コードジンのヘッダーが入ります
「唯一のコミュニティで育てられた14歳のRubyは、これから社会の荒波にもまれていくことになる」と、永和システムマネジメント サービスプロバイディング事業部 チーフプログラマで、日本Rubyの会 理事の角谷信太郎氏は語る。
今は、Rubyを取り巻く国内外の状況を整理すると共に、Rubyのためにできることを考える時期にきていると言える。また、Rubyに関連するさまざまなコミュニティが行っている具体的な取り組みについても知りたいところである。そのような意向を受けて、Rubyの開発技術をサポートする CodeGear を始め、日本Rubyの会、Rubyアソシエーション、Akasaka.rb、Rubyビジネス・コモンズなどのコミュニティが一堂に会して、パネルディスカッション「David Intersimoneと日本のRubyのコミュニティが、オープンソースの現在と未来について語る会」が開催された。
パネルは冒頭で、モデレータを務めた前出の角谷氏が、テーマを「Rubyのためにできること」と設定。続いてCodeGear デベロッパーリレーションズ担当副社長兼チーフエヴァンジェリスト デビット・インターシモーネ氏ら5名のパネリストが、Rubyおよびこのパネルに対する期待を込めて挨拶した。
デビット・インターシモーネ氏は、CodeGearで開発者コミュニティとの接点となる人物で、各国のコミュニティ活動を熟知している。海外では、Rubyは急速なペースで受容されつつあると言われているが、見えにくい面もある。この点に関して同氏は、「昨年は、米国でもヨーロッパでも各地で開発者のためのRubyや、Ruby on Rails(Rubyで書かれたWebアプリケーションフレームワーク)に関する主要な会議が開かれた」とした上で、オレゴン州で行われたコンファレンスを例に挙げて、「2006年までの参加者は個人中心だったが、2007年は各企業からの参加者も増え、1600名も集まった」と、実ビジネスへの適用が進んでいることを報告した。CodeGearでは、RubyやRuby on Railsの開発をサポートする総合開発環境(IDE)3rdRailを提供しているが、このことについては「開発者の生産性向上が目的であり、日本語版の提供も含め、ますます機能の強化と充実を図っていきたい」と述べた。
国内の各コミュニティの取り組みに関して、ネットワーク応用通信研究所 基礎研究グループ主任研究員で、Rubyアソシエーションを設立した前田修吾氏は、「アソシエーションでは、Rubyの公式ロゴ制定やスキルの認定試験の制度化を行っている」と説明し、「Ruby1.9は、もっと安定性を高めなければならない」と指摘。デビット・インターシモーネ氏は「RubyとRailsの双方が進化していくことが求められている。また、学習やコンサルタントも必要」と、課題に言及した。
ツインスパーク 制作部に所属し、日本Rubyの会 代表でもある高橋征義氏は、「(同会は)ユーザとして活動しており、6月にRuby会議を開催することになった」と紹介し、「Ruby1.9のマニュアルがほしい」と要望した。
伊藤忠テクノソリューションズ ITエンジニアリング室 先端技術チーム先端技術課 高井直人氏は、赤坂周辺のRubyユーザが集まる勉強会、Akasaka.rbでも活動している。その高井氏はJavaで動くJRubyの開発にも力を注いでいるが、「Rubyの低予算、短納期といった面ばかりが強調されている」と、問題点を訴えた。
一方、イーシー・ワンのエンジニアで、会員370名を擁するRubyビジネス・コモンズの会長でもある最首英裕氏は、「東京一極集中を変えたい」として、「東京以外にも、福岡、名古屋、長崎などでRuby on Railsの勉強会を開催してきた」ことを報告した。
その他、パネリストからは、「日本と海外とのコミュニケーションの現状」、「Rubyのリリースにおける問題点」、「Ruby開発の場の必要性」などが話し合われた。
このパネルを通して、各コミュニティがさまざまな面からRubyの開発、普及、進化に努力している姿勢がうかがえた。