働き方と給与は東京と同じ、ただオフィスが沖縄にあるというだけ
それでは実際に、田口さんは沖縄オフィスでどのように働いているのだろうか。リモートでの働きにくさは感じないのだろうか。
田口さんは、「もちろんですよ。むしろ東京にいるときよりも生産性はぐんと上がりました」と胸を張る。
「出勤で疲弊することもなく朝から集中して仕事に取り組め、その集中力を途絶えさせる電話や雑務も、長引きがちな会議もありません。アイデアや解決法に悩んだら海沿いを散歩してリフレッシュし、備え付けのキッチンで気分転換にランチを作って食べることもあります。量的な生産性はもちろん、仕事の質そのものが上がり、疲労感やストレスも激減しました」

とはいえ、東京から遠く離れた環境。フロントエンドの開発ともなれば新しいトレンドに対する感度が求められ、他部門と密接に連携する必要もある。新しい情報や技術についての格差への不安はないのだろうか。また、社内でのコミュニケーションには不都合はないのだろうか。
「いや、まったく不安も不都合も感じたことはないですね。日常的にインターネットに触れているためか、情報は普通に入ってきます。むしろ東京は雑音が多くて振り回されがち。コミュニケーションについてもちょうどいいくらいだと思っています。そもそも東京のオフィスでもエンジニア同士はチャットでやりとりしていますし、打ち合わせや会議が必要なときはSkypeで十分に足りています」
さらに田口さんは、沖縄ならではの方法で自分のスキルを磨いているのだという。
「ボランティアで友人のマリンショップのサイトやシステムの構築を手伝っています。そこで新しい技術や仕組みを試すことが、自分のスキルアップにもつながっています。その代わり、マリンショップが行っているツアーに無償で参加させてもらっています。金銭的な授受なしでそういうことができるのも地方だからというのはあるでしょうね」
それでは待遇面や給与などはどうだろう。沖縄は日本で最も給与水準が低く、会社によっては東京の半分以下というところもあると聞く。
「沖縄の給与水準は、他社を見ても確かに低めです。しかし、当社に関していうと、給与は東京と変わりません。その点でも非常に満足しています。沖縄オフィスといえども、東京で働いているのと何ら変わらない働き方と報酬で、ただオフィスが沖縄にあるというだけなんです。地方ということもあり、東京に住んでいた頃よりも支出が減ったので、さらに生活にゆとりが出るようになりました。飲み代も安くて助かってます(笑)」
こうして聞くと、仕事におけるデメリットはほぼゼロのよう。それではプライベートではどうだろう。田口さんいわく「家族の充実した時間が持てるようになり、小さな幸せを実感できるようになった」という。

「18時半頃には終業して、帰宅後は子どもとたっぷり遊び、ゆったりと夕食をとって家族の時間を過ごします。休日は海や森など自然の中に出かけたり、アメリカンビレッジで食事や買い物を楽しんだり、のんびりと過ごすことが多いですね。確かに東京の友達と離れてしまったのは残念ですが、むしろ家族連れで遊びにきてくれるようになって、会う機会が増えました」