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注目スタートアップから学ぶ、ビジネスの課題を解決するAWSの活用術

スタートアップによくある課題とおすすめAWSサービスは? AWS SA直伝の技術トレンド

注目スタートアップから学ぶ、ビジネスの課題を解決するAWSの活用術 第1回

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 みなさん、こんにちは。アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社のスタートアップソリューションアーキテクト、塚田朗弘(@akitsukada)です。普段はもっぱらスタートアップのお客さまを技術面から支援しています。AWSサービスは、Amazon PinpointやAWS Chaliceが好きです。このシリーズでは、多様なAWSサービスの中から、急成長中のスタートアップ企業がAWSをどう使っているのか、どういったビジネス課題を解決しているのかをひも解き、実際にスタートアップ企業の中でエンジニアリングをリードしている担当者の方がAWS活用術をご紹介します。第1回は、私からスタートアップにおける技術課題やトレンドの変化についてお届けします。

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スタートアップが注目すべきAWSのポイント

 まず、簡単にAWSが提供するクラウドサービスの特徴をおさらいしてみましょう。基本的なところで、以下の点が挙げられます。

  • Self service(セルフサービス):さまざまなサービスをいつどう使うかはお客さま自身で決められる。事前にサービスの利用を申し込んでAWSによる承認を待つ必要はない(各種上限緩和、侵入テスト、ベータサービスの利用などには申請が必要)。
  • Pay-as-you-go(従量課金制):起動時間数、リクエスト数、データ容量など、使った分の最小限の料金を支払うだけなので、コスト効率が高い。
  • Scalability, Flexibility, Agility(拡張性、柔軟性、俊敏性):追加リソースが必要になったら増やし、不要になったら減らすことが素早くできる。複雑な要件もさまざまなサービスを組み合わせて実現できる。
  • Undifferentiated Heavy Liftingの排除(他との差別化につながらない重労働の排除):例えば、サーバーまたはミドルウェアの運用といった、「事業の価値や差別化には直結しないがやらなければならない仕事」をAWSにオフロードすることができる。
  • Security(高度なセキュリティ)責任共有モデルに基づき、AWSの責任範囲はAWSに任せながら、お客さまの環境はお客さま自身で自由に管理、統制できる。AWSはそのために必要なサービスや支援を提供する。

 これらがスタートアップのビジネスにおいてどうメリットになるのか、改めて考えてみましょう。その前提として、スタートアップにおいては常にスピードが非常に重要であることを挙げておきます。

スタートアップのビジネスフェーズごとの課題
スタートアップのビジネスフェーズごとの課題

 例えば、MVP(Minimum Viable Product - 評価可能な実用最小限の製品)に取り組んでいるシードフェーズにあるスタートアップ企業は、Pay-as-you-goでコストを抑えながらも素早くトライアンドエラーを重ねる必要があります。そんなとき、Self serviceで、ほしいときにほしいバックエンドリソースを素早く得られるのはメリットになります。

 また、Undifferentiated Heavy Liftingを排除して構築・運用工数を削減することで、ビジネス価値に直結する開発タスクに集中できます。Pivot(事業の方向転換)をする場合に不要になった過去のリソースをすぐにシャットダウンすることもクラウドなら簡単です。

 グロースフェーズに入り、いよいよサービスを拡張していく段階のスタートアップでは、スピードに加えサービスを安定して支えられるScalabilityがより高く求められます。そんなとき、負荷に応じて自動的にリソースを増減させられるAWS Auto Scalingやシームレスにスケールしてくれるサーバーレスのサービス、あるいは業界をリードするオブジェクトストレージAmazon S3をはじめ各種サービスは強い味方になるでしょう。

 事業が大きくなるにつれて、事業やユーザーを守るためにSecurityを高める必要が出てきます(初期のフェーズにももちろんSecurityは必要ですが、要求がより高度になっていくという意味です)。その場合、スタートアップはAWS IAMなどの豊富なセキュリティサービスを使って要件を満たすことができると同時に、金融業界などでも採用実績の豊富なAWSを利用していることで、提携先のエンタープライズ企業から歓迎されることもあります。

