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クラウドサービスで先行したのはSaaSだが、現在ではプラットフォームもPaaSとしてWebの向こう側にある。では、現在提供されている代表的なプラットフォーム・サービスにはどういう特徴があるのか。セールスフォースの岡本 充洋氏の分析は以下の通りだ。
まずamazon S3&EC2はクラウドのインフラ上の仮想マシンを提供している。汎用的に利用可能で、OSやミドルウェアを自由に載せていくことができる。ただし、載せたもののバージョン管理などは自己責任だ。
Windows Azureは、コンシューマーやB to Cに適したクラウドプラットフォームだ。ユーザー階層がフラットで、拡張性は非常に大きい。大規模な公開Webサイトを構築するには優れたテクノロジーだが、エンタープライズ用途で使うには、現時点では機能不足だ。
一方、セールスフォースのForce.comでは、ビジネスアプリケーションを素早く作成し、ビジネスマネジメントを行うための標準フレームワークが豊富に用意されている。同時に、運営を続けていくのに便利なマネジメント関連の機能も含んでいるのが大きな特徴だ。
またアーキテクチャー、ビジネスモデルの観点で、Force.comと他のサービスとはユーザーアカウントの考え方に決定的な違いがある。EC2やAzureでは開発者がアカウントを取り、クラウド上でWebアプリケーションを作る。そしてエンドユーザーはそれを利用する、というのが基本的な考え方になっている。一方、Force.comでは基本的に開発者、エンドユーザーに係わらず、プラットフォームをサービスとして利用する。
各ユーザー企業は、企業情報やユーザーアカウントなどを「実データ」として持ち、カスタマイズやプログラム部分はすべて「メタデータ」として持つ。そして両データがランタイムエンジンに「引数」で渡されることによりアプリケーションが描画される。
これはOSの仕組みをクラウド上で実現したものといえ、一つの組織は一つのアカウントで、プラットフォームに様々なアプリケーションを複数インストールが可能だ。そのアプリケーションに対してセールスフォースが課金することはなく、つまり使えば使うほど費用対効果が向上する。
Force.comにおけるアプリケーション作成は、WebブラウザでDeveloper Editionにログインして行う。システムの質問に答えて選択肢やタブを選んでいくと、ユーザーインターフェースを持ち、アクセス制限、ワークフロー制御、BIエンジンによる分析など基本的な機能を備えたアプリケーションができてしまう。もちろん、標準機能だけで有用なアプリケーションを作成するのは無理なので、プログラミング言語のAjaxで正規表現、計算処理、DB操作など、本格的なロジックを記述する。さらにWeb標準技術を利用してUIを記述するVisualforceを利用すれば、画面を完全にカスタマイズ可能になる。作成したコンテンツはForce.com Sitesにパブリッシュすれば、パブリックWebサイトとして公開できる。
またセールスフォースは、インフラを持たずにSaaSビジネスを起こし、運営するための環境、サービスも提供している。まず、開発環境や技術情報は無償だ。開発したアプリケーションはパッケージングし、これまでの実績で信頼を得ているセールスフォースのサイト上で公開できる。
さらにユーザー企業が登録したSaaSアプリケーションの、無償試用を含めたライセンス管理サービスが利用可能だ。全ユーザーに対するパッチのプッシュ配信により、Force.comのアプリケーションには単一のバージョンしか存在しない。
岡本氏は「まず触り、いろいろ試してほしい」とメッセージを投げかけ、セッションを終了した。