれば良いというわけではない。「正しい方向、正しい戦術で、正しいリソースを使いながら進むこと」が大切であると石垣氏は話す。

 正しい方向とは戦略やベクトル(KPI)であり、正しい戦術は「KPIとセットで考えていくこと」と石垣氏。そして施策ごとに予測値と実測値をモニタリングしていく。「何が施策として当たるかはわからない。どれだけアジリティ高く施策が実行できるか、失敗から学習することを大事にしています」(石垣氏)

 第四はBMLループでの学習サイクルを構築していること。どこにどのくらいのリソースをどの期間突っ込むのかは、「今も難しいと思っている」と石垣氏。この課題を解決するのがBMLループでの学習サイクルである。チームのキャパシティーを計算して、施策の優先度と量を計算できるようになるからだ。

 第五は、チームの戦闘力をデータ化すること。コードレベルでのチームの生産性(レイヤー1)、チーム開発のストーリーポイントを元にした生産性(レイヤー2)、開発プロセス全般のリードタイムの改善(レイヤー3)、まずはそれぞれを可視化して現状の戦闘力を知ることだという。そして「世の中と比較してみること」と石垣氏。ちなみに世の中一般の開発スピードは、日本情報システム・ユーザー協会の方程式(全体工期は全体工数の三乗根に2.7をかける)で求められる。

 これからも不確実な世界は続く。それに立ち向かうためのキャリア戦略として、石垣氏は「視座をあげて視野を見ることが重要」と語る。視座をあげていくと、今までにないスキルが見えてくるからだ。そしてGRIT(やり抜く力)を底上げすること。執念や承認欲求、好奇心やプライドなど、強い感情がやり抜く力のフックになるという。

 「いろんなキャリアパスを今から模索するところだと思うが、今回のセッションで話したこと何かヒントになれば嬉しい」と石垣氏は最後にこう参加者にエールを送り、セッションを締めた。

図2.事業を構造で捉える
図2.事業を構造で捉える

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この記事の著者

中村 仁美(ナカムラ ヒトミ)

 大阪府出身。教育大学卒。大学時代は臨床心理学を専攻。大手化学メーカー、日経BP社、ITに特化したコンテンツサービス&プロモーション会社を経て、2002年、フリーランス編集&ライターとして独立。現在はIT、キャリアというテーマを中心に活動中。IT記者会所属。趣味は読書、ドライブ、城探訪(日本の城)。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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