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Windows Azure新機能チュートリアル

複数データセンター間でロードバランス機能を提供するTraffic Manager

Windows Azure新機能チュートリアル(8)

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 本稿では、現在CTP(Communication Technology Preview:開発者向け評価版)提供中であるWindows Azure Traffic Managerについての概要と、設定方法の手順について紹介します。

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はじめに

 Windows Azure Traffic Manager(以下、Traffic Manager)は、複数のホステットサービスで提供されているサービスに対して、ロードバランス機能を提供します。2011年4月に開催されたMIX2011で発表された新しい機能です。

 複数のホステッドサービスは、同一データセンターで稼働していても、異なるデータセンターで稼働していても構いません。Traffic Managerのロードバランス機能は、DNSクエリに対してTraffic Managerが適切なDNS名を返却することで実現されています。これは、一般的な負荷分散装置ではなく、DNSの仕組みを用いて実装されていることを意味します。

対象読者

  • Windows Azureの新機能に興味のある方
  • Windows Azureのサブスクリプションを持っており、Azureを利用したことがある方

必要な環境

  • Windows Azureサブスクリプション
  • Visual Studio 2010もしくは、Visual Web Developer 2010 Express
  • Windows Azure Tools for Microsoft Visual Studio 2011.3以降(Windows Azure SDK 1.4含む)

Traffic Managerの仕組み

 DNSをベースとした技術で実装されているTraffic Managerですが、この概要を示したものが図1となります。利用者はあらかじめポリシーを定義します。ポリシーには、ロードバランス方式やポリシーに含めるホステッドサービスなどを定義します。このときはポリシーに含めることができるホステッドサービスは、同一サブスクリプションに限ります。

 利用者は、Traffic Managerに割り当てられたDNS名にアクセスします(注1)。Traffic Managerは、定義されたポリシーにより、リクエストに応じたホステッドサービスのDNS名を返却します。利用者は返却されたDNS名に従ってサービスにアクセスすることになります。

 ロードバランス方式には、パフォーマンス(Performance)、フェールオーバー(Failover)、ラウンドロビン(Round Robin)の3種類の方法が提供されています。詳しくは、次節以降で解説します。

図1 Traffic Mangerの概念図
図1 Traffic Mangerの概念図
注1

 正式なサービスでは、独自ドメインを別名として割り当てて利用します。

パフォーマンス

 パフォーマンスは、アクセス元から最も近いホステッドサービスのDNS名が返却されます。Traffic Managerは、IPアドレスとデータセンター間の往復時間を記録したパフォーマンステーブルを使用して、返却するホステッドサービスのDNS名を決定します(図2)。例えば、東アジアと北中央アメリカにサービスを展開した場合、東アジアに近い地域からのアクセスは東アジアのデータセンターに、アメリカに近い地域からのアクセスは北中央アメリカのデータセンターに振り分けられます。

 ホステッドサービスがダウンしている場合には、そのホステッドサービスのURLは返却されません。また、Traffic Managerは各ホステッドサービスの負荷を考慮するものではないことに注意してください。

図2 パフォーマンス方式の概念図
図2 パフォーマンス方式の概念図

フェールオーバー

 フェールオーバーとは、その名のとおり、プライマリのホステッドサービスに何らかの障害が発生し、オフラインと判定された場合に、代替となるスタンバイ側のホステッドサービスのDNS名が返却されます(図3)。プライマリがオンラインの場合は、常にプライマリのDNS名が返却されます。プライマリ、スタンバイの順序はポリシーで定義します。

 すべてのホステッドサービスがオフラインの場合は、プライマリのホステッドサービスのDNS名が返却されます。

図3 フェールオーバー方式の概念図
図3 フェールオーバー方式の概念図

ラウンドロビン

 ラウンドロビンは、ホステッドサービスのDNS名が順番に返却されます。結果として、各ホステッドサービスへアクセスが均等に割り振られることになります。

図4 ラウンドロビン方式の概念図
図4 ラウンドロビン方式の概念図

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この記事の著者

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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WINGSプロジェクトについて> 有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS Twitter: @yyamada(公式)、@yyamada/wings(メンバーリスト) Facebook

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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