ラムダ式とは
LINQを使うには、ラムダ式なるものを理解しなければなりません。ラムダ式とは、前述のメソッド式の中の「x => x.Length == 6」のような部分です。「=>」という見慣れない記号に戸惑うかもしれませんが、「ラムダ式はその場で定義できる関数みたいなものだ」と考えてください。リスト3は、先ほどのLINQメソッド式のWhereを、LINQを使わずに似たような処理として書いてみたものです(ただし、foreachで回してその場でConsole.WriteLineしているので、処理内容は等価ではありません)。
//文字列長が6ならTrueを返すメソッド static bool IsLength6(string x) { return x.Length == 6; } //ラムダ式理解のために、Where部分だけを書き下してみる foreach (var name in names) { //文字列長が6なら出力する if (IsLength6(name)) { Console.WriteLine(name); } }
ここでは、「IsLength6というメソッドがtrueを返す文字列」だけを出力する、という処理を書いていますが、「IsLength6というメソッドをわざわざ定義せずに、その場で書けないか」という要望に応えるのがラムダ式です。つまり、「x => x.Length == 6」というラムダ式が、IsLength6メソッドと同じような役割を果たします。「=>」の左側の「x」はメソッドの引数に、右側の「x.Length == 6」はreturn文に相当します(もちろん「x」は単なる引数名ですので、「y」でも「z」でも何でも構いません)。
また、「.Length」は文字列型のLengthプロパティを使っています。IsLength6メソッドでは「xはstring型である」とわざわざ定義していますが、Whereメソッドのラムダ式ではxの方は明示していません。これは型推論という処理が内部的に行われることにより、可能となった記述です。型推論は「string[]のnamesを一個一個取り出して処理するのだから、xはstringに決まってるよね」というように自動的にxの方を推論してくれます。とっても賢くてステキですね。
さらにスマートなことに、Visual Studioはラムダ式を書いている時に、「型推論からxはstring型と分かっているのだから、"x."と入力されたら、string型で使えるプロパティやメソッドを見せてあげなくちゃね」と気を利かせて、図1のようにIntelliSense表示してくれます。
Visual Studioが単なるテキストエディタではなく、書かれたコードをきちんと解析しており、さらにLINQが「統合」言語クエリだからこそ実現可能なポイントですね。
LINQメソッド式を読み解いてみる
さて、ラムダ式についてざっくり理解できたところで、リスト2のラムダ式を簡単におさらいしておきましょう。
//上記クエリ式をメソッド式に置き換えたもの query = names.Where(x => x.Length == 6).OrderBy(x => x).Select(x => x.ToUpper()); //出力結果は同じ Console.WriteLine(string.Join(",", query));
Whereメソッドは「クエリ対象から特定の条件を満たすオブジェクトだけをフィルタする」という役割がありますので、「条件を示す、bool型を返すラムダ式」を指定します。OrderByメソッドは「オブジェクトのどのフィールドでソートするか」を指定する必要がありますので、ここでは「x => x」つまり「引数となる文字列xをそのまま返すラムダ式」を指定します。Selectメソッドでは「クエリ対象のオブジェクトから、最終的にどんな値を返すか」を指定する必要があり、ここでは「x => x.ToUpper()」として、「大文字化した文字列を返すラムダ式」を指定しています。
ラムダ式のすべてを解説するのは大変ですが、上記の範囲が理解できていれば、本連載でデータベースへのクエリを書くのに十分な知識があると言っていいでしょう。何より、Visual StudioのIntelliSenseが強力にサポートしてくれますので、「ラムダ式って良く分からないな。どう書けばいいのかな」という不安を取り除いてくれるでしょう。