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開発者コミュニティを育てるには? 中国企業のオープンソース戦略 ~ DevRelCon 北京 レポート

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2017/06/27 14:00

 この記事では、先日北京で開催されたDevRelCon Beijing 2017(以下DevRelCon Beijing)についてお伝えしていきます。オープンソースコミュニティ、開発者向けのマーケティング、エヴァンジェリズムといったキーワードに興味のある方には是非ご一読いただきたいです。

目次

 近年テック業界の中で注目を浴び始めているDevRel(デブレル)という言葉をご存知でしょうか? DevRelとはDevereloper Relationsの略称で、開発者向けの広報・マーケティング活動のことをいいます。最近よく聞かれるようになったエヴァンジェリストという職種も、実はこのDevRelという枠組みで捉えることができます。ドキュメントを整える、ハッカソンやハンズオンをおこなう、コミュニティを醸成する、新製品のデモを作ってコードを公開する等、開発者目線で製品やサービスを広めるための多岐にわたる活動がDevRelです。そんなDevRelのプロ達が世界中から集まるグローバルカンファレンスがDevRelConです。

DevRelCon Beijing

 5月6日、アジアでの開催が初となるDevRelCon Beijingが北京市内で開催されました。参加者は約100名ですが、ライブビューイングの人数も含めると200名にのぼります。

DevRelCon Beijing 2017 ホストのDevEco CEO Jack Jin氏
DevRelCon Beijing 2017 ホストのDevEco CEO Jack Jin氏

 「技術が発展し、開発のスピードがどんなに早くなっても、人間同士のコミュニケーションはどうしても必要だ」そう語ってくれたのは、今回のカンファレンスのホスト、DevEcoのCEOであるJack氏。DevEcoは2016年に創立されたばかりのシードラウンドのスタートアップです。「Anyone can code」をビジョンに掲げ、GitHub上で27万以上のスターを獲得しているプログラミング教育に関するオープンソースプロジェクト「FreeCodeCamp」の中国版を牽引し、誰もがコードを書ける未来のために尽力しています。

 DevRelConは2015年にロンドンから始まったカンファレンスですが、昨年はロンドン、サンフランシスコ、そして本年は北京、東京(7月29日開催)も仲間入りを果たし、拡がりをみせています。今回の北京開催では、中国Eコマースの最大手Alibaba、Microsoft Chinaなどの中華圏大手企業から、GitHubやオープンソースコミュニティの代表者など、バラエティに富んだエバンジェリストたちが登壇しました。ここからはいくつかのセッション内容をまとめて紹介します。

Developer Relatinosの基本的戦略の立て方 Matthew Revell@Hoopy

 DevRelConの発起人であるMatthewのキーノート。DevRelの基本的な戦略について語ってくれました。

DevRelとはなんなのか

 DevRelを一言でいうとどう説明できるでしょうか? DevRelとは「ソフトウェア開発者を対象とした特殊なマーケティングの形式」といえます。開発者に製品を販売する場合、開発者に従来のマーケティングのトリック(ストーリー、感情、気持ちなど)は効きません。開発者の文化と要件に合わせてマーケティングの手法を調整する必要があります。KickboxのDevRel責任者のBrandon Westは、DevRelを コード、コミュニティ、コンテンツにまつわるものだと位置づけました。マーケティングは人々にストーリーを語ることが多いですが、開発者が気にしているのは製品そのものです。

A handshake is worth more than a click

 DevRelを理解する上で重要となるキーワードとして印象的だったのがこのフレーズ。

 開発者に製品を売るということ、そして開発者がその製品を使うということは、開発者に「自身のキャリアをその製品の上に構築してください」とお願いしているようなものです。そのためには開発者との信頼関係が非常に重要です。誰かとの関係を作る象徴たる握手は、ニュースレターの購読やサインアップをしてもらうといったオンライン上の行動よりもよっぽど価値があるということです。
DevRelConの発起人 Matthew Revell氏
DevRelConの発起人 Matthew Revell氏

DevRelの戦略の立て方

 次に、Hadoop上で動作するQuerioという架空のソフトウェアを例にして基礎的な戦略の立て方についてレクチャーがありました。

現状を把握する

 はじめに、自分たちの製品のスペック、競合はどんなサービスを打ち出しているのか、そして自分たちのターゲットになるユーザーはどこにいるのかを探る必要があります。使いやすいAPIの設計、ドキュメントの整備、ユーザーが製品を使い始めるまで一連の流れがスムースになっているかを確認しておきましょう。また他の開発者やベンダーとコミュニケーションを取れるコミュニティも必要です。コミュニティを持つことは、製品を自分ごとに思ってもらうのにも役立ちます。

自分たちのターゲットは誰なのか?

 ターゲットをしっかりと定めるということは、言い換えれば誰をターゲットにしないかを決めることでもあります。あなたの製品を本当に好きで使ってくれる開発者のコアグループに注力することが重要です。

ターゲットの見つけ方

 ではどうやってそのコアグループを見つければいいのでしょうか?ここではターゲットを見つけるためにセグメンテーションのエクササイズを行いました。以下の4つの視点から自分たちの製品を見直します。その際、それぞれのカテゴリにおいて以下のような疑問を考えます。

技術的な観点
  • 特定のプラットフォームを必要とするか
  • 開発フローにおいてどこで使われるか
開発者の視点
  • 学習コストはどれくらいかかるか
  • 使うのにどんなスキルを必要とするか
企業の視点
  • この製品を購入できるのはどんな組織か
  • 製品導入に対して決定権を持つのは誰か
市場の視点
  • 競合はどのような製品か
  • 業界のトレンドは追い風か、それとも向かい風か
  • より魅力的な地域はあるか

 これらの質問に答えることで、どんな開発者をターゲットにすればいいのかが見えてきます。

 ターゲティングがしっかりできれば、次にどんなアクションを取っていくべきか考えることができます。今回の例では、前述の疑問をもとに「比較的大きめの企業で働いているビッグデータ部門にいて、既存のSQLクエリツールで苦労しているエンジニア」にターゲットを絞りました。また「競合はデファクトになっているツールだが、技術的にはこちらの製品の方が優れている」という設定をもとに「ターゲットに即したコンテンツを用意する」「コストのかからない具体性をもったイベントの実施」「サードパーティからの信頼を得る」「コミュニティの醸成」といった施策を打ち出しました。踏み込んだ技術というよりも実践的なマーケティングに近い内容で、DevRelについて初めて知る人にとっての入門編と言えるセッションでした。


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著者プロフィール

  • Kayoko(株式会社MOONGIFT)(カヨコ)

     Twitter: https://twitter.com/kayoko_coco  小学生の時からwindowsのメモ帳でWEBサイトを作って遊んでいたインターネットっ子。2014年にセブ島で英語とプログラミングの研修を受けてアパレルの販売員からWEBフロントエンジニアに大胆キャリアチェンジ。I...

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