コードジンのヘッダーが入ります
クラウドには複数のテナントが使用するパブリック・クラウドと、その定義をある意味拡大解釈した、1社かグループ内のクローズドな環境で使用されるプライベート・クラウドの2種類がある。オラクルの佐藤 直生氏は「両方のクラウドを完全に企業向けとしてサポートし、選択肢を提供するのがオラクルのクラウド・コンピューティング戦略」と説明する。
パブリック・クラウドでは、たとえばOracle CRM On DemandとしてSaaSを提供している。パートナーについてもAmazon EC2とOracleは強いパートナーシップで連携しており、Oracleデータベース製品やミドルウェア製品をAmazon EC2上で構築し、動かすことがサポートされている。
オラクルは7年ほど前からグリッド・コンピューティングを提唱してきた。それはミドルウェア、データベース、ストレージ、インフラストラクチャ、管理のすべての層でグリッドに対応するというものだ。たとえばEnterprise Managerが提供するアプリケーション・グリッドとデータベース・グリッドにより、自動的なキャパシティ調整が可能になる。佐藤氏は「プライベート・クラウドは、グリッド・コンピューティングの進化形であり、それを構築する環境を整えている」と解説する。
続いて紹介された今後リリース予定のJRockit Virtual Editionは、OSのレイヤーを除く製品だ。今日のOSは、万人向けを意識するあまり、急激に複雑化しており、しかもOSの機能の99%は使われていない。さらにJavaではOSの上にJVMが載るため、複雑性が増す。そこでJRockitの中に極めて軽量なOS的実装をして、その上でJVMを使うというのが製品のコンセプトだ。
セッション後半のテーマはストレージだ。スピーカーは中嶋 一樹氏に交代した。もしストレージが1台という構成でサービスを提供していた場合、クラッシュするとシステム全体がダウンしてしまう。そこで2台にしたとしても、リスクの軽減は50%に過ぎない。サーバーに関してはクラスターまたはレプリケーション構成によって並べてパフォーマンスを出し、可用性を確保することが浸透している。そこでオラクルが提案しているのが、ストレージも並べた、ストレージ・グリッドだ。
サーバーは通常、LUと呼ばれている論理ボリュームを認識し、そこにI/Oを発行する。オラクルにはASM(Automatic Storage Management)というストレージ管理ソフトウェアがある。サーバーにインストールしたASMがボリュームを認識するとLUとの間にDISKGROUPという抽象化のレイヤーが入る。サーバーが認識するのは、この複数のストレージが統合されたDISKGROUPであり、ストレージを追加すると自動的に拡張される。
実はボリュームの容量拡張には、それほど複雑な技術を必要としない。しかし既存のストレージにデータが集中したままでは、I/O性能が上がらない。中嶋氏は「ASMが優れているのは、新旧のストレージ間でデータのリバランスを自動的に行うことができる点だ」と強調する。さらにASMによりデータを二重、三重に分散登録する冗長化も可能だ。しかも作業はすべてオンラインで、オフラインにする必要は一切無い。
またデータをメモリ上で圧縮してからストレージに書き出すOracle Advanced Compressionを用いればI/O量を削減することができ、結果的に既存のH/W構成のままでI/O性能の限界値を上げることができる。ストレージ増加が高速道路の車幅拡張工事だとすれば、圧縮は車の積載量を増やすということになる。
最後に中嶋氏は「オラクルはクラウドを実現するのはグリッドだと考えている。それを誰もがすぐに使える技術にしたい」と語り、セッションを閉じた。