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「Developers Summit 2013 Summer」レポート(AD)

【夏サミ2013】B4セッションレポート
クラウドファースト時代に国産業務PaaSを採用したSIerの体験談から学ぶこと

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 クラウドファーストの時代になり、SIerのシステム開発においても「作る、運用する」から「組み合わせる、使う」へと変化が起こり、ビジネスの変革が求められている。本セッションでは、国産業務PaaSであるSPIRAL(スパイラル)を例に、業務PaaSを使うと何ができるか、どう便利になるのか、何を学ばなければならないのかなどを、PaaSベンダー、実際に利用したSIerの体験談を通して考察された。

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登壇者一覧
名前 備考
吉田 雄哉 氏 株式会社 co-meeting 取締役 CTO
安立 雄亮 氏 株式会社 シグマクレスト
林 哲也 氏 株式会社 パイプドビッツ 取締役CTO

導入が容易で柔軟な仕様の業務系PaaSにより工数を3割削減

 本セッションでは最初にモデレータ役の吉田雄哉氏が登壇。まずテーマであるPaaS、クラウドの現状を理解するためのキーワードをいくつか紹介した。

株式会社co-meeting 取締役 CTO 吉田 雄哉氏
株式会社co-meeting 取締役 CTO 吉田雄哉氏

 1つ目はクラウドファースト。情報システムを構築する際に、パブリッククラウドを第1の選択肢とすることが普通になってきた。2つ目は市場。日本では、価格と品質を重視するEarly Majorityを越えて、一般的な認識のフェーズに入っており、ピークにさしかかっている。3つ目はメリット。クラウドのメリットが、何となく分かってきた。

 もちろん、クラウドを採用すれば、すべてがうまく行くわけではない。吉田氏は「クラウドの取り込みは、顧客にメリットがある場合に限るのが基本」と語る。従来型とクラウドの2つをどう使い、価値を提供するかが、問われている。

 本セッションでテーマとなっているのは“国産の業務系PaaS”だ。選択の理由として吉田氏は以下の3つを挙げた。

  • 国内の業務系を意識している。業務習慣や経理の法的問題などに精通している可能性が高い。
  • PaaSなのでインフラの部分は任せることができ、システム提供に集中できる。
  • パートナーシップに期待できる。

 ここで吉田氏と交代し、シグマクレストの安立雄亮氏が登壇。国産の業務系PaaS導入企業の立場から体験談を披露した。

株式会社シグマクレスト 安立 雄亮氏
株式会社シグマクレスト 安立 雄亮氏

 PaaS導入の背景には、同社が抱えていた「スキルのマイクロソフト製品への偏り」「顧客の情報化予算削減の影響が大きい」という経営課題があった。その解決のため、シグマクレストは開発体制の変革などの策を講じたが、中でもポイントになったのが「自社でやり続けるだけではなく、他社の製品を担ぐ」だった。そのとき出会ったのが、SPIRAL(スパイラル)だ。

 当時でも国内に業務系PaaSは複数存在した。安立氏らが採用の前提としたのは以下の3条件。

  • クラウド上で使えるDBであること。
  • 効率よくフロントの開発技術が活かせるプラットフォームであること。
  • シグマクレストが元々持っている技術が使えるプラットフォームであること。

 これらを満たした上でSPIRALを採用した決め手は以下の3つ。

  • 代理店費用が安い。
  • 開発環境が完全に提供されており、まず使ってみることができた。
  • 社内で使うにあたっても、問い合わせフォームが準備されており、そこに投げると数時間後に電話がかかってきて、すぐに対応してくれた。

 実際にSPIRALで開発した案件の一例として、数百人の個人事業主の青色申告を支援する企業のサービス提供システムがある。会員のログイン部分はSPIRALの標準機能を使って構築し、SPIRAL上にDBを持っている。ログインすると、各個人用のExcelフォーマットがダウンロードできるようになる。

 さらにExcelマクロを使い、個人事業主のマスターとのAPI連携や、入力情報のチェックを行う。データの登録自体は「ネットde青色申告」という別の会計クラウドに対して行うという仕組みだ。登録されたデータ自体は、個人事業主の支援サービスを行っている会社が見られる仕組みになっている。

SPIRALによる開発事例
SPIRALによる開発事例

 この開発で得られたメリットの第1は、スクラッチと比較して工数を3割削減できたことだ。ポイントは、標準で装備されている機能に関しては、テストが必要ないことにある。また定期実行処理が標準装備されているのも大きかった。

 一方、技術についてのメリットは柔軟な仕様にある。PHPでカスタムプログラムを書くことが可能であるため、標準の機能ではどうしても手が届かない部分についても作り込むことができた。

 工程については、慣れているウォーターフォール式を採用することにしたが、問題なく使うことができた。またWeb上で納品することができるので、SPIRAL上に配置したテーブル、フォーム、また各数のプログラムを1つのカプセルにしてパッケージ化し、それを別のアカウントにそのまま持っていくことができるのもメリットだ。

