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FileMaker Serverを使った効率的なシステム運用(前編)

ITエンジニアのためのFileMaker講座 第13回(前編)

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2010/07/12 14:00

 今回は、ある程度のユーザ数で快適に利用でき、かつ止まらないシステムをFileMaker Proで運用することを前提に、運用にまつわるあれこれをご紹介します。

はじめに

 今回の主題に入る前に、「そもそもFileMaker Proってなんだ?」という話題に触れる必要があるかもしれません。FileMaker Proとはどういうもので、システム管理者や開発者から見た立ち位置はどうなんだろう、というお話です。

FileMaker Proって何?

 FileMaker Proほど、人により異なる印象を持つソフトウェアは珍しいかもしれません。ある人は帳票ツールであると捉えているかもしれませんし、またある人はレコードを保持できるワープロ(=カード型データベース)であると捉えていたり、いやいや規模によっては基幹業務をカバーできるデータベースである、と考える人もいるでしょう。その最大公約数はどのあたりかと言うと、筆者の印象では「あまり高い能力はないのではないか」と捉える人が、特にスキルの高いエンジニアの方に多いように見受けられます。

 「高い能力」がどのあたりを指すかというのは難しい問題ですが、もしそれが「数百人のユーザーの日常業務をカバーできる」というレベル(これも曖昧ですが)だとしたら、残念な誤解であるといわざるを得ません。FileMaker Proは、一般に考えられているよりもずっと高いデータ処理能力を持つデータベースです。

FileMaker Proの生い立ち

 FileMaker Proはカード型データベースとして生まれ、その特徴を保ったままリレーショナルデータベースに発展してきたデータベースです。このことは、非エンジニアがパーソナルなデータベースを気軽に作れる側面と、スキルの高いエンジニアが複雑で高度なシステムを構築できる側面の両方を同時に持つ、特異な存在であるということを意味します。今回は、ある程度のユーザ数で快適に利用でき、かつ止まらないシステムをFileMaker Proで運用することを前提に、運用にまつわるあれこれをご紹介します。

対象読者

 FileMaker Proに日頃あまり親しんでいない開発者/システム管理者の方を対象にしています。

FileMaker Serverによる運用

 上述のように、現在のFileMaker Proは個人利用のみを前提としたデスクトップアプリケーションという使われ方だけではなく、クライアント/サーバで運用することで真価を発揮します。

 FileMakerの導入時によく求められる要件に「情報の一元管理」というものがありますが、これはそのままFileMaker Serverによる運用が求められるということを意味します。各営業部員のデスクトップフォルダやMy Documents(の中の「2009年一時保存」フォルダなど)の中に多数存在する、どれが現時点での最新データかわからない個別ファイルを1か所にまとめ、関係者全員が同じソースを参照することに大きな意味があります。

 FileMaker Serverはその名の通りサーバアプリケーションであり、デーモン(Windowsではサービス)として動作します。クライアントのためにデータベースファイルを管理し、ネットワーク上のFileMaker Proクライアントにデータベースへのアクセスを提供するためのものです。FileMaker Serverを利用することで多数のユーザに安定したデータベースアクセスを提供し、バックグラウンドでデータのバックアップを定期的に行うこともできます。

 今回の記事では、普段他のデータベースをお使いのエンジニアの方にもスケール感をお分かりいただけるよう、FileMaker Serverの運用や最適化について解説します。また、すでにFileMakerをお使いの方で、サーバやネットワークについてはあまり詳しくない、という方にも有益な情報となるはずです。

 FileMaker Serverについての基本的な情報や、Webのバックエンドとしての使い方、他のSQLデータベースとの連携などについての情報は、本連載の過去の記事をご参照ください。

 なお、今回の記事で対象にしているFileMaker Serverのバージョンは、現時点で最新となるFileMaker Server 11です。

設定パラメータの最適化

 FileMaker Serverにおける各種パラメータの最適値は、他のサーバと同様に、提供するサービスの規模やクライアント数に依存します。FileMaker Serverでは、設定値の反映にサービスの再起動を必要とする項目がほとんどありませんので、設定値にあまりバッファを持たせる必要がありません。常に最適値を狙った設定をしておき、状況に変化があればその都度設定の変更を行う、という考え方が可能です。

図1:FileMaker Server Admin Console
図1:FileMaker Server Admin Console

 画面左側の[管理]以下に、クライアントの管理やログの確認などの管理目的の項目が並びます。後述しますが、これらの項目のいくつかはコマンドラインインターフェイスからもアクセス可能です。

