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データベースを業務で使いたい──。開発者なら誰もが慣れ親しんで聞くフレーズである。では本当に誰もが満足するデータベースを構築できているのだろうか。「実はデータベースはサービスを提供する側、使う側によってニーズは異なる。ここに難しさがあるのです」。こう語るのは、FileMaker Pro 東京ユーザーズミーティング代表を務める竹内康二氏である。
サービス提供側のニーズとは、標準的な技術を採用しており、構築やメンテナンス、運用がしやすく、かつ堅牢で可用性が高く、高速性に優れているなどである。しかしこれらのニーズを満たすものには問題点もある。つまりちゃんとしたデータベースであるがゆえに、費用がかかるだけではなく、構築にも時間がかかる。「きっちりとしているからこそ運用開始後の仕様変更や機能追加などは避けたいと考えてしまう」と竹内氏。
一方、利用者側のニーズは、「場合によってころころ変わる」と竹内氏は語る。業務やデータの性質によってニーズの重みが変わるというのだ。つまりデータベースの良し悪しの基準は、「自分の仕事がうまくいくかどうか」。したがって堅牢性や高速性は重視するものの、自由度の高いもの、分かりやすいもの、使いやすいものを求める傾向がある。例えば「ボタンは右ではなく左に置いて欲しいとか、やっぱりそれを元に戻して欲しいとか、提供者側にとってはいちいち聞いていられない、という要求が多い。だがこれらの要求は間違ってはいない。ここに問題がある」と竹内氏は指摘する。
サービス側、利用者側のニーズが衝突した結果として待っているのが、「現場が泣いて自由を我慢する」、もしくは「基幹のサービス提供側が泣いて改変を重ねる」という二者択一の現実だ。「この打開策として提案したいのが、部署内のことは別のツールで処理させるという方法です」と竹内氏は強調する。そうすれば基幹のサービス提供側の手離れは良くなり、基幹システムの改変も防ぐことができる。現場側も自由にやりたいことができるので、生産性が向上する。
竹内氏が救世主として紹介するのが、「FileMaker Pro」である。「FileMakerというと、1テーブル=1ファイルで住所録ソフトというイメージがあるかもしれないが、それは2002年のVer.6.0までのこと。Ver.7.0以降のFileMakerは以前とはまったく別のソフトウェア。現在のVer.9.0ではSQL系データベースやLDAPサーバーとの連携はもちろん、PHPやXSLTを介してWebサーバーにアクセスも可能です。XMLでWebサービスを呼び出すことも、ODBCを使えばAccessやExcelとの連携もできる。利用者側と提供者側のニーズのギャップを埋める存在として非常に有用なツールなんです」と竹内氏は強調する。
一般的なRDBMSは高速で堅牢、運用面の冗長性が高いなどのメリットがある反面、設計・構築が手軽にできず、SQLの知識も必要など取扱いのハードルも高い。
一方のFileMakerはRDBMSと比較すると高速性に劣り、運用面の冗長性も低く、大規模なものには向かなというデメリットはあるものの、SQLの知識が不要のため、取扱いが楽で現場の人でも容易に構築が可能だ。動くまでが早く、専用クライアントのUIツールが優れているというメリットもある。「このようにデータベースには適材適所がある。これをうまくコラボレーションさせることが、提供者・利用者双方のニーズをうまく満たす方策。お勧めです」。竹内氏は、RDBMSとFileMakerの両方を使った構築例をいくつか提示した(図1)。
「もちろんFileMakerがカバーできないところもあります。でも基幹ですべてをやろうとするのは不自然。システム構築の効率、日々の業務効率を向上させるためにも、適材適所なデータベースの採用を心がけて欲しい」。竹内氏はそう語り、セッションを締めくくった。