25日から開催が始まったマイクロソフトのテクノロジーカンファレンス「Microsoft Tech・Ed Japan 2010」。初日の基調講演では、今年から同社が全社レベルでの取り組みを表明しているクラウドコンピューティングについて、国内での活用事例や関連技術などがプレビューされた。
25日から開催が始まったマイクロソフトのテクノロジーカンファレンス「Microsoft Tech・Ed Japan 2010」。初日の基調講演では、今年から同社が全社レベルでの取り組みを表明しているクラウドコンピューティングについて、国内での活用事例や関連技術などがプレビューされた。
「現実解としてのクラウドを支える最新テクノロジー」と題した基調講演で、マイクロソフトの大場章弘氏は、Silverlightを活用した動画のライブ中継や、Windows Azureによる業務システムの事例などを紹介し、国内でクラウド利用が着々と進んでいることを示した。Windows Azureでホスティングされている日本のアプリケーションの数は本日5,000を超え、これは米国に次ぐ2番目の稼働数だという。導入企業の技術選定理由としては、コーポレートユースにコミットしていて実績もありビジネスに強いイメージ、使い慣れたユーザーインターフェース、といった声が多いようだ。
クラウドの提供形態については、これまで各社よりパブリッククラウド、プライベートクラウド、オンプレミスと組み合わせたハイブリッドといったものが提案されているが、顧客からのニーズはさらに多様化しており、マイクロソフト一社だけでは対応が難しいという見解を示した。7月に発表された「Windows Azure Platform Appliance」(Windows Azureにサードパーティがハードウェアやネットワーク基盤を組み合わせ提供する)に代表されるように、パートナー企業との連携を重視している点を強調。現在、日本では富士通との協業が発表されている。
このような多様なニーズへの対応がクラウド環境を提供する現実解として必要とし、クラウドの価値を高めていくためには、エンドユーザーおよび開発者視点の双方でシームレスにつながる環境の整備が必要と説明した。
2011年以降に予定されているクラウド関連技術のプレビューも一部紹介された。
1つはコードネーム「Dallas(ダラス)」で知られる情報のマーケットプレイス。有償データの課金プラットフォームとして注目されている。現在テクノロジープレビューが公開されており、NASAなどが情報を提供している。このデータを利用した日本の先行事例として、富士ソフト、東証コンピュータシステムによる「みんなの会社情報」が紹介された。
株価シミュレーションのデモでWindows Azureのアーキテクチャが低コストの大規模並列処理にも適していることや、Windows Phone 7アプリケーションがSilverlightベースになったことで、Visual StudioとExpression Brendとの組み合わせで簡単に開発できるようになった様子も示した。
次期Webブラウザ「Internet Explorer 9」については、GPUアクセラレーションによる描画パフォーマンスの向上や、ウェブ標準準拠(Asid3テストで現在95点)を示すデモを紹介。現在プラットフォームプレビュー4が提供されており、9月15日(日本では9月16日)にはベータ版が提供される予定だ。
また、ビジネスアプリケーション開発の新技術として「Visual Studio LightSwitch」を紹介。データを扱うリッチな業務アプリケーションをほぼノンコーディングですばやく開発できるテンプレートベースのフレームワークで、開発生産性の向上に貢献するための技術と説明している。実行時にアプリケーションの画面を変更できるようにもなっており、利用者が使いやすいように改良できるエンドユーザーコンピューティングの視点も盛り込まれている。
最後に大場氏は、クラウド時代に求められるIT技術者像について語った。技術が進化していく中で、例えば開発・運用環境の構築が簡単になるなど、基本的な部分は飛躍的に効率化が進み、コンピューティングリソースがコモディティ化していく。そこで期待されるのはインフラ運用、アプリケーション開発といった個別の領域だけでなく、さまざまな接続デバイスやユーザーエクスペリエンスなどを考慮した広い視野の提案であり、そのような設計が行えるよう一人一人の進化が必要となると述べた。マイクロソフトでは、Windows Azureコミュニティの立ち上げや、技術情報提供の強化、優れた人材と成果の発掘などにより、今後のIT技術者の変革を支援していきたいとしている。
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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)
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