MicrosoftとAI Economy Instituteは9月、世界におけるAI利用の状況をまとめた「AI Diffusion Report」を公表した。
同調査はAI Economy InstituteおよびMicrosoft AI for Good Labが主導し、各国の政府統計機関、国際機関(World Bank, ITU, IEA等)およびマイクロソフトによる実利用データを集計・分析したもの。
まず、AI利用の拡大は過去の一般技術と比較しても極めて速く、36ヶ月以内で12億人を突破した一方、その拡大は全地域で均等に進んでいるわけではなく、インフラや経済状況、言語といった要素が大きく影響していることが明らかとなった。
グローバルノース(先進国)とグローバルサウス(途上国)との間では顕著な差が見られており、前者のAI利用率は約23%、後者は13%にとどまる。とくに、1人あたりGDPが2万ドルを下回る国ではその格差が拡大傾向にあった。UAEやシンガポールでは労働人口の半数以上(UAE 59.4%、シンガポール 58.6%)がAIを利用する一方、サブサハラ・アフリカやアジアの一部発展途上国では利用率が10%未満にとどまる。
次に、AI普及には大きく5つの基礎的なインフラ「電力」「データセンター」「インターネット」「デジタルスキル」「言語」が影響しているとされる。例えば、世界では7億5000万人以上がいまだ電力を利用できていないが、その85%がサブサハラ・アフリカだ。インターネット未接続人口も世界の約半分にのぼる。
さらに、言語も新たな障壁となっている。AIモデルは英語を中心とした高リソース言語で最適化されやすく、低リソース言語圏(例:マラウイ、ラオス)は、GDPやネット接続度が同等でも利用率が20%低い傾向が見られた。AIモデルの精度も英語で約80%、ヨルバ語など低リソース言語では55%未満にとどまる。
また、AI技術の開発は米国・中国が主導し、世界のデータセンター容量の86%をこの両国が占める。フロンティアとなるAIモデルは米国、中国、韓国、フランス、イギリス、カナダ、イスラエルの7カ国のみに集中しつつ、性能格差が縮小し、モデルの普及サイクルも短縮化している。
しかし、これらの国々が必ずしも利用率でトップというわけではない。シンガポールやUAEのように、インフラ投資・政策調整・デジタル教育の戦略的実施によって、フロンティア開発がなくても急速なAI普及が可能であることが同調査では示されている。
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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)
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