Adobe Flash Builder 4の概要
アドビシステムズは23日、統合開発環境の新版「Adobe Flash Builder 4」と「ColdFusion Builder」を発表した。同社のWebサイトから60日間試用可能な無料体験版をダウンロードできる。
Flash Builder 4は、Eclipseベースの統合開発環境。オープンソースのフレームワークである「Adobe Flex」を利用して、ブラウザプラグイン「Adobe Flash Player」とオフラインの実行環境「Adobe AIR」上で動作するアプリケーションを開発することができる。
Flash Builder 4は、従来Flex Builderと呼ばれていた製品だが、今回のバージョンから名称が変更された。これは、オープンソースで提供しているFlexフレームワークとの区別化と、Flex以外にもActionScriptのみでのアプリケーション開発にも対応していることの明確化を意図したものだという。
今回のバージョンでは、Flexフレームワークの新版「Adobe Flex 4」に対応したほか、下図の3つのテーマに主眼をおいて新機能の追加や既存機能の強化が行われている。
「生産性の向上」の点では、Flexアプリケーションとバックエンドの間でのデータ受け渡し状況を監視できる「ネットワークモニター」の搭載、テストユニットフレームワーク「Flex Unit 4」の統合など、デバッグやパフォーマンスチューニング、テストといったアプリケーション開発において多くの工数を割かれる工程での期間短縮をサポートする新機能が追加されている。また、変数やメソッド名のリファレンスがIDE内で表示される「ASDoc」が追加されたほか、コードアシストやリファクタリング機能の強化、Getter/Setterの自動追加など、コーディング支援機能も強化されている。
また、今回新たに「データ中心型開発」を支援する機能が搭載されている。これは、Java、PHP、Adobe ColdFusion、REST、SOAPサービスなど、外部のサーバーやWebサービスとユーザーインタフェースとのデータ連携をウィザード形式で簡単に設定できるもの。各種情報を入力することで、データベースやメソッドの自動検出、コードの自動生成などができる。詳細に関しては、「これさえ読めば分かる! Flash Builder 4インストールから使い方まで徹底解説」を参照してほしい。なお、自動生成されたコードはあくまで開発を効率化するためのものであり、セキュリティへの配慮は行われていないため、外部に公開する環境で実稼働させる際はカスタマイズが必要になる。
また、Flex 4フレームワークで新たに採用されたSparkコンポーネントモデルでは、ViewとLogicが分離された。これにより、開発者とデザイナーの協業が容易になる。さらに、現在パブリックベータ版として公開されている「Adobe Flash Catalyst」との連携機能が搭載されており、PhotoshopやIllustratorなどで作成されたデザインをFlash Catalystでユーザーインタフェースに変換し、生成されたプロジェクトファイル(FXPファイル)をFlash Builderにインポートして開発を行うといった、新しいワークフローが実現するという。
同時に発表されたColdFusionアプリケーション用の統合開発環境「ColdFusion Builder」では、CFML/HTML/CSS/SQLのコードアシスト機能、サーバー管理機能、FTP/SFTPサポート、Flash Builderとの統合などの機能が搭載されている。
HTML5にFlashが勝る3つの理由
今回のリリースに関して、「データを基にダッシュボードなど開発する企業内の開発者、RIAアプリケーションを簡単に開発したいと考えている個人の開発者どちらに対してもメリットのある製品だ」と自信を漏らすのはアドビシステムズ社シニアデベロッパーマーケティングマネージャーであるマイク・ポッター氏だ。同氏に、今までFlexに触れたことがない他言語開発者にとっての、Flash Builderを使った開発のメリットや今後のロードマップに関して伺ってみた。
現在、Flashディベロッパーは全世界で250~300万人に上る。同氏によると、JavaやPHPといった他言語での開発を行っていた開発者が、新たな技術習得にActionScriptやFlexを選択するパターンも多く、確実に増加していっているという。特に今回のFlash Builder 4は、前述のデータ開発型開発のサポートにより「PHPの開発者には最高のアプローチだ」と同氏も太鼓判を押す。
Flash Builder 4の登場によって、リッチな表現力を持つWebアプリケーション開発がより容易になっているという話ではあるが、一方で気になるのがWeb標準技術の存在だ。従来、Flashでしか実現できなかった表現が、HTML 5のvideoタグなどに代表されるように、徐々にWeb標準技術でも実現可能になりつつある。これは、学習コストの面から考えると、新たな言語選択時の懸念材料の1つと言えるだろう。しかし、これに対してもAdobe技術は十分な優位性があるとポッター氏は語る。
「HTML 5に対するAdobe技術の優位性は大きく分けて3つあります。1つ目は、革新を起こすスピードが早いこと。2つ目は、起こした革新を開発者に短時間で採用してもらえること。3つ目は、ブラウザとの一貫性を担保できることです。
HTML 5はブラウザ依存であり、各ブラウザのサポート待ちというのが現状です。また、あくまで仕様であるため、各ブラウザによって実装の仕方も様々になると思います。Internet Exploler 6が現役で利用されているという現状を鑑みても、まだ実用段階ではなく、今後の技術だと言えるでしょう。一方、AdobeはHTML 5でようやくできるようになることを、2002年から既に実現していました。Flash Playerは新バージョンのリリース後、90%以上がアップデートされ、OSを通して一貫性があります」
OSやブラウザだけでなく、Flash Playerは現在ベータ版として発表されているFlash Player 10.1からモバイルでも動作し、デバイスを超えたランタイムへと進化していく。多種多様なデバイスからWebにアクセスする昨今、1つの技術で様々なデバイスに対応したアプリケーションを開発できる点においても、Adobe技術での開発メリットは大きいだろうとも語る。
現状、残念ながらFlexフレームワークはモバイルには対応していないが、今後のロードマップとして、Flexベースのモバイル向けのフレームワークが構築される予定となっている(※注)。また、Flash Professional CS5に搭載されるiPhoneアプリケーションのエクスポート機能を、Flash Builderに搭載する計画もあるなど、モバイルアプリケーション開発の支援も今後注力していく予定だ。
Adobeの実験的な技術情報を提供するサイト「Adobe Labo」では、既に「Slider」というコードネームで情報が公開されている。
今後の進化の方向性として見逃せないのが、昨年アドビシステムズが買収したOmniture社技術との統合だ。同社は、アクセス解析ツールなど各種マーケティング支援ツールを提供している。Omnitureの技術とAdobeの技術を統合することで、アプリケーション内でのユーザーの利用状況を計測し、レポートとして確認できるような機能も現在検討しているという。
なお、今回発表された製品の各パッケージと価格は次のとおり。
Flash Builder 4 Standard Edition |
Flash Builder 4 Premium Edition |
ColdFusion Builder |
---|---|---|
31,500円 | 89,250円 | 35,700円 |
教育機関は無償提供 | ColdFusion Builderを同梱 | Flash Builder 4 Standard Editionを同梱・教育機関は無償提供 |