要件が固まらないのに、なぜ迅速な機能改定ができるのか
「新しい業務にすぐさま対応してほしい……」というリクエストを受けたことがあるエンジニアは決して少なくはないだろう。そんな時に、業務要件が固まっていなかったり、長く使っている業務システムをツギハギで改修し続けてしまったり、なかなか悩ましい問題が生じてくる。
Works Human Intelligence(以下、WHI)が提供する統合人事システム「COMPANY」も同様に、法定業務に関する、社会保険共済や年末調整税計算、人事院勧告などの法改正に迅速な対応が求められる。法改正対応に追加費用がかかるパッケージが多い中、「無償バージョンアップ」を掲げており、法改正後すぐに業務を実現できることを重視している。平田氏は「この姿勢に対して、ユーザーの71.6%が『法改正対応に対する安心感がある』と高く評価している」と胸を張る。
しかも、COMPANYは法改正施行日に対応した業務が実施できるようになっている。通常のシステムならば、法改正は「施行日直前になるまで業務要件が固まらない」という問題があり、対応にブランクが生じることが多い。通常ならば、要件が固まって初めて、改定のための開発・構築を実施するものだからだ。
なぜCOMPANYは、それほどまでに迅速な法改正対応が実現できるのか。平田氏が取り組んだ「公務員共済の短時間労働者への適用拡大」への対応事例を紹介しながら、その対応の秘密について紹介した。
制度変更では、2022年10月以後に、これまで社会保険に加入していた非常勤公務員も「共済短期組合員」として加入できるようになった。しかし、これに対応するための情報取得には、さまざまな問題があった。
まず、共済について「非常勤者も短期加入が可能」という情報は流れたが、制度変更のない厚生年金については情報がなかった。また、「短時間労働者のルールを拡大適用する」という情報はあっても、その詳細は未定となっていた。さらに短期・長期のうち、どのカテゴリを決定するかの情報を保持する項目を、新しいデータ連携に追加する必要があったが、そのカテゴリ決定パターンは提示されていなかった。いわば断片的な情報ばかりであった。
業務担当者からは「法改正後の制度要件に対応できるか」と言われるものの、開発側では断片的な情報だけではシステムは作れない。しかし、COMPANYでは次のような工夫で迅速な対応を実現させた。