 APIについては、JSON形式を採用しているので、非常になじみやすい。トークン、トークンシークレットの認証と、オープンAPIでセキュリティupできるところがメリットといえる。

 安立氏は、SPIRALの使いづらかった部分、苦労した点についても紹介した。まず、最大の苦労原因は、サンプルがなかったことだ。例えばExcelマクロからAPIを呼び出す仕組みでは当初、全然繋がらなかった。カスタムプログラムについてもサンプルがなく、試行錯誤せざるを得なかった。また、ExcelとSPIRALで行うhttp通信のレスポンスが悪かったのだが、ここはチューニングで解決した。さらに納品時のパッケージ化できるのがメリットではあるが、一部、SPIRAL上のカスタムモジュールについてはパッケージ化できず、別途納品したという経緯がある。

 一部問題点はあったものの、安立氏たちは手応えを感じている。小さな投資から可能で、技術的なハードルが非常に低い。最後に安立氏は「まず使ってみることをオススメする。すぐにメリットを実感できると思う」と述べ、国産業務系PaaS導入体験紹介をまとめた。

手軽さと強固なセキュリティーを両立したPaaSを提供

 続けてパイプドビッツの林哲也氏が登壇し、PaaSベンダーの立場からSPIRALを紹介。

株式会社パイプドビッツ 取締役CTO 林 哲也氏
株式会社パイプドビッツ 取締役CTO 林 哲也氏

 同社では「情報資産の銀行」というコンセプトを掲げている。それを具体的にPaaSとしてシステム化、プラットフォーム化したのがSPIRALだ。すでに銀行や区役所などを含め、5000アカウント以上の実績がある。DBを中心にWebプラットフォーム、一覧表、会員認証といたWebのコンポーネント、メール配信といったコンポーネントを組み合わせ、素早くアプリケーションを開発することができる。

 このコンポーネントの組み合わせだけでなく、PHPやJavaScriptにより、個別要件に合わせてプログラミングできる。APIがいろいろ用意されているので、外部システムやスマートデバイスと連携したシステムを開発することが可能だ。

 これにより、SPIRAL上でキャンペーンサイトやアンケート、セミナー管理、給与明細といった個々の顧客の課題を解決するためのアプリケーションを作る、あるいは既存のものをインポートして使う、といったことができる。

 PaaSはIaaSとSaaSの間にあり、開発、運用のクラウドを提供しているのだが、林氏は「業務系PaaSと開発系PaaSの2つに分けられる」と考えている。開発系PaaSは、開発に必要なミドルウェアのレベルまでをクラウドにして、各種の言語を使い、柔軟性の高い開発を可能にする。

2つのPaaSの違い
2つのPaaSの違い

 一方、業務系のPaaSでは、業務アプリケーション開発で必要となるソフトウェア部分までが提供される。林氏は「業務系PaaSは、PaaSの導入スピードと、開発系PaaSのフィット感を合わせ持ったPaaSになる」とイメージを語る。

業務系PaaSの位置付け
業務系PaaSの位置付け

 林氏は、業務系PaaSがもたらす価値として以下の4点を挙げる。

  • 開発スピードと柔軟性の両立
  • 運用・保守の手離れが良い
  • セキュリティーの心配が減る
  • 継続的な機能拡張による新たな価値の提供
業務系PaaSがもたらす価値
業務系PaaSがもたらす価値

 この中でセキュリティについて、SPIRALでは、セキュリティ面で実績のあるソフトウェア部品が用意されている。もう一つのSPIRALならではの強みとして、メール配信が必要なシステム開発が得意なことが挙げられる。例えば高速一斉配信、セグメント配信、記念日配信、文面差し込みなどを簡単に組み込みことができる。また、なりすましを防ぐDKIMに対応している。

 林氏は最後にSIer、Web制作会社にSPIRALを活用するために提供されているプログラム、SPIRAL Developers Program略してSDPを紹介し、担当セッションを終了した。

 ここでモデレータの吉田氏が再登壇し、セッションのまとめを行った。クラウドのベンダーは横並びで、差が分からないことが多い。どこも同じようなことを言っておかないと、選択の土俵に上がれないからだ。しかし吉田氏は「違いは必ずある」と語る。例えば今回のSPIRALでは、DB上において個人情報などセンシティブなセキュリティはベンダー側が持つと言っている。その他のベンダーには別の得意分野があり、「ユーザー側が、複数の選択肢の中から選択可能であることが、非常に大事」(吉田氏)。

 またクラウドでは、同じアーキテクチャーによるコミュニティーができるので、そこで自分たちの技術力を補う人や会社を紹介される、案件を回すとなどのパートナーシップが生まれることが期待できる。

 最後に吉田氏は「提供できるメニューの幅が、新しいビジネスを生み出す原動力になる」と、PaaS活用によって選択肢を増やすことがSIerが生き残る一つの道になりうることを示唆し、セッションを閉じた。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://codezine.jp/article/detail/7339 2013/09/12 14:00

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