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【デブサミ2021夏】セッションレポート(AD)

LINEとAzureで実現する「温泉MaaS」とは? 地域の課題をエンジニアの力で解決【デブサミ2021夏】

【B-2】地域課題解決のためエンジニアが集結!温泉MaaSを支えるMicrosoft AzureとLINEの技術

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LINE+AzureのMaaS事例、千曲市の「温泉MaaS」とは?

 LINEとAzureを組み合わせてどんなMaaSに取り組んでいるのか。その事例として清水氏が紹介したのが長野県千曲市で展開している温泉MaaSである。

 千曲市は長野市の南にある市で、地域全体をワークスペースにするという「ワーケーション」という地域活性化の施策に取り組んでいる。「例えば棚田をワークスペースにする棚田ワークや寺の本堂をワークスペースにする寺ワーク、観光列車をワークスペースにするトレインワーク、足湯温泉をワークスペースにする温泉ワークなど、仕事のシチュエーションや気分に応じてさまざまなワークスペースで仕事をしてもらえるよう整備している」と清水氏は説明する。

 同市のワーケーションには課題があった。まずはワークスペースが点在していること。次に公共交通で来る人も多いが、公共交通路線と離れていること。さらに全ての場所に駐車場は完備されていないこと。そして送迎も検討してはいたが、将来を通しての継続性に難があったことだ。

 この課題を解決するために千曲市ではMaaSに取り組むことにしたという。

 千曲市がMaaSに取り組む背景には、実は清水氏の存在があった。清水氏は昨年9月、千曲市のワーケーション体験会に参加した。その際に千曲市が移動手段に課題を抱えていることを知り、事務局の人にMaaSという概念を紹介したのである。

 すると千曲市も「面白いからやってみよう」という話になり、昨年11月に開催されたワーケーション体験会で、地域の移動課題を考えるアイデアソンを開催することになった。「このアイデアソンにはワーケーション体験会参加者だけでなく、地域の行政や交通機関、商工会、温泉旅館の経営者、千曲市民など30人が参加。ワーケーションに来た人、観光に来た人、千曲市に住んで仕事をしている人、生活をしている人で自動車がある人、ない人と、想定される5つのペルソナにわかれて検討しました」(清水氏)

 その中で出てきたのが、初めて行った地域で、タクシー配車を電話で依頼するのはハードルが高いという意見。そこで生まれたのが、「気軽にタクシー配車を依頼できる温泉MaaSだった」と清水氏。

 だが、MaaSの仕組みを作ったとしても、本当に来訪者に利用してもらえるのか、という課題があった。「いきなりいろんな機能を持ったアプリを作るのはリスクが高いので、簡単なアプリで試してみることにした」と清水氏は語る。

 そしてタクシー会社に温泉MaaSを受け入れてもらえるかという課題もあった。そこでタクシー会社にはアプリは配車受付のみで試してもらうことにしたという。「運転手とのやり取りは従来の無線で指示する方法を採用しました」(清水氏)

 また決済についても紙のチケットで支払うという方法を採用している。

 出来上がった仕組みは、ユーザーがLINE公式アカウントを友だち登録すると、LIFF(LINE Front-end Framework)アプリというLINEアプリ上で動くウェブアプリとしてタクシー配車予約画面が立ち上がる。そこで必要な情報を入力すると、タクシー会社に通知が行き、ユーザーに「迎えに行く」という連絡が届くというものだ。

温泉MaaSの仕組み
温泉MaaSの仕組み

 システム構成にはAzure Static Web Serviceという静的なWebの仕組みをホストする仕組みを採用。各種リクエストについては、サーバーレスのクラウドサービスAzure Functionsを使ってバックエンド側とやり取りする仕組みとなっている。「今回はSQLデータベースを使っているが、用途に応じて、NoSQLデータベースのCosmos DBを選択してもよいかもしれない」と清水氏は言う。

温泉MaaSのシステム構成
温泉MaaSのシステム構成

 観光地はコロナ禍の影響もあり、経済的に打撃を受けている。「ここにエンジニアが貢献できる領域がある」と清水氏は力強く語る。

 今回、千曲市では地域を活性化させるため、ワーケーションという施策を採用した。だがワーケーションによる関係人口の増加、平日需要の創造、観光需要の増加を誘うためには、持続可能性がなければならない。一過性のものにしないために、千曲市では温泉MaaSという取り組みを採用した。「温泉MaaSに関わっている人はワーケーションのリピーターになっており、地域のエンジニアと共に温泉MaaSを作っている。このような取り組みを通して、持続的な関係人口を増やしていけると思う」(清水氏)

 温泉MaaSはワーケーションイベントの実施ごとに発展中だという。「レンタサイクル管理、チャットボットの仕組みなど、要望のあったサービスを増やしていこうとしている」と清水氏。

 最後に清水氏はこう聴講者に呼びかけて講演を締めた。

 「ワーケーションで自分の技術を生かして地域貢献することを考えてみてはいかがでしょうか」(清水氏)

【オンデマンド ウェビナー】長野県千曲市のワーケーション x MaaSの取り組み

 本オンデマンド ウェビナーでは、「温泉MaaS」の取り組みを推進している長野県千曲市のふろしきや田村様に、取り組みの狙いや内容を現地の様子を交えてご紹介します。

【Microsoft Learn】Azure Static Web Appsについて学ぶ

 Microsoft Learnは、マイクロソフトの様々な製品やサービスを、短時間で効率よく学習できる e-Learningで、どなたでも無料でご利用いただけます。サンドボックス環境で実機演習するものや理解度を確認するクイズなどが含まれています。

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この記事の著者

中村 仁美(ナカムラ ヒトミ)

 大阪府出身。教育大学卒。大学時代は臨床心理学を専攻。大手化学メーカー、日経BP社、ITに特化したコンテンツサービス&プロモーション会社を経て、2002年、フリーランス編集&ライターとして独立。現在はIT、キャリアというテーマを中心に活動中。IT記者会所属。趣味は読書、ドライブ、城探訪(日本の城)。...

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