なぜ障害対応の属人化はなくならないのか? AI時代に問い直す「責任」と「専門性」
【17-A-3】AI時代のシステム障害対応における責任・専門性とは? ~10年・約2000件の障害対応から見えた、ミッションクリティカルシステムが解くべき属人化の本質~
若手でもベテランのように障害対応できる
野村氏が開発を進めるIncidentTechは、障害対応における属人化の解消を目指すAIエージェントである。機能は大きく、障害状況の把握や類似インシデントの検索、報告文書の作成という「統括」の機能と、対応にあたるタスクや人の管理という機能の2つに分かれる。野村氏自身、障害対応の統括を任された際にタスクの管理や人の招集に苦労してきた経験があり、その課題感がサービス開発の背景にあるという。
特にIncidentTechの強みとされるのが、報告文書の作成機能である。野村氏は社内外向けの報告文書作成に長年苦労し、「野村でなければ書けない」という属人化した状態が生じていたといい、この解消に重点を置いて開発したという。Teams上のURLを共有すると最新のやり取りを自動でまとめる機能のほか、過去の類似インシデントとの類似度や参照ドキュメントを示す検索機能、障害レベルの判定支援なども備える。第三者機関向けなど厳格な報告文書についても、テンプレートの可変部分を推測し、根拠付きの選択肢とともに生成できるという。
現在複数の企業とPoCを実施しており、これまでに3件が完了、うち1件はすでに有償化され、残る2件も有償化が予定されている。複数社とのNDA締結も進んでいるという。成果としては、事象の発生から報告メールを発出するまでにかかっていた時間が11分から3分へと約8分短縮されたことに加え、経験の浅いメンバーでもベテランのように対応できたという現場の声が得られたことを野村氏は挙げた。汎用LLM(ChatGPT等)との違いを問われることも多いというが、野村氏は複雑なシステムほど汎用的な大規模言語モデル任せのアルゴリズムでは精度に限界があり、独自に組み上げたアルゴリズムによって回答精度を高めていると説明した。
2027年、AIが24/365のオンコール対応の代役に
野村氏は今後のロードマップとして、現在提供しているベテランのような障害対応を支援するサービスに続き、2027年4月には、AIエージェントが24/365のオンコール対応の代役を担うことを目指すと述べた。実現すれば、野村氏自身がかつて経験した1日6回の電話対応や週2回の夜間駆けつけといった負担がなくなる。夜間の対応はAIに任せ、日中もAIが支援することで、コストの削減を図る狙いがあるという。
野村氏は最後に、障害対応やインシデント管理、保守運用に課題を抱える企業に向けて、自社サービスの提案にとどまらず、状況に応じて他社サービスの紹介や助言も行っていると語った。障害対応の改善をライフワークとし、この10年で培ってきた知見を今後も還元していきたいと述べて、セッションを締めくくった。
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DeveloperZine編集部(デベロッパージン編集部)
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丸毛 透(マルモ トオル)
インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。
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