初音ミクの場合
ついでクリプトン・フューチャー・メディア株式会社メディアファージ事業部・佐々木渉氏が登壇した。
佐々木氏はニコニコ動画について「初めて見たのは初音ミクの音声データを録音し終わった後。以前、弊社が販売したVOCALOIDのMEIKOを使った動画がアップされていると聞いて見に行った」と述べた。そのときは、同じようにして初音ミクを使った動画がアップされれば、と思ったそうだが「まさかこんなになるとは思わなかった」という。
そのヒットの要因として「当然、さまざまな理由があると思うが、その1つとして『歌が中心になったこと』があると思う。個人的に最近の音楽は、ドラマがあって主題歌がある、というように何かのおまけのような位置づけになることが多い気がする」と述べ、「しかし初音ミクは最初に歌や歌詞がある。これが多くの人にストーリーをイメージさせ、動画や絵などへと広がっていくのではないか」と分析した。
ただ、歌が中心になれた理由としては「うまく回転の中心になれたと思う。今でも信じられない」と答えていた。
一方、自社製品であるVOCALOIDについて、「初音ミクで言えばネギ、鏡音リン・レンであればロードローラーというように、勝手に色づけされていくことについて口出ししたくなることはないのか」という問いには、「特にないですね。こうなったんだなあ、という感じです」とあっさり。「みんなが盛り上がっているところに口出しするのはナンセンスだと考えている。作為的な何かが働いてできたものであれば話は別だが、多くの人が楽しみながらできたものについては、手を出す気はまったくない」という。
一連のムーブメントの渦中にいた立場として、「夏頃から社長と『すごいねぇ』と言いながら見守っていたが、そのうちユーザーの熱気にこちらも巻き込まれていった気がする。最終的にはこの盛り上がりの手伝いができないかと考えるようになった」と述べた。
しかし「非常に忙しい時期だったにもかかわらず、社長が『ピアプロ(画像・音楽共有サイト)を作る!』と言ったときは、思わず『なぜ!?』と聞いてしまった」と笑う。その理由を社長にたずねたところ、「みんなが作ったものを俺が見てみたいんだもん」と言い切ったという。
「社長はときどき、ユーザーさんが作られた音楽や動画、絵を非常に楽しそうに見ているときがある」と佐々木氏は明かす。そしてその姿を見ていると、「誰かが楽しいものをつくるとみんながついてくるし、それと同じくらいの集中力でこちらも応えていければ、良い物ができあがるとのではないだろうか」と、自らが参加者になる重要性を挙げていた。
第3世代ナレッジマネジメントとは
進行役の吉川氏は「2つの例を見ていると完成物ではなく、中間成果物を共有しているという大きな特徴がある。また、『褒める』『自分が見たい』『祭り』『熱気』といった、人が追っかけたくなる要素を持っている。こういった点が次世代のナレッジマネジメントや、企業内情報共有のヒントになるのではないか」とまとめた。
最後に吉川氏は「このセッションは大げさなタイトルがついていますが、実は単に私がこのお二人にお会いしてお話したかっただけなんです」と言うと、会場は大きな笑いに包まれていた。
【関連リンク】
・当日のプレゼン資料
・ナレッジ!?情報共有・・・永遠の課題への挑戦 > 大規模法人での動画サービスのフィルタリング率は6~7割くらいかな : ITmedia オルタナティブ・ブログ(吉川氏のブログ)
・ニコニコ動画(RC2)
・PIAPRO(ピアプロ)|CGM型コンテンツ投稿サイト
・クリプトン | VOCALOID2特集