コードジンのヘッダーが入ります
住商情報システムの島村伸之氏が紹介した最初の事例は、インターネット上にある情報管理会社に代理申請をしている業者の業務改善依頼だ。課題になったのは、手紙やFAXで預かった申請情報の電子化と過去申請書類の検索にかかる手間の軽減と、3年間保管する必要がある紙情報の保管コスト削減だ。
最初に相談したSIベンダーは、顧客から預かった申請情報をPDF化してサーバーに保管することを提案したが、必要なHDD容量の大きさによるコストが想定よりも非常に高かった。そこで住商情報システムに相談があり、パブリック・クラウド+Curlでのシステム構築の提案をした。これにより初期コストが抑えられ、コスト面の課題は解決される。さらに、クライアントにRIAであるCurlを用いることで、キーワードの紐付けや検索などの業務に対し、操作性の良いUIで効率を上げることが可能だ。
この提案は非常に好評だったのだが、データの蓄積場所が明確では無く、しかも国内ではないかもしれないパブリック・クラウドの利用は会社のコンプライアンス上認められないという。今にして思えばパブリックとプライベートを役割分担させ、併用すれば現実的な提案ができたかもしれない。しかし気づくのが遅く、案件を取ることができなかった。
次の事例は、初めてパブリック・クラウドを使ったシステムを構築したときに直面した問題だ。マーケティング業務を行っている会社から、データの一元管理と分析したグラフ描画でCurlを使ったシステムの構築の見積依頼が来た。データは一般公開されており、保存場所や保存型式は問わないという条件だ。そこでパブリック・クラウド+Curlのシステム提案をして無事受注した。
そしてシステムが稼働してから約10日後、「システムのパフォーマンスが悪いときがある」と連絡があり調査したところ、クラウドの負荷率(CPU使用率)やネットワークの使用状況等ではなく、クラウド内に問題がある様だ。それではサービス事業者に改善を求めるしかない。ここで得られた教訓は「パブリック・クラウドのレイテンシについては、キャッシュサービスを使って改善する」「サーバーのパフォーマンスが悪化しても操作性が悪くならないような仕掛けを持たせる」の2つだ。
3番目の事例は、クライアント/サーバーで構成されたシステムをクラウド+Curlに移行した際の失敗だ。改善の相談があったのは営業管理システムで、求められているのは、クライアントの操作性改善と、CPUパワーの無駄なく運用ができるシステムだ。ここでもデータの保存場所も保存方法も問わないということで、パブリック・クラウド+Curlへのシステム移行を提案した。
そしてテスト運用を経て本番稼働してから3ヶ月後「想定よりもデータ転送量が多い」という問い合わせを受けた。そこで調べたところ、Curlアプリケーションの操作の良さから業務効率が上がり、想定より多くの機能を使用するようになっていたことが分かった。それは悪いことではないが、その裏で変更のないデータでもサーバーから取得するような処理も見つかった。これはCurlのサーバーとクライアント間の通信をバイナリ型式で行う機能を使えば、改善が期待できる。
以上のようにパブリック・クラウドを活用した開発には、従来の手法による開発では考慮する必要がなかった要素が含まれている。最後に島村氏は「開発者は様々な事例を参考にしてほしい」と語り、セッションを閉じた。