データ駆動戦略を取り入れない意思決定では「一発屋」に成り下がる
自社のプロダクトをいかにして成長させるか。そのための手段には正解がないからこそ、我々はユーザーレビューやSNS評価などを斜め読みしながら、いわば直感的な仮説をもとに意思決定をしてしまいがちだ。しかし、そういった基準の曖昧な施策は、量・質の両面で問題を持っていると、DMM.comのプロダクトオーナーである石垣雅人氏は指摘する。
「直感に頼る仮説はその軸がないからこそ量産されやすく、バックログが肥大化して開発者を圧迫しがちです。その結果、優先度の高い施策を実行する機会の減少にもつながってしまいます。加えて、直感による仮説でリリースした施策がヒットしなかった場合、その原因も学習できず、次の仮説にもつながりません。その結果、偶然ヒットしたとしても、その分析が正しくできないため、“一発屋”で終わってしまいがちです」
データ駆動戦略を取り入れることで、それらの課題を解決し、不確実性に強い組織になるという。データを活用すると、プロダクトの状態は可視化される。そしてそこから出てきた仮説をもとにした施策で売上に貢献できるようになるため、闇に石を投げるような偶然のヒットを狙うような局面はなくなる。また組織運営としても、データをもとにすれば意思決定を最速化でき、さらにその根拠づけを定量的な情報から共有が可能となるため、関係者が納得のいく状態で開発を進めることができる。その上、プロダクトのリリース後も、その数値をもとに次の戦略につなげていけるようになり、その成長を加速できる。石垣氏はそのようにデータ駆動戦略の価値を伝えた上で、DMM.comがどのように実践しているのか、その全容を語った。
自己組織化されたチームで、データアナリストとプロダクトオーナーの対話を促進
最初に挙げられたのは、データ駆動戦略に会社全体として取り組むために実施された組織改革だ。DMM.comは、もともと横軸に営業部門があって、その下にディレクションがぶら下がり、さらに下にエンジニアがいるという、一般的なセクショナリズムを持った構造だった。データ駆動戦略を取り入れるために、まずそこにメスを入れることとした。具体的には、アカウントやSREなど、プロダクトが共通的に関わるドメインの単位で、自己組織化したスクラムチーム体制に切り替えたという。これにより、横断的な役割を持つデータアナリストと各プロダクトオーナーが、データ分析結果をもとに直接会話する構造となる。その結果、データ駆動で仮説立案の意思決定を行えるようになり、活動がスピーディーに進められるようになったという。