 [構成]以下の項目で、各種パラメータを設定します。今回は、サーバのパフォーマンスと密接に関連すると思われる項目について、最適値の考え方をいくつか紹介します。

図2:データベースサーバー > FileMaker Pro クライアント
図2:データベースサーバー > FileMaker Pro クライアント

同時接続クライアント数の最適値

 [FileMaker Pro クライアント]では、接続できるクライアントの最大数を設定できます。設定できる最大値は製品によって異なり、FileMaker Serverは最大250クライアント、FileMaker Server Advancedは無制限に設定できます。この数字を常に最大にしておけば、クライアント数が上限に達したという理由でアクセスを拒否されたクライアントからの電話に悩まされる可能性を下げられるでしょう。しかし、当然のことながら、無駄に大きい数字を設定することは、サーバの貴重なリソースを無駄に消費することを意味しますので、ここは想定される同時接続数の最大値(の1割増)ぐらいが望ましいでしょう。

ディレクトリサービスの設定値

 下段の[ディレクトリサービス]には、特に最適化すべき設定値と呼べるものはありませんが、時折意味あいを誤解される項目であることから、設定値の意味するところに簡単に触れておきます。

 ここで設定する項目は、FileMaker Proクライアントのファイルオープンダイアログで、LDAPサーバから取得した情報でFileMaker Serverをブラウズするための情報です。より正確には、ここで設定するのはFileMaker Serverの情報ではなく、FileMaker Serverの情報を書き込む先のLDAPサーバの指定と、LDAPディレクトリの「filemakerservers」レコードに書き込み権限のある LDAPアカウントを指定するということになります。この設定を保存することでLDAPサーバに書き込みにいきます。

 FileMaker Serverでホストされたデータベースは、FileMaker Proクライアントからアクセスする際の認証にLDAPのアカウントを利用することもできますが、これらの項目は、このようなクライアントの認証とは関連しません。

図3:FileMaker Proクライアントにて、LDAPサーバから取得した情報でFileMaker Serverをブラウズする
図3:FileMaker Proクライアントにて、LDAPサーバから取得した情報でFileMaker Serverをブラウズする
図4:FileMaker Proクライアントからのブラウズ先LDAPサーバ指定画面
図4:FileMaker Proクライアントからのブラウズ先LDAPサーバ指定画面

ホスト可能なデータベースファイル数の最適値

 [データベース]で設定されるデータベースファイルの最大数も、クライアント数の最大値と同じ理由で、現在ホストしているファイル数(の1割増)ぐらいが最適と考えられます。新規にファイルをホストする際には、常にこの数字を確認する必要がありますので、後述する管理者グループによる運用を行う場合には考慮が必要です。

図5:データベースサーバー > データベース
図5:データベースサーバー > データベース

キャッシュサイズの最適値

 データベースキャッシュのサイズについては、他のデータベースサーバと同様に、大きくすればレスポンスを向上できる一方、小さくすれば不慮のシャットダウンにより失われるデータを減らすことができるため、キャッシュをフラッシュする間隔と併せて考慮します。

 物理メモリサイズから算出した最適値をFileMaker Serverが示してくれていますので、ほとんどの場合(いわゆる「サーバクラス」のハードウェアを使用している場合)はこの数字をそのまま設定し、キャッシュをフラッシュする間隔を最小の1分にするという考え方で問題ないでしょう。ただし、負荷の大きいWebサービスを同時に行っているようなサーバの場合は、推奨値よりも少し低めにした方が良いかもしれません。

 参考までに、前述の図5において800MBの推奨値が示されているハードウェアは、4GBの物理メモリを持つApple Xserveです。

まとめ

 今回の記事では、データベースシステムとしてのFileMakerの位置づけとFileMaker Serverの必要性、いくつかの設定パラメータの考え方についてご紹介しました。後編では、運用上の注意点や管理権限の委譲、バックアップの仕組みやコマンドラインインターフェイスについて解説します。

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著者プロフィール

  • 竹内 康二(タケウチ コウジ)

    株式会社スプラッシュにて受託開発およびコンサルティング、トレーニング、各種サーバ構築 / 運用管理を行う。開発者 / ライターのコラボレーションチーム「sevensdoor.com」に所属し、米FMPtraining.comによる開発者向けトレーニングを日本向けにローカライズし、2005年から200...

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