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Developers Summit 2022 Summer レポート(AD)

「エンジニアを採用するなら人事部に丸投げするな」――2人からスタートした大手企業でのエンジニア組織作り【デブサミ2022夏】

【C-5】エンジニア1名の大手企業が、開発組織の内製化と技術者採用に成功した話

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 日本の新薬開発や製薬企業を支えるCMIC(シミック)グループ(以降、シミック)は、2019年にソニーからヘルスケアテック領域の電子おくすり手帳サービス「harmo(ハルモ)」の事業を継承。それに合わせて、グループ内に独自のエンジニア組織を立ち上げる必要が発生した。ただグループには、医薬品開発の知見はあれどIT開発のそれはまったくなかった。そこで、ソニーから移動した2名とプロパーのエンジニア1名による、ほぼゼロからの組織立ち上げをおこなった。デブサミでは、現在10数名にまで成長した経験から、IT組織の構築ノウハウが共有された。

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(上)harmo株式会社(シミックグループ) 代表取締役Co-CEO 石島 知氏、(中)harmo株式会社(シミックグループ) DevOps部長/電子おくすり手帳 副本部長 狩野 真也氏、(下)株式会社ギブリー 執行役員 兼 HR Tech部門 採用ソリューション事業部長 山根 淳平氏
(上)harmo株式会社(シミックグループ) 代表取締役Co-CEO 石島 知氏、(中)harmo株式会社(シミックグループ) DevOps部長/電子おくすり手帳 副本部長 狩野 真也氏、(下)株式会社ギブリー 執行役員 兼 HR Tech部門 採用ソリューション事業部長 山根 淳平氏

デジタル業界から医療業界への事業継承の背景を知る

 講演の冒頭、モデレーターの株式会社ギブリー 執行役員 兼 HR Tech部門 採用ソリューション事業部長 山根淳平氏がエンジニアの採用から育成に役立つコーディング支援ツール「Track」を紹介した。

 Trackは、DX人材やエンジニアの採用・育成・評価のためのHR(Human Resorce)プラットフォームだ。採用から、社内に入ってからの活躍、オンボーディングで戦力化するところまでをフォローするHRツールである。200社以上でコーディングテストを監修し、年間20万人の受験者数は国内No.1であるなど、エンジニアの組織作りに関連する実績も豊富だ。

Trackの概要。エンジニアの採用や育成に役立つコーディング試験を提供できるツール
Trackの概要。エンジニアの採用や育成に役立つコーディング試験を提供できるツール

 本講演の当事者であるharmo(シミックグループ)はTrackのユーザー企業である。続いて、harmo代表取締役Co-CEO 石島 知氏が「ゼロからのITエンジニア組織構築」をより良く理解するための背景情報として、シミックグループとharmoの紹介、ソニーからの継承についての説明をおこなった。

 シミックグループは、創業1992年、社員7,500人以上を有する医療事業の企業で、医薬品開発業務の受託などで新薬開発の支援を行っており、国内新薬開発の約8割に関わっている。臨床開発モニターは1,200名以上を抱えており、医薬品開発の中では日本最大級の規模だ。シミックグループは製薬会社の支援を中心にしていたが、より患者に向けのサポートができないか、ヘルスケア領域で活躍できないかという思いから、直接患者の役にたつharmoの電子お薬手帳を事業として継承した。

 harmoは2008年にソニー内のR&Dとしてスタートし、2013年に事業化に向けての動きが出て、石島氏、現harmo株式会社(シミックグループ) DevOps部長/電子おくすり手帳 副本部長 狩野 真也氏の両名が参画し、2016年に無事、事業化されたプロダクトだ。harmo自身は、現在2つの柱を持ち、1つは40万人のユーザーがいる電子お薬手帳、もう1つはワクチン接種管理で、こちらは自治体や職域接種といったB2B向けのサービスとなっている。

 2019年、ソニーからシミックグループへの事業継承が行われたが、石島氏はその理由は3つあると言う。1つ目は、シミックグループが持つ医療機関、薬局、製薬会社へのチャネルが、電子お薬手帳の普及に役立つこと。2つ目は、医薬品開発業務との関係から、薬の情報などをサービスに組み込みやすい、つまりシナジーを起こしやすい環境がある。3つ目は、医療業界とデジタル業界の時間感覚の違いだ。ソニーでは3カ月に1回結果を出すというスタイルだが、新薬開発は10年かかることも稀ではない。

 石島氏は「会社にこうした時間軸への理解があるほうが落ち着いて開発ができると思いました」とシミックグループへの事業継承の背景を語った。また、継承先としてシミックグループを探してきたのは石島氏で、ソニーからの移動も違和感なく実践された。

harmo開発から、事業化、シミックグループへの継承の時系列
harmo開発から、事業化、シミックグループへの継承の時系列

ゼロからエンジニア組織を作る、とは

 会社として、まったく経験値のないITエンジニア組織を構築するという困難な業務にどう立ち向かったのだろう。モデレーターの山根氏は「エンジニア組織そのものや文化を未経験の企業に導入する部分では、理解される部分や衝突する部分など、相当の苦労があったと思います」として、石島氏と狩野氏に導入の経緯を聞いた。

 石島氏は、まずシミックグループの中にエンジニアへのリスペクトがあったことを述べた。「エンジニアが誰もいなかったからでしょうか、リスペクトをとても感じました。エンジニアってわからない、でも支援できることはするので自由にやってほしい」という雰囲気を感じたと言う。とはいえ、ラフな格好で業務する文化がないシミックグループのメンバーからは「なんで社内でスリッパなんですか?」といった質問も受けた。石島氏たちは、ソフトウェアエンジニアとはそういう文化を持つ層であるとシミックグループ側の人たちに説明して、理解を得ていった。

 文化の異なる者同士ではあるが、事業としてのミッション、ビジョン、バリューである「なぜ我々がやるのか」「何をやるのか」「どうやってやるのか」については、両者が徹底的に議論した。石島氏は「上流がぶれると下流は大きくぶれてしまいます。上流をきちんと行うことで、その後の行動要件もきちんと決まっていきます」として、最初に決めることの重要性を主張した。

ミッション、ビジョン、バリューを決めるための会議の一コマ。写真一番右は狩野氏。
ミッション、ビジョン、バリューを決めるための会議の一コマ。写真一番右は狩野氏。

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ビジョンの共有と、コーディングテストによる採用活動を展開

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし・...

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