10年前には存在しなかったアプリ経済
以上が今回発表された新機能だが、Infragisticsのようなツールが求められる背景には「アプリ経済」の台頭がある。記者発表で最初に登壇したInfragistics Senior Vice President of Developers Toolsのジェイソン・ペレス氏はいう。
ペレス氏は「10年前はほとんどゼロだったアプリ市場は、2016年には1300億ドルまで成長している。2020年には2000億ドルに達すると見込まれている」と急激なアプリ市場の拡大を述べる。現在世界中で40億台以上のスマートフォンが利用され、アプリ市場をリードしているのはモバイルでありデジタルネイティブな人たちだ。
このような背景から、ペレス氏は次のようにアプリ経済にとって重要なものは何かを語った。
「デジタルネイティブは、2000年以降に成人するミレニアル世代より後の世代であり、これがエンタープライズ分野にも変革をもたらしている。現在、多くのビジネスマンが個人のスマートフォンを仕事で使い、業務システムにもアプリと同様な機能、UI、利便性を求めている。そして、IoT、ビッグデータによるデジタル変革に企業が対応していくのに重要なのはアジャイルとUX(ユーザーエクスペリエンス)である」
モバイル・クラウドシフトを進めるマイクロソフト
ITのコンシューマライゼーション、デジタル変革、アプリ経済の台頭によるビジネス環境の変化を受け、マイクロソフトは、新しいデベロッパー市場をどのように考えているのか。また、ソフトウェアデベロッパーはどのように考えていけばいいのか。
この点について、マイクロソフト 執行役員・デベロッパーエバンジェリズム統括本部長 伊藤かつら氏が講演を行った。
モバイルファースト、クラウドファーストの時代に重要なのは「役に立つクラウドである」と伊藤氏はいう。この考えのもと、マイクロソフトではサティア・ナディアCEO体制以降、Windowsにこだわることなくモバイルシフト、クラウドシフトを進めている。
モバイルとクラウドの世界を加速させるためのドライバーとなる技術には、ボットエージェント、自然言語インターフェース、複合現実(AR/VR)、人工知能、分析とワークフロー、IoTがあるとマイクロソフトは考えているとした。
インテリジェントエッジとインテリジェントクラウドの世界が広がる
続いて伊藤氏は、モバイルファースト、クラウドファーストを実現するには、インターネットの世界を「インテリジェントエッジ」と「インテリジェントクラウド」に分けて考える必要があるとする。
「インテリジェントエッジは、Windows PCのみならずAndroidやiOSデバイスを搭載したスマートフォンやタブレット、IoT機器も含まれる。カメラやセンサーなども含まれるだろう。これらが社会とのインターフェース(境界)部分で人や他のデバイスとつながることで、多様な分野のデジタル変革を実現している。そしてインテリジェントエッジは、インテリジェントクラウドにつながって、ユーザーに役立つサービスを提供している。インテリジェントクラウドは、複数のクラウドとも連携しており、相互作用もする」
これが、現在開発者が認識すべきインターネットおよびビジネスの枠組みだと言う。さらに、この視点で重要なポイントを次のように説明した。
「開発者は常にマルチデバイス対応を考えなければならない。1つのプラットフォームで完結せず、いかに効率よく複数のデバイスに対応できるか。次にAI活用。クラウド上のデータをどう使うか、生産性をどう上げるか、新しいアイデアが眠っていないかを考える上でAIは欠かせない存在となっている。そして、提供されるサービスやシステムは、エッジ、クラウドを問わずシームレスでなければならない。特定のサーバーに依存せず、コンテナ化されエッジで動くような場合も想定する必要がある。パッケージはどのサーバーだろうと、どんなエッジデバイスだろうとデプロイされるからだ。これがサーバーレスの考え方」
インテリジェントエッジとインテリジェントクラウドの世界では、マルチデバイス、AI、サーバーレスの3つのアプローチが基本ということだ。開発ツールやプロセスも、この変化に対応する必要がある。