SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

実例で学ぶASP.NET 4.5 Webフォーム 新機能活用法

ASP.NET 4.5の新機能「Unobtrusive Validation(控えめな検証)」「async/awaitを用いた非同期ページ」

実例で学ぶASP.NET 4.5 Webフォーム 新機能活用法 第5回

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

async/awaitを用いた非同期ページの導入方法

 それでは、実際にasync/awaitを用いた非同期ページをどのように導入するのか説明していきましょう。手順としては、以下のようになります。

  1. Web.configに同期コンテキスト設定を行う
  2. Webページごとに非同期処理を有効にする
  3. イベントハンドラー等で非同期処理を呼び出す

 順に説明していきましょう。

Web.cofigに同期コンテキスト設定を行う

 非同期処理は「同期コンテキスト(SynchronizationContext)*2)」と切っても切れない関係にあります。async/awaitを用いた非同期ページでは非同期処理にTaskクラスを用いるため、Taskを基本とした同期コンテキストを使うよう、Web.configで指定する必要があります(リスト5)。

リスト5 TaskFriendlySynchronizationContext使用の指定(Web.config)
<appSettings>
  ...
  <add key="aspnet:UseTaskFriendlySynchronizationContext" value="true" />
</appSettings>

 この設定には、appSettingsセクションに、キーが"aspnet:UseTaskFriendlySynchronizationContext"、値が"true"のエントリを追加します。

*2:同期コンテキスト(ShynchronizationContext)

 非同期処理を別スレッドで行わせるためのAPIは、コンソール、Windowsフォーム、ASP.NETなど、プラットフォームによって異なります。こういった処理を統一的に扱うために用意された仕組みが、同期コンテキストです。その実態はShynchronizationContextクラスで、Postメソッドなどを使って非同期処理を制御することができます。それぞれのプラットフォームでは、専用のSynchronizationContextクラスの派生クラスが用意されていることもあります。

 

 async/await構文を使った処理の内部では、現在動作しているスレッドのための同期コンテキストを取得し、その同期コンテキスト使って別のスレッドに処理を委譲します。詳しくは以下の記事を参照してください。

 

Webページごとに非同期処理を有効にする

 非同期処理を有効にするには、PageクラスのAsyncプロパティにtrueを設定します。aspxファイルの@Pageディレクティブで設定するのが、もっとも簡単な方法でしょう(リスト6)。

リスト6 非同期処理の有効化(LocationsDetail.aspx)
<%@ Page Title="" Language="C#" MasterPageFile="~/Site.master" AutoEventWireup="true"
  CodeFile="LocationsDetail.aspx.cs" Inherits="LocationsDetail" Async="true" %>

イベントハンドラー等で非同期処理を呼び出す

 次に、コードビハインド側で非同期処理を呼び出します(リスト7)。

リスト7 非同期処理の呼出し(LocationsDetail.aspx.cs)
// 更新処理
public void UpdateLocation(Location location)
{
  // (1) 非同期処理を内包したPageAsyncTaskオブジェクト作成
  var task = new PageAsyncTask(async () =>
    {
      // モデル検証でエラーがあれば処理中断
      if (!ModelState.IsValid) return;

      // ビジネスロジックの更新処理実行
      var logic = new LocationLogic();
      await logic.Update(location);

      // 場所参照画面に戻る
      BackToLocations();
    });
  // (2) PageAsyncTaskの登録
  RegisterAsyncTask(task);
}

(1)非同期処理を内包したPageAsyncTaskオブジェクト作成

 非同期で行いたい処理を内包するPageAsyncTaskクラスのインスタンスを作成します。PageAsyncTaskクラスのコンストラクタには、Taskオブジェクトを渡します。ここで、async/await構文の出番です。先にMRRS.BLLプロジェクトに定義したビジネスロジックを非同期化しておくことで、async/awaitを使った非同期処理を使って、非同期に実行する処理を記載することができます。

(2)PageAsyncTaskの登録

 (1)で作成したPageAsyncTaskオブジェクトを、PageクラスのRegisterAsyncTaskメソッドに渡して呼び出すことで、非同期ページの処理を登録します。あとは登録した処理が自動的にASP.NETに割り当てられたスレッドとは別のスレッドによって行われます。

 欲を言えば、イベントハンドラーなどユーザーの入力を受け取るメソッドにasyncをつけることができればよいのですが、現状ではできないようです。

 以上で非同期ページを使用する準備は終わりです。実行してみると、非同期ページを導入する前と変わりなく、場所の変更処理が行われることが確認できます。つまり、クライアントサイドからは、非同期であるかどうかを意識することはない、ということです。

まとめ

 今回はASP.NET 4.5 Webフォームの新機能の控えめな検証とasync/awaitを用いた非同期ページについて学びました。ポイントをまとめると、次のようになります。

  • 控えめな検証は、検証サーバーコントロールによって出力されるJavaScriptが「控えめ」になる
    • 控えめな検証が無効の状態では、大量のJavaScriptコードが出力される
    • 控えめな検証を有効にすると、data-*属性を利用することによりJavaScriptのコードが抑制される
  • 控えめな検証を有効にするには次の手順が必要
    • ASP.NET 4.5では既定で有効
    • 明示的に有効にするには、Web.configのappSettingsセクションに、キーが"ValidationSettings:UnobtrusiveValidationMode"で値が"WebForms"のエントリを追加する
  • 非同期ページは、サーバーサイドの処理をASP.NETとは別のスレッドに移譲し、非同期で処理を行う
    • クライアントとサーバー間の処理が非同期になるわけではない
    • 目的は大量のリクエストが来た時にASP.NETのワーカースレッドが枯渇することを防ぐこと
  • 非同期ページ自体はASP.NET 2.0のころからある
    • ASP.NET 4.5では.NET Framework 4.5で導入されたasync/await構文を使って、比較的シンプルに非同期ページを実装できる
  • 非同期ページ使用するには次の手順が必要
    • Web.configのappSettingsセクションに、キーが"aspnet:UseTaskFriendlySynchronizationContext"で値が"true"のエントリを追加する
    • PageクラスのAsyncプロパティをtrueにする(@Pageディレクティブで設定する)
    • イベントハンドラーなどで、PageAsyncTaskクラスのオブジェクトを作成する
    • PageAsyncTaskのコンストラクタにasync/awaitを用いた非同期処理呼び出しを記載する
    • Page.RegisterAsyncTaskメソッドを使い、PageAsyncTaskオブジェクトを登録する

 今回でASP.NET 4.5の新機能の紹介は終わりです。次回からは連載の最後として、ASP.NET 4.5ではありませんが、Webフォームの新たな追加機能である「スキャフォールディング」について紹介する予定です。お楽しみに。

この記事は参考になりましたか?

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
実例で学ぶASP.NET 4.5 Webフォーム 新機能活用法連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

WINGSプロジェクト 高野 将(タカノ ショウ)

<個人紹介>新潟県長岡市在住の在宅リモートワークプログラマー。家事や育児、仕事の合間に長岡IT開発者勉強会(NDS)、Niigata.NET、TDDBCなどのコミュニティに関わったり、Web記事や書籍などの執筆を行ったりしている。著書に『アプリを作ろう! Visual C#入門 Visual C# 2017対応』(日経BP社、2017)など。<WINGSプロジェクトについて>有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS X: @WingsPro_info(公式)、@WingsPro_info/wings(メンバーリスト) Facebook

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/7466 2013/11/11 14:00

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング