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優れた表現力や操作性を持つWebアプリケーションRIA(Rich Internet Applications)が注目されている。グラフィック系アプリケーションのトップベンダーであるアドビの轟啓介氏の講演は「RIAの導入と活用には課題もある」との指摘で始まった。まず、従来のHTML等で作成されているWebページと比較して、FlashやJavaアプレット、Ajaxによる開発が加わるため、コスト高というイメージが強い。
また、RIAの持つアドバンテージに対する理解が不足しているため、とりあえずFlash、AIRで作ったというような、技術偏重による失敗例もある。加えて情報デザインを行える人材が不足していることも問題だ。
ではRIA開発に必要なことは何か。まず「ユーザにとってユーザ・エクスペリエンスが全てというRIAのキモを理解しなければならない」と轟氏は強調した。ユーザ・インタフェースが全てという言い方もあるが、情報の整理、画面の見やすさ、操作性とフィードバック、気持ちのいいパフォーマンスなど、エクスペリエンスにまで話を広げる必要がある。
もう一つは、プロトタイプの開発がキーワードになる。プロジェクトの初期段階から実働するモデル(プロトタイプ)を作り、早めにユーザからフィードバックを得るなど、積み重ねが重要だ。当然、開発コストの圧縮も必要になる。
そこで注目したいのが、アドビによるデベロッパーのためのFlashフレームワーク、Flexだ。Flex SDK(コンパイラ、デバッガなど)は無償提供。MXML(XML)とActionScript3でFlashを開発する。Eclipseベースの開発環境であるFlex Builderで効率良く開発可能で、AIRアプリケーション開発も効率化する。サーバサイドの開発で学んできたアーキテクチャーを流用できる点も見逃せない。
轟氏は現在、アドビが次世代Flexフレームワークを「Gumbo」というコードネームで開発中だと話した。リリースは2009年秋の予定で、最大の特徴はLook & Feel(外観と振る舞い)とLogic(機能)を分離することで、デザイナーとデベロッパーの協業にフォーカスしていることだ。
さらに、こちらも開発中のインタラクション・デザイン・ツール、Adobe Flash Catalystが紹介された。現在、デザイナーがデベロッパーと話をする際は、Photoshopなどで画面デザインを作成し、デベロッパーがFlex上でスキンとしてあてはめていた。Flash Catalystは画像データを、レイヤーを保持したまま読み込み、Flexプロジェクトに変換できる。同時にFlashのスクリプト言語のActionScriptを書かずにGUI操作でエフェクトなどを設定可能になる。加えてアドビのグラフィックアプリケーションの最新バージョン、CS4ではFlexのFXGフォーマットでデータの書き出しができるようになっている。
ここで轟氏はFlash Catalystを使用したデモを披露した。まだα版でもない開発中のバージョンで、実装されている機能が限定されているが、データの読み込みと変換、エフェクト付加など基本的な機能を理解することはできた。
今回のデモでは、デザイナーとデベロッパーが双方向で作業を行うラウンドトリップ・ワークフローの様子も再現された。シナリオは、デザイナーが作成したジョグダイヤルの簡素な説明用画像をFlash Catalystに読み込み、次のバージョンのFlex BuilderでサポートされるProjectファイルフォーマット「FXP」で書き出す。受け取ったデベロッパーはFlex Builder上でダイヤル動作のためのActionScriptを付加して戻す。受け取ったデザイナーはFlash Catalyst上で動作を確認し、ダイヤルの画像を本番用の精彩なものに置き換えるという流れだ。
Flash Catalystを使えば、プロジェクトの初期段階で方向性を決めていく時、動作等を確認しながら進めることで、プロセスを最適化していくことができる。シームレスなワークフローで開発コストを削減すると同時に、各専門家の領域外の作業を排除することで、スキルを最大限に引き出すことが期待される。
Flash Catalystのリリースは2010年に入ってからの予定だ。轟氏は「2009年6月にはパブリックベータ版をダウンロード可能にしたい。アドビにリクエストするプログラムも用意するので、ぜひフィードバックしていただきたい」と語り、講演を終了した。