 上記以外にも、スタートアップ企業が注目すべきAWSクラウドのメリットは、多々あります。

 例えば、Flexibility、柔軟性です。サービスが成長していくにつれて、組織やシステムが複雑になり増える要件に対して、AWSの165以上のサービスから各社の個性的な要件に合うものを必要に応じて選択し、組み合わせて実現することができます。AWSは、この考え方を「ビルディングブロック」と呼んでいます。

 さらに、豊富な人材や情報量の多さも大きなメリットです。ありがたいことに、今日の日本でAWSは数十万以上のお客さまにご利用いただいており、JAWS-UGなどのユーザーコミュニティ活動も活発です。つまりAWSに慣れ親しんだエンジニアが多いということになります。実際に、エンジニアの採用面における効果を考慮してAWSを選択しているスタートアップもいらっしゃいます。また、公式ドキュメントのみならず、書籍やオンラインの技術情報も豊富です。こういった点は、少ない人数で開発するスタートアップのエンジニアにとって助けになる場面が多いはずです。

スタートアップ業界で見られるAWS技術トレンド(1)

 私たちアマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社のスタートアップソリューションアーキテクトは、多くのスタートアップのエンジニアの方から相談を受け、AWSおよび周辺技術の最新情報を踏まえてアーキテクチャ設計や運用のディスカッションや提案を行っています。

 年に1000件以上の技術支援を行っていると、スタートアップのみなさんの間で共通する技術動向、注目されているAWSサービスなどが見えてきます。では、最近どういったご相談を多く受けているか、いくつかのトピックに分けてその傾向を見てみましょう。

コンテナ技術

 最近とても注目を浴びているだけでなく、各社が取り組み始めていて、導入、設計、運用に関する相談が多いのがコンテナ、具体的にはDockerに関することです。

 「これまでAmazon EC2で運用してきたシステムをこれからDocker化したい」「開発環境ではDockerを使っているが本番環境に導入するにあたり相談したい」「Amazon ECS、Amazon EKSについて違いを知りたい」といったご相談をいただくこともあれば、「すでにDockerを本番運用しているが、○○するにはどうすればよいか」などの具体的な質問もあります。○○は、例えばBlue/Greenデプロイであったり、スケールイン時のドレイニングであったりとさまざまです。

 普段ご相談を受ける中で私が思うことは、「Dockerまたは関連するツールを導入すること自体を目的として考えるべきでない」という点です。詳しくは、私の信頼すべきスタートアップソリューションアーキテクトチームの1人である松田和樹(@mats16k)が最近AWS Startup ブログにまとめているので、ぜひご一読いただけるとうれしいです。

サーバーレス

 Dockerだけでなく、より抽象化されたサーバーレスなテクノロジーに関するご相談も日に日に増えています。既存のシステムのサーバーレス化に関するご相談や、作っていくうちに数が多くなって複雑化してきたAWS Lambda関数の管理、Amazon API Gatewayの認可機能、Amazon DynamoDBのテーブル設計、AWS AppSyncを使うにあたってのGraphQL APIの考え方などさまざまな相談がスタートアップ企業の方々から寄せられています。

 サーバーレスコンピューティングは、開発者リソースをインフラの保守運用といった業務タスクから、よりアプリケーションレイヤーに集中できることや、コスト効率が高いこと、さらにスケーラビリティを確保できる点で、スタートアップのビジネスに適した面を多く持つ技術であると言えます。

 一例ですが、スタートアップの方がサクッとサーバーレスなRESTful Web APIを作るならAWS Chalice、フロント・モバイルアプリエンジニアの方が簡単にスケーラブルなアプリケーションを作るならAWS Amplifyといった選択肢があります。これらは手早くサーバーレスアプリケーションを構築でき、かつ拡張も簡単です。実際それらを使ってサービスを展開しているスタートアップ企業も増えています。

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この記事の著者

塚田 朗弘(アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社)(ツカダ アキヒロ)

 アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 ソリューションアーキテクト。 2011年から生放送系ウェブサービスの開発を経験した後、2013年よりスタートアップ企業にJoin。CTOとしてモバイルアプリ、サーバサイド、AWS上のインフラ管理を担当しつつ、採用やチームマネジメントを行う。2015年8...

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https://codezine.jp/article/detail/11751 2019/10/21 11:00

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