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今からでも遅くない これから始めるScala

今からでも遅くない これから始めるScala(前編)

Scalaってどんな言語?


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パターンマッチの利用

 最後に、サンプルプログラム中の男性と女性で処理を分けて出力している箇所を見てみます(見やすいように改行を追加しています)。

[リスト12]省略しない場合の無名関数
// 20歳以上の人物を男性と女性で分けて出力
filterAge( 20, list ).  *1
  foreach{  *2
    p => p match {  *3
      case Male( n, _ ) => println( "%sさんは成人男性です" format n )  *4
      case Female( n, _ ) => println( "%sさんは成人女性です" format n )
    }
  }

 まずは、先ほど定義したfilterAge関数を利用して、list変数から20歳以上のPersonオブジェクトを抽出しています(*1)。結果として返されたList[Person]オブジェクトに対してforeach関数を呼び出しています(*2)。

 foreach関数は、Listの個々の要素に対して引数の関数オブジェクトを呼び出して処理を行う関数です。

 ここでのforeach関数は、「引数にPerson型をもらって、Unit型の結果を返す関数」をもらうことになります。

 では、「foreach関数に渡さる関数」ではどのような処理を行っているのでしょうか?

 リスト12では、関数リテラルの記法を利用して、「 p => ...」とPerson型の引数pをもらっています(引数の型は省略)。

 *3で、「p match {...}」と書いてある箇所ですが、これはScalaのもつ「パターンマッチ」という機能を利用しています。「パターンマッチ」は、C言語やJavaなどのswitch文に似ていますが、パターンとして記述できる表現がはるかに柔軟なのです。

[リスト13]パターンマッチの書き方
値 match {
  case パターン => { 処理 }
  case ...
  case _ => { どのパターンにも当てはまらない場合 }

 「パターンマッチ」は、判定対象の値にmatchキーワードを適用し、{}の中に「case パターン => 処理,...」という形でそれぞれの条件に合わせた処理を書いていきます。

 リスト12では「case Male( n, _ ) => ...」と書いてありました(*4)。これは、「変数pがMale型のケースクラスオブジェクトの場合」というパターンの記述になります。さらに、Male型であった場合は、Male型がもつフィールドnameを、nという変数に代入して「=>」以降の処理で利用できるようになります。ageフィールドについては、この場合は条件に関連せず処理でも利用していないので、あらゆる値にマッチする「_」で受けています。

 マッチした場合の処理は、単純に「××さんは男性です。」という文字列をStringクラスが持つformat関数を利用して生成し、pritnln関数で出力しているだけです。format関数で「××さん」の箇所に埋め込む文字列は、「case Main( n, _ )」の部分で受け取った変数nが利用されています。

 同様にFemale型であった場合のパターンも書くことで、男性/女性で処理を分けて出力ができています。

 Scalaのパターンマッチは、他にも「case foo」のように直接値にマッチさせたり「 case n if n > 10」のようにifで追加の条件を指定したりと、さまざまな形で記述できます。

 また、例で示したようにパターンマッチとケースクラスを組み合わせることで、オブジェクトの構造に対しての条件分岐をパターンマッチで記述することができ、非常に柔軟で簡潔に処理を分岐させることができるのです。

まとめ

 連載1回目となる本稿では、Scalaの特徴的な機能をピックアップして解説しました。サンプルプログラムは、コメントを除くとわずか10行ですが、説明をごらんいただければ分かるように、さまざまな意味がこめられています。

 Scalaがいかに簡潔で表現力の豊かな言語であるかがお分かりいただけたでしょうか?

 次回以降では、関数オブジェクトやScalaでのクラスやトレイトの使い方、パターンマッチの詳細など、もう少し個々の機能に踏み込んだ解説をする予定です。

 本稿では、Scalaの特徴を全面に押し出した構成になっているので、詳細な文法は割愛させていただきました。ご興味のある方は、参考文献・資料をご覧ください。

参考資料

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この記事の著者

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

WINGSプロジェクト 尾崎 智仁(オザキ トモヒト)

WINGSプロジェクトについて> 有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS Twitter: @yyamada(公式)、@yyamada/wings(メンバーリスト) Facebook

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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