コードジンのヘッダーが入ります
「モバイル・クラウド・コンピューティング―如何に格納し、組み合わせ、情報として引き出すか」と題して講演したアイエニウェア・ソリューションズ株式会社 エンジニアリング統括部 部長 舟木将彦氏は、クラウドの普及のもっとも大きな要因として、回線の高速化を第一に挙げる。最近ではWiMAXなどのサービスも続々始まってきており、今後はモバイル端末からインターネット上のサービスを利用するといったことが当たり前になってくるという。
舟木氏は、そうしたサービスの事例として、DBMS+WebGIS+自然言語対話エンジンを使った地図検索サービスを紹介する。ここでは行きたい店の情報などを、モバイル端末上からアクセスして調べることができる。いうまでもなくこのバックエンドにはデータベースがあるが、舟木氏は、クラウド・コンピューティングと言いつつ従来のクライアント/サーバー構成での考え方を踏襲していては、ユーザーにとって快適でしかも利用しやすいパフォーマンスを備えたサービスは実現できないと指摘する。
「クラウドは、PCであってもモバイルであっても情報共有が可能な点で実に便利なテクノロジーだ。しかしその一方で、差分データだけを効率的に集め、矛盾なくデータの同期を取ることはそれほどたやすいことではない。これが開発側にとっての大きな悩みだ」。
そこで考えられるのが、すべてのデータをクラウド上に置いてアクセスするのではなく、モバイルローカルストレージ上のデータベースに必要なデータだけを格納して、高速なアクセスと、オンライン・オフラインを意識させない「いつでも・どこでも」使えるシステムを実現することだという。
「クラウドとの同期が難しいのであれば、それを無理に行う必要はない。むしろ、必要なデータを適確に収集し、ローカルデータとして扱う方が効果的な使い方ができる。たとえば天気予報、株価情報、最新ニュースなどは、特定のサイトが利用できなくても類似のサイトから代わりの情報が得られる。情報種別にある程度の差違はあっても、ベストエフォートでデータを収集し、ローカルのデータベースに格納した後は、そのデータがどこにあったかを意識することなく自由に整理・活用できる。こうして作成された2つのテーブルをJOINすることにより、データを情報に変えられるようになる。要はユーザーにとって有益な情報を、必要に応じて提供できることが第一義であって、それが実現できれば、つねにクラウドにアクセスすることは重要ではない」。
アイエニウェア・ソリューションズでは、こうしたモバイル・クラウド・コンピューティングのために有効なツールを提供している。その一つ「MobileLink」は、クラウドや企業内データとノートPCやスマートフォン、PDAとの間でデータの双方向の同期が矛盾無く可能だ。また、「Answers Anywhere」は、単に自然言語で入力されたクエリを解析し、SQLに変換してデータを検索するだけでなく、ヒット件数に応じて履歴や文脈を元に、条件を変えながら情報を提示可能だ。また高速・軽量なWebGISエンジンであるMapletは、地図情報を図形データとして配信できる。これらを活用して「見たい情報」だけを大量のローカルデータの中から選択してクラウド上に配置したり、必要な情報への絞り込みを容易に行うことで、ユーザーはデータの出自を意識することなく、常に欲しい情報にどこからでもアクセスできるようになると舟木氏は結んだ。