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キーパーソンインタビュー(AD)

ホスティング数が世界最大級、物理サーバーも利用可―COOが明かすクラウドサービス「SoftLayer」の全貌

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 海外ではAmazon Web Services(AWS)やRackspaceと並び、クラウドベンダーとして著名な「SoftLayer」。IBMが2013年6月に買収し、同社の「SmartCloud Enterprise」(国内では「SmarterCloud Enterprise」)を終息させ移行を促すことが発表されるなど、国内でも注目度が高まってきている。SoftLayerとは、どんなサービスなのか。SoftLayerのCOO、ジョージ・カルディス氏にその全貌を伺った。

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SoftLayer 最高執行責任者(COO)
ジョージ・カルディス(George Kardis)氏
SoftLayer 最高執行責任者(COO)、ジョージ・カルディス(George Kardis)氏

ホスティングしているWebサイトの数が世界最大級

 SoftLayerは2005年に設立した、専用サーバー、マネージドホスティングサービス、クラウドコンピューティングプロバイダを手掛ける会社だ。世界に13のデータセンターを持ち、ポップ(POPs:points of presence)と呼ばれる17のネットワーク接続拠点でデータセンター間を補完して、インターネットよりも高速に通信できるようにしている。

 2006年にダラスで最初のデータセンターを立ち上げて以来、10万台のサーバーが現在稼動し、140か国、2万2000社の顧客を抱えている。ホスティングしているドメイン数は2200万に及び、これは世界最大級だと言われている。

世界最大級のドメイン数をホスティングするSoftLayer(※顧客数は2014年1月時点の最新値で更新)
世界最大級のドメイン数をホスティングするSoftLayer(※顧客数は2014年1月時点の最新値で更新)

特長的な「ベアメタルサーバー」と「3ネットワークアーキテクチャ」

 プラットフォームの特長の一つとして、高速な読み書きを必要とするアプリケーションに適した「ベアメタルサーバー」(ハイパーバイザーのないシングルテナントの物理サーバー)を短時間でプロビジョニングできることがあり、ハイパーバイザーによる仮想マシンを組み合わせて、パブリッククラウド(マルチテナント)やプライベートクラウド(シングルテナント)を柔軟に構築することもできる。スケールアップやダウンも容易。

 この基盤となっているのが「インフラストラクチャ管理システム(Infrastracture Management System)」。プロビジョニングと、ITサービスのライフサイクル管理を行うもので、一番下のレイヤーで同社が提供するすべてのサービスを支えている。自社開発しているソフトウェアであり、アジャイル開発の手法により、開発チームは毎日のように新機能を追加している。

統一されたSoftLayerのアーキテクチャー
統一されたSoftLayerのアーキテクチャー

 その上に存在するのがネットワークのレイヤーで、同社最大の差別化要素の一つ。「3ネットワークアーキテクチャ(Three Network Architecture)」と呼ばれるもので、「パブリックネットワーク」「マネージメントネットワーク」「プライベートネットワーク」の3層構造で構築されている。

特徴的なSoftLayerの「3ネットワークアーキテクチャ」」
特徴的なSoftLayerの「3ネットワークアーキテクチャ」」

 インターネットにつながっており、外部のアプリケーションがアクセスする部分が「パブリックネットワーク」。ロードバランサやファイアウォールもこの層に存在する。

 アプリケーションやサービス、ストレージは「プライベートネットワーク」という別のインフラ上に存在しており、これはすべてのサーバー、すべてのデータセンターに展開している。例えば、ダラスにあるサーバーは、シンガポールやアムステルダムのサーバーと直接通信できる。同社ならではの機能で、データセンター間のプライベートネットワークの通信は課金されない。

 その中間に位置するのがインフラ管理を行う「マネージメントネットワーク」で、ユーザーがサーバーや仮想環境を管理するためにログインする部分。データセンターの制御機能もここで提供される。

 カルディス氏は「ネットワークはコンピューティングよりも重要。コンピューターはコモディティ化するがネットワークはしない」と述べ、最近はビッグデータアプリケーションによるワークロードの変化が予想されることから、ストレージ部分にリソースを費やしていることを明かした。

 また、開発初期からAPIが提供されており、ポータルや管理インフラ、モバイルアプリなど、ユーザーに提供されるすべてのサービスはこのAPIを通して実現されている。

スタートアップからミッションクリティカルな
エンタープライズ用途まで、幅広く柔軟に対応できる

 サーバーは、一般的なインテルベースのx86サーバーを使用しており、様々なソリューションセットがあらかじめ用意されているため、ベアメタルサーバーにOSだけを載せるといった使い方から、パブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウドの構築まで、どのようなワークロードに対しても使い勝手がよく柔軟に対応できるとしている。

標準技術を活用し、高い柔軟性を実現しているSoftLayerのインフラストラクチャー
標準技術を活用し、高い柔軟性を実現しているSoftLayerのインフラストラクチャー

