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C#で始めるテスト駆動開発入門

TDDでデータベースと付き合う方法

C#で始めるテスト駆動開発入門(7)

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ダウンロード CsTdd07.zip (474.5 KB)

 業務アプリケーションの開発では、データベースと付き合わないわけにはいきません。しかし、テストファーストはやりにくいものです。今回は、データベースにアクセスするコードを、TDDでどうやって扱うのかをご紹介します。

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はじめに

 データベースを読み書きする部分のユニットテストがやりにくいのには、いくつか理由があります。

  1. 複数人でテストを同時に実行すると、競合する
  2. データベースを使ったテストは、時間が掛かる
  3. データベース内のデータが変わると、テストが失敗する

 1番目は、各自の開発環境にテスト用のデータベースを用意することで、解決できます。2番目の問題は、データベースにアクセスするコードをロジックから分離して、データベースに実際にアクセスするテストケースを減らすことで、改善できます(ロジックのテストにはモックやダミーを使います)。3番目は、テストのたびにデータベースの内容を初期化することが基本になりますが、そうするとテストに長い時間が掛かるようになってしまいます。

 今回は、ビジネスロジックの開発時にモックやダミーを使いやすくするにはどうするか、また、テスト時にデータベースの内容を安定させるにはどうしたらよいかを、考えてみます。

対象読者

  • TDDに興味をお持ちの.NET Frameworkの開発者。

必要な環境

 サンプルコードを試してみるには、C# 2010(Expressで可)またはVisual Studio 2012(Expressで可)、およびNUnit 2.6とSQL Server Compact 3.5が必要です。本稿執筆時点では、下記から入手できます。

開発環境の入手先

 今回はSQL Serverが必要です。無償のExpressCompact 4.0等で構いませんが、Northwindデータベースを使います。なお、サンプルコードではSQL Server Compact 3.5 SP2を使っていますので、接続文字列やクラス名などは適宜読み替えてください。

とりあえずコードを作ってみる

 それでは、Customersテーブルから複数件のデータを取得してくるコードを、とりあえず書いてみましょう。今回は、ADO.NETを使うことにします。

 製品のロジックの中に、こんなメソッドを作ります。

【製品コードの仕様】名前の先頭一致で顧客を抽出する
クラス名.メソッド名 顧客管理ロジック.前方一致で姓名を検索する()。
引数 string型。
返値 顧客情報クラスのコレクション型。Customersテーブルから、顧客のファーストネームまたはラストネームと引数を前方一致で比較して、一致したデータを返す。

 Nothwindデータベースが初期状態のままなら、次のようなユニットテストを書くことができます。

テストコード: とりあえず書いてみた
[TestFixture]
public class 顧客管理ロジックTest {

  [TestCase]  //製品コード:空のリストを返す。Customerクラスは宣言だけ。
  public void 前方一致で姓名を検索するTest_引数が空なら0件() {
    var head = "";

    IList<Customer> customers = 顧客管理ロジック.前方一致で姓名を検索する(head);

    Assert.AreEqual(0, customers.Count());
  }

  [TestCase]  //製品コード:CustomerクラスとSQL文(パラメーター未使用)を実装
  public void 前方一致で姓名を検索するTest_ファーストネームが一致() {
    var head = "Th";

    var customers = 顧客管理ロジック.前方一致で姓名を検索する(head);

    var first = customers[0];
    Assert.AreEqual("UK", first.Country);
    Assert.AreEqual("Around the Horn", first.CompanyName);
    Assert.AreEqual("AROUT", first.CustomerID);
    Assert.AreEqual("Thomas Hardy", first.ContactName);
  }

  [TestCase]  //製品コード:SQL文を完成させ、パラメタライズドクエリーに修正
  public void 前方一致で姓名を検索するTest_ラストネームが一致() {
    var head = "An";

    var customers = 顧客管理ロジック.前方一致で姓名を検索する(head);

    var first = customers[0];
    Assert.AreEqual("Germany", first.Country);
    Assert.AreEqual("Alfreds Futterkiste", first.CompanyName);
    Assert.AreEqual("ALFKI", first.CustomerID);
    Assert.AreEqual("Maria Anders", first.ContactName);
  }
}

 このテストを通すように、製品コードを書きます(実際は、テストケースを1つずつ進めていきます)。

製品コード: とりあえず実装してみた
public class Customer {
  public string Country { get; set; }
  public string CompanyName { get; set; }
  public string CustomerID { get; set; }
  public string ContactName { get; set; }
}

public class 顧客管理ロジック {

  public static IList<Customer> 前方一致で姓名を検索する(string head) {
    var list = new List<Customer>();

    if(string.IsNullOrWhiteSpace(head))
      return list;  //引数が空文字のときは、空のリストを返す。

    // DB アクセス
    using(SqlCeConnection conn = new SqlCeConnection(@"Data Source=C:\Program Files (x86)\Microsoft SQL Server Compact Edition\v3.5\Samples\Northwind.sdf")){
      conn.Open();
      var cmdText = 
@"SELECT  Country, [Company Name], [Customer ID], [Contact Name]
FROM      Customers
WHERE     ([Contact Name] LIKE @p1) OR ([Contact Name] LIKE @p2)";
      using (DbCommand cmd = new SqlCeCommand(cmdText, conn)) {
        {
          var p1 = cmd.CreateParameter();
          p1.ParameterName = "@p1";
          p1.DbType = System.Data.DbType.String;
          p1.Value = head + "%";  //ファーストネームとの前方一致
          cmd.Parameters.Add(p1);
        } //(変数p1のスコープをここで切っている)
        {
          var p2 = cmd.CreateParameter();
          p2.ParameterName = "@p2";
          p2.DbType = System.Data.DbType.String;
          p2.Value = "% " + head + "%";  //ラストネーム・ミドルネームとの前方一致
          cmd.Parameters.Add(p2);
        }
        using (DbDataReader reader = cmd.ExecuteReader()) {  //クエリー実行
          while (reader.Read()) {  //結果を一行ずつオブジェクトに詰め替え
            var customer = new Customer() {
              Country = reader.GetString(0),
              CompanyName = reader.GetString(1),
              CustomerID = reader.GetString(2),
              ContactName = reader.GetString(3),
            };
            list.Add(customer);
          }
        }
      }
    }
    return list;
  }
}

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この記事の著者

biac(ばいあっく)

HONDA R&Dで自動車の設計をやっていた機械屋さんが、技術の進化スピードに魅かれてプログラマーに。以来30年ほど、より良いコードをどうやったら作れるか、模索の人生。わんくま同盟の勉強会(名古屋)で、よく喋ってたりする。2014/10~2019/6 Microsoft MVP (Windows Devel...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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