アドビシステムズ(以下、アドビ)は8日、報道関係者向けに次期Adobe Flash Platform開発ツールのベータ版に関する説明会を行った。米Adobe Systemsのシニアプラットフォームエバンジェリスト エンリケ・デュボス氏がデモを交えながら現時点での開発ツールの特徴を説明し、併せて既にベータ版を試用している、Flex User Groupに所属する開発者の声も紹介された。
「Adobe Flash Platform」は、アドビの開発技術全般を統合し、様々な動作環境において一貫したエクスペリエンス(体験)を提供するためのプラットフォーム。中でも、コーディング主体のプログラミング環境を提供するのが、Adobe Flex(フレックス)だ。
第4世代となる次のFlexでは、開発ツールが「Flash Builder」(旧Flex Builder)、「Flash Catalyst」(コードネームThermo)と、Flashへのブランディングを意識した名称に変更される。Flash Builderは、Eclipseをベースにした開発者向けの統合開発環境。一方、Flash Catalystはプロ向けのインタラクティブコンテンツ作成ツールとして今回から新しく追加された。主にデザイナーを対象としたツールで、PhotoshopやIllustratorといったデザインツールで作成した静的な画像をライブ化し、状態の変化や動きをもつ画面の構成部品(コンポーネント)に変換する。例えば、四角い画像をボタンやテキストボックスにしたり、複数の画像を組み合わせてスライドバーにしたりすることができる。
なお、オープンソースとして開発が進められているフレークワーク自体の名称は、依然「Flexフレームワーク」のままだ。
新しいFlex 4フレームワークで一番大きく変わるのは、開発のワークフローだ。Flash Catalystにより、デザイナーはノンコーディングで、ウェブサイトの静的なワイヤーフレームだけでなく、最終形に近い動きを持ったプロトタイプにまで作りこむことができる。モックアップによる要件定義が効率化され、開発後半における顧客からの画面設計の変更も起こりにくくなる他、開発者はロジックに専念できるようになり、生産性が大きく向上する。また、作成したコンポーネントは汎用化してライブラリとして保存し、再利用することも可能。技術的には、新しく採用されたXMLベースのファイルフォーマット「FXG」(Flash XML Graphics format)や、ビヘイビア(動き)とアピアランス(見掛け)を分離した新しいコンポーネントモデル「Sparkコンポーネントフレームワーク」によって実現されている。
開発者の視点では、統合開発環境の使い勝手が改善され、コーディングサポートの強化、パッケージエクスプローラ、条件分岐できるデバッガ、ネットワークのプロファイリングといった機能が追加された。バックエンドのサーバーやサービスと統合も簡単になり、BlazeDB、ColdFusion、LiveCycle DataServices、SOAP、RESTといった様々なデータ連携に対応している。Flash Professional CS 4で作成したコンポーネントとのスムーズな連携にも対応した。
実際に試用した開発者からは、「ユニットテストのFlexUnitを標準サポートしたのでテスト駆動開発がしやすくなった」(NECソフト株式会社 河合信敏氏)、「MXMLのステート構文が仕様変更され、記述が簡単になった」(taiga.jp 廣畑大雅氏)といった声が聞かれた。一方、「Javaの開発ツールの良い点をうまく取り込んできている分、未対応の点が気になる」(株式会社ニークシステムテクノロジー 舩倉純氏)、「アピアランスとビヘイビアの分離はとてもよいが、コンポーネントを作成する上で新しいアーキテクチャの仕組みに関する情報が少ない」(AKABANA 有川榮一氏)といった要望も出た。アドビでは、「現時点ではベータ段階であり、各ユーザーからの指摘については前向きなフィードバックと受け止め、引き続きツールの改善やドキュメントを続けていく」と述べている。
【関連リンク】
・Adobe Flash Platform Technologies
・Adobe Flash Builder 4 beta
・Adobe Flash Catalyst beta
・Adobe Flex 4 SDK beta