10.3 明日から活用できる、開発マネージャー・PMのためのAI活用術
開発マネージャーやPMの業務は多岐にわたりますが、AIを活用することで効率化できる部分が数多くあります。特に「自分が手でやっていること」や「エンジニアに聞けばすぐわかること」をAIに任せることで、より創造的で戦略的な業務に集中できるようになります。以下では、業務領域ごとにすぐに実践できるAI活用術を紹介します。
10.3.1 要求・要件管理はできるだけエンジニアに頼らない
要求・要件管理は開発プロセスの最初のステップであり、ここでの効率化は全体のリードタイム短縮に大きく貢献します。
Playwright MCPを使ったモンキーテストで簡単なバグは自力で解決できる
Playwright MCPを活用することで、実際のユーザー行動を模したモンキーテストを自動化できます。これにより、ユーザビリティの問題点や潜在的なバグを早期に発見できます。ランダムな操作を自動で行い、開発者やテスターが予想しなかった使い方で潜在的な問題点を炙り出せるのです。
モンキーテストは、ユーザーの予期せぬ行動パターン発見に役立ちます。通常のテストでは見逃しがちな問題を早期に発見できるため、リリース後のバグ対応に費やす工数を大幅に削減できるでしょう。
手順は簡単で、CursorでPlaywright MCPをインストールして、テストケースを作成するだけです。
Playwright MCPのテストケースを作成するプロンプトは、以下のようにカスタマイズして実行すればよいでしょう。
これをCursorでAgentモードで実行すればテストが実行され、フィードバックがもらえます。
以下のWebサイトに対して、ユーザーの実際の行動パターンに基づいた知的なモンキーテストを実行するPlaywrightスクリプトを作成してください: URL: [WebサイトのURL] テスト要件: 1. ログイン機能のテスト(正常系と異常系の両方) 2. 商品検索と絞り込み機能のランダムテスト 3. 商品詳細ページの表示と各種操作 4. カートへの追加と購入プロセス(実際の購入は行わない) 5. ユーザー設定ページの各種操作 テストの制約条件: - 実際の購入処理は行わない(購入ボタン直前で停止) - ランダム操作と特定のユースケースシナリオを組み合わせる - エラー発生時はスクリーンショットを撮影し、エラー内容をログに記録 - パフォーマンス指標(読み込み時間など)も記録 - テスト実行の最大時間は10分 このスクリプトは、ランダム操作と一般的なユーザーフローを組み合わせることで、より実際のユーザー行動に近いテストを実現することが目的です。
また、ペルソナを設定した上でテストすることも良いでしょう。
以下のペルソナ情報にもとづいてシナリオを考えてください: 名前:[名前] 年齢:[年齢] 性別:[性別] 職業:[職業] 住んでいる場所:[都市/国] 家族構成:[単身/既婚/子供の有無など] 性格: - [性格特性1] - [性格特性2] - [性格特性3] 趣味・関心: - [趣味/関心1] 抱えている課題: - [課題1] 目標: - [目標1] このペルソナが[製品/サービス]を利用する際のシナリオを作成してください
類推見積りによる超概算見積もり
エンジニアに頼まずに企画を通したり工数を算出したりする際に「ざっくりでいいから見積もりがほしい!」という場面は多くあります。そんなとき、AIに既存コードを読み込ませ、類似機能の実装時間から「類推見積もり」を行うことができます。
AIは過去の実装パターンや複雑さを分析し、新機能の工数を予測します。これにより、企画段階での意思決定や優先順位付けがスムーズになります。特に技術的な詳細を深く理解していないPMでも、エンジニアに頼らず概算の見積もりを得られる点が大きなメリットです。これによって、企画の初期段階から現実的なスケジュール感を持った提案が可能になり、プロジェクト全体の見通しが立てやすくなります。
例えば、Cursor上で「このAPIを作るのに2人月かかりました。新しく〇〇の要件を組んだ〇〇APIを作りたいのですが類推見積もりから、超概算見積もり出してください」と指示を出すと、改修にあたっての影響範囲・再利用できるモジュールを調べてくれた上で、超概算見積もりを出してくれます。これにより設計フェーズに下ろすまでのエンジニアの工数が減らせそうです。
コードベースからの仕様自動抽出
開発マネージャーやPMにとって、技術的な理解は必須ですが、すべての技術詳細を把握することは困難です。AIを活用すれば、この障壁を下げられます。
ビジネスサイドから求められる既存システムの仕様を、エンジニアに都度確認せず、AIでコードベースから直接仕様を抽出できます。AIがコードを解析し、APIの仕様やデータベースのスキーマ、ビジネスロジックなどを文書化します。
これにより、エンジニアの作業を中断させず、必要な情報を迅速に取得できます。また、ドキュメントが古くなっている場合でも、最新のコードから正確な情報を得られるため、コミュニケーションの齟齬を減らすことができます。
特に複雑なレガシーシステムや、ドキュメントが不足しているプロジェクトでは、この方法が非常に効果的です。AIはコードの構造を解析し、人間が理解しやすい形で仕様をまとめてくれます。これによって、ビジネスサイドとの会議前にシステムの振る舞いを正確に把握でき、より建設的な議論が可能になります。
