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ERPパッケージのデファクトスタンダードとも言われるSAP ERP。SAP ERPをはじめ、多くの企業がERPに投資をしているものの、想定した以上の効果を上げている企業はそれほどない。なぜ投資対効果が得られないのか。広川敬祐氏は「ERPは単なる道具。効果が出るかどうかは、使う側の主体性、賢明さによる。しかし多くの人は、ERPのように高価なツールになればなるほどツールがすべてやってくれると錯覚してしまうのです」と指摘する。続けてSAPシステムの本質を料理に例えて解説した。「パッケージは座っていると順次、料理が運ばれてくるコース料理と捉える傾向があるが、バイキングと同じ。いっぱい並んでいるメニューの中から、ユーザーが食べたいものを選ばなければならない。つまりユーザーが不在だとERP導入プロジェクトは失敗する可能性が高いのです」。
ERP導入プロジェクトの失敗要因の第二は「プロジェクトリーダーの資質不足」(広川氏)だという。「リーダーはSAP ERPの知識が豊富でなければならない。長嶋茂雄氏がいくら優秀な野球の監督とはいえ、サッカーの監督をしても成功しないのと同じ」と分かりやすい例え話を用いて解説した。第三に要件定義に時間をかけすぎていることも問題だという。「要件定義に時間をかけすぎて、詳細設計や開発の時間が押されてしまい、結果、コストが増大してしまうのです」(広川氏)。しかも要件定義で時間をかけすぎることは、「Unsold Add-on:誰も使わないアドオン機能」が増える原因にもなりかねないと指摘する。
第四は人月単価を抑えることだけに目を向けてしまう傾向があること。「安物買いの銭失いにはなってはいけません」と広川氏は示唆。第五はコミュニケーション不足。「ほとんどのアドオンはパッケージ機能と実現したい要件との過不足によってではなく、コミュニケーションとスキル不足によって起こるのです」と広川氏は言い切る。
第六はシステム構築のアプローチが古典的であること。「パッケージを導入するにも関わらず、従来型のウォーターフォール型で開発を進めるケースがまだまだ多い。パッケージを導入する場合は、プロトタイプアプローチ(スパイラル)を採用するといいでしょう」(広川氏)。
ではERP導入プロジェクトの成功の秘訣とは何か。先の失敗要因に気をつけることももちろんだが、以下の3つの秘訣が重要であるという。第一がプロジェクト体制として、トップの共感があること。第二がやりたいことが具体的で明確になっていること。「あれも、これもやりたいと理想のシステムを追い求めると、失敗に至ってしまう。重要なのはクリティカルな目的や機能が、パッケージできちんとカバーされているかどうかをチェックすることです」(広川氏)
第三に「手段と目的を混同しないこと」(広川氏)だ。「ERPパッケージの導入は目的を達成するための手段。手段は本来、技術と環境により変化していきます。手段が変化することにこだわるあまり、いつのまにか手段を達成することが目的になってしまうことも多いのです。2つ目にも挙げたとおり、目的は何かを常に意識しておくことが大切だ」と広川氏は力説する。
今回は投資対効果を測定する項目などについては解説されなかったが、NTTデータ経営研究所ではもちろん、そのノウハウも持っている。広川氏は「ERP導入での投資対効果について聞きたいことがあれば、いつでも気軽に連絡してほしい」と語り、セッションを終了した。