半導体、ウォークマン、ゲーム機、携帯電話、デジカメなど、日本の技術力は世界をリードする製品を数多く生み出してきました。「技術立国日本」の力の源泉は、こうした成果を生んだ技術者の独創性にあったといえるでしょう。 しかし、いま「日本の技術」にかげりが見えているように思えるのはなぜでしょう。
それは、コンピュータソフトウエアの分野において、その80%を輸入に依存し、基盤技術のほとんどが米国に占有されている現状が大きく影響しています。その一方で、インド、中国、アジア諸国の開発力との競争にもさらされてきる現実があります。また、ある民間会社の調査によると、日本のソフトウェア技術者が新卒入社以後、研修など勉強する場を与えられているのは、30%以下という状況だといわれています。厳しい経営環境の中で、企業が教育や研修の機会を維持していくのも、非常に困難な状況となっているようです。
こうした状況の中で、ソフトウェア開発者自身が相互に知識やスキルを伝達しあう「コミュニティ」が、インターネットの普及とともにますます盛んになってきていることに私たちは注目しました。さまざまな開発現場の疑問が、会社の壁を超えた交流によって解決され、広がり浸透していく……こうした「学びの場としてのコミュニティ」にこそ、現在の技術の閉塞を突破する可能性があると考え、技術者コミュニティを中心軸に据えたイベントとして、2003年2月に最初の「デベロッパーズサミット」を開催しました。
コミュニティのリーダーたちが、さまざまな開発ジャンルの課題に応えるセッションを企画し、ソフトウェア開発者(デベロッパー)たちが参加し、それぞれの問題解決のヒントや情報を得ること。コミュニティでの議論を活発化し、領域を超えた交流の場を提供すること。こうしたビジョンを引き継いで、「Developers Summit (通称:デブサミ)」を開催していきます。
ソフトウェア技術者が、そしてソフトウェア業界が、活力と独創力を獲得するために、ささやかな契機になればいいと考えて努力するつもりです。デブサミで、デベロッパーの皆さんの疑問や不安や提案をぜひぶつけてください。その中から、次の世代に残せる何かが生まれてくると、我々は、信じています。
■デベロッパーの定義 『プログラマーの復権』(エドワード・ヨードン著・松原友夫訳・新紀元社刊)で、ヨードン氏は、プログラマを以下に定義づけました。
「ソフトウェアにかかわる人々」または「情報技術の専門家」といった言葉が適切なのだろうが、それはあまりスマートではない。ここでの私のコメントは、ソフトウェア技術者、データベース技術者、データ通信専門家、品質保証およびテスティングの専門家、ソフトウェアのプロジェクト管理者、システム分析者、情報システム担当役員、及び、コンピューター産業におけるソフトウェアまたはシステム関連の仕事にかかわる全ての人々を対象にしている。
私たちもそれにならい、「デベロッパー」や「プログラマ」を、若いソフトウェア技術者だけを指す言葉ではなく、インフォメーションテクノロジー技術者全般を意味する言葉として定義づけたいと思います。そして、デブサミとは、幅広いIT技術者が自らかかわる、IT技術者のためのイベントにしていきたいと考えます。
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