簡単な利用ケースで言えば「このフローをシーケンス図で示したいけどmermaid.jsでやりたい」という場合に、Cursor上で「このフローをシーケンス図で示したいけどmermaid.jsでやりたい」と指示を出すと、シーケンス図を出力してくれます。
体系化されたドキュメントからチケット発行
要件定義を中心とした「何を作るべきか」をドキュメントに示すことは多いでしょう。
たとえば、PRDやDesign Docなどの現場も多いと思います。それをチケット管理のJIRAに対してMCPサーバーをつなぎ込めれば、ClineやSlackのインターフェイスから「以下のDesign Docから、必要なJIRAチケットを発行してください」といったことをしているチームもあります。
または、チケット一覧を出した上で、それぞれに超概算見積もりをつけても良いでしょう。
10.3.2 データ抽出はAIに任せてエンジニアの工数を減らす
データに基づいた意思決定は重要ですが、データ抽出や分析には専門知識が必要です。AIを活用することで、この障壁を下げることができます。
BigQueryなどのデータを参照したSQLの半自動化
複雑なSQLクエリの作成は、データ分析の大きな障壁となっています。AIを活用することで、自然言語からSQLクエリを生成し、データ抽出を効率化できます。必要なデータの条件を日本語で伝えるだけで、AIが適切なSQLクエリを提案してくれます。
ここはいろいろなソリューションがありますが、例えばBigQueryを使っている場合は、Gemini in BigQueryやDataplexのメタデータのカタログを整備して、データを見つけやすくするアプローチも良いでしょう。
効果としては、キャンペーンの当選結果を通知するために会員IDに対してメールアドレスと名前が必要な場合、従来はエンジニアにデータ抽出を依頼していましたが、依頼から結果取得までのリードタイムを大幅に短縮できます。また、エンジニアのリソースを本来の開発業務に集中させることができます。
10.3.3 ステークホルダー連携はAIに任せてコミュニケーションの効率化を実現する
さまざまなステークホルダーとの効果的なコミュニケーションはリードタイム全体を見ても大きな工数と時間をかけていることが多いです。AIを活用することで、情報共有と意思決定のプロセスが改善されます。
NotebookLMを活用した会議資料の一元管理
あらゆるプロジェクトや施策の情報がツールも別でそれぞれに散らばっていることも多いでしょう。
NotebookLMのようなツールを活用することで、会議録画や関連資料を一元管理し、必要な情報に素早くアクセスできるようになります。会議の音声データから自動的にトランスクリプトを生成し、重要ポイントやアクションアイテムを抽出することで、会議の成果を効率的に記録・活用できます。
つまり、検索行為をステークホルダー側に委ねることでのコミュニケーションの効率化を実現でき、少なくとも報告書を読み上げるだけのMTGをなくすことが可能になります。
ポッドキャスト形式でのヒアリング機能
また、最近NotebookLMの音声が日本語対応したため(NotebookLMの音声概要が日本語を含む50以上の言語で利用可能に)、内容をポッドキャスト形式で聞けることでより幅が広がりました。作業をしながら会議の内容を会話形式で知れることで可処分時間を有効活用できます。
また、副次的な効果で、会議中はメモ取りに集中するのではなく、議論に積極的に参加できるようになったのも大きいです
これらの機能を組み合わせることで、情報の散在を防ぎ、一貫した意思決定とステークホルダーコミュニケーションが可能になります。特に複数の部門や拠点にまたがるプロジェクトでは、このような情報の一元管理と効率的な検索が成功の鍵となるでしょう。
10.3.4 市場調査の時間を短縮して「何を作るべきか」に集中する
プロダクト戦略を考えるうえでの市場調査や競合分析は、プロダクト戦略を策定する上で欠かせない作業ですが、膨大な情報を収集・分析する必要があります。AIを活用することで、この作業を効率化できます。
市場調査には、FeloやDeepResearchなどのAIツールを組み合わせて活用しています。情報を収集して思考するという過程を踏んでいきますが、取得に関してはDeepResearchを中心にFeloなども活用し、ローカルファイルに保存します。
AIは複数の情報源から関連データを収集・構造化しますが、量が膨大なため、Cursor内に読み込んで分析しています。これはNotebookLMでも良いかもしれません。
これにより市場調査の時間を大幅に短縮し、より多くの時間を「何を作るべきか」に充てることができます。
10.3.5 AIツールを活用する際のポイントは、継続的なプロンプト設計(.mdcファイルの改善)
AIに対する指示(プロンプト)は具体的かつ明確に設計することで、より質の高い結果を得ることができます。人間に指示を出すときと同じで大きなことをざっくり伝えても認識の齟齬が生まれます。
自分の要求にあったプロンプトを設計しつつ、再現性を作るため定常的に発生するものは、Cursorの.mdcファイル駆動(実行ルール)を使ってパッケージ化するのをおすすめします。
