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10年ぶりのWeb標準刷新となったHTML5
羽田野氏は、言わずと知れたHTML5のエキスパート。HTML5の詳細な解説本も執筆しており、日本におけるHTML5の第一人者として広く知られている。本セッションではそんな同氏から、HTML5の現状や今後の見通し、そしてWeb技術者にとってのHTML5の存在意義などについて解説が行われた。
「HTML5とは何か。一言で言えば、マークアップ言語にAPIの機能が加わったものだ。むしろ、マークアップ言語よりAPIの仕様の方が大きくて、『HTML5はほとんどAPIの塊』と言ってもいいほどだ」
セッションの冒頭で、羽田野氏はこう述べる。では、Webテクノロジーの面から見て、膨大なAPIをWeb標準として定義したHTML5の登場にはどのような意義があるのか。同氏によれば、そもそもWeb標準の世界は「この10年の間、まったく進化してこなかった」という。
振り返ってみれば、HTML4.01の勧告が出たのは1999年、XHTML1.0が出たのは2000年のことだ。それ以降の約10年間、Webの進化を担ってきたのはこうした標準技術ではなく、JavaScriptやFlash、Silverlightといったベンダー提供のプラグインの技術だった。これらプラグインが実現してきた、Webにおけるリッチなユーザー体験をWeb標準だけで実現しようと定められたのが、10年ぶりのWeb標準技術の刷新となるHTML5というわけだ。
また、アップル社がiPhone/iPad上でブラウザのプラグインをサポートしなかったこと、あるいは次期Windows OSでもプラグインがサポートされないと噂されることなどを見ても、プラットフォームベンダー側の方針も「脱プラグイン」「親HTML5」へと舵が切られつつあることが分かる。
「こうした動きは、『今後はプラグインによるWebの革新は起こらない』ということを意味している。そのため、モバイル端末向けの開発を中心に、Web制作の現場では早くもHTML5に取り組まざるを得なくなっているというのが実情だ」(羽田野氏)
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