 SoftLayerでは、下図のサービスポートフォリオで示されるような包括的な機能を提供しており、エンタープライズグレードのサービスを展開するのにも適している。また、高機能なDNSが無料で提供されており、インフラの管理を一任するマネージドホスティングにも対応。特長的なソフトウェアとして、最後のワーキングイメージに戻ってリスタートでき、不慮の事故や開発段階でのテストなどに有益な「RescueLayer」、専用サーバーやクラウドサーバーを区別するなく、統一されたイメージの保存・展開を可能にする「Flex Images」などがある。

SoftLayerのサービスポートフォリオ
SoftLayerのサービスポートフォリオ

 現在SoftLayerを使っている顧客については、スタートアップからグローバルなブランドとして展開している企業まで非常に多岐にわたると説明し、一つの共通点として「収益を生み出し、企業の中核をなす、ミッションクリティカルな用途で使っている」点を挙げた。

現在SoftLayerを採用している主な企業
現在SoftLayerを採用している主な企業

質疑応答

 カルディス氏の説明の後、報道陣と質問を交わす時間が得られた。いくつか代表的なトピックスを一問一答形式でお伝えする。

――IBM買収後の組織に変化は? 現在の体制は?

 組織は、まだ劇的には変わっていません。

 現在、SmartCloud Enterpriseのお客様をSoftLayerのプラットフォームに移行している段階です。買収当初から計画に入っていました。徐々に密に連携し始めています。

 興味深いのは、顧客ベースの重複があまりなかった点です。我々は中小企業から、IBMは大企業から顧客を広げてきたことによるものと考えますが、今後どうやってサポートし合っていくのかを検討しています。統合にはかなりリソースを費やしていて、今後真の意味で一つの組織としてまとまっていくと思います。

――SmartCloud EnterpriseからSoftLayerへの移行に、障害や課題はありましたか?

 機能面ですが、これまでお客様の移行のお手伝いをし、お話ししてきた中では、SmartCloud Enterpriseに対し、SoftLayerが欠けている部分はなかったと思います。機能追加を続け、イノベーションを継続するSoftLayerでありたいと思っています。

――IBMがコミットを発表している「OpenStack」の取り扱いについて

 OpenStackは、我々も長年支持してきています。実際、オブジェクトストレージ向けにOpenStackスイートのプラットフォームを使い続けています(「Swift」というコードネーム)。また、SoftLayerのAPIをOpenStack対応にするというプロジェクトが現在進行中です。

 OpenStackは良い製品だと思いますし、支持しています。オープンソースがそもそも好きですし、我々のプラットホーム全体もオープンソースのツールで構築されていますので、今後も正しい方向性だと思います。また、他の方向性を求めるお客様ももちろんいらっしゃいますので、都度要望を検討していきます。どれかだけに固執するということではありません。

――日本市場について、いつまでにどれくらいユーザー数を伸ばしていきたいという目標はありますか?

 今、日本には少数のお客様しかいらっしゃいません。実は、私たちはこれまでマーケティングチームも予算もなく、基本プロモーションをしてこなかったからです。

 今後はIBMとともに、ローカルチームと一緒に活動することでブランドを確立していきたいと思います。IBMは日本市場で大きなインパクトを持っているので、日本でも大きく成長できると考えております。

 IBMの一員となることで、私たちのコアなコンピテンシーを世界中に展開できる可能性が出来たことを素晴らしく思っています。

――決済手段など、日本の商慣習への対応は予定していますか?

 請求に関してですが、標準的なモデルとしてPaypalやクレジットカードでの決済が通常です。リセラー契約やビジネスパートナーを介してということも可能で、実際行っています。

 支払い手段はさまざまなものを用意しており、例えばシンガポールやアムステルダムのデータセンターを開設した際は現地通貨で受け付けることを始めました。

 日本へのローカライズについては、プロジェクトを立ち上げて進めつつあります。我々にとって意味のある重要な言語はサポートし、各リージョンでビジネスを拡大していきたいと思っています。

 現状、日本であまり成長していないというのは、やはり言語がハードルになっていると考えますので、その辺りをIBMの高いケイパビリティでサポートしてもらえると思います。

 また、日本のお客様向けにJCBクレジットカードでの決済もサポートしました。

――IBMとパートナーを組んだ理由は?

 SoftLayerでは、非常にシンプルなビジョンを持っていました。「世界を制覇する」というものです。我々はインターネット上で存在するものは、すべてSoftLayerのデータセンターにあるべきだと考えています。そのような気持ちを持ってここまで推進してきました。

 その実現には、やはり大手のIT企業と手を組むのが近道ですし、IBMはまさに我々にとって最適のパートナーでした。テクノロジーを理解し、100年以上イノベーションを続けて、世界中のお客様にエグゼクティブレベルでアクセスしているからです。

――日本にデータセンターを設立する計画、プライオリティは?

 はい。確かに日本だけでなく、どこの国に行っても同じ質問をいただきます。これはグローバルにあるニーズで、最終的には拡張を続け、私たちのデータセンターやプラットホームのフットプリントをエンドユーザの近くにおきたいと思っています。

 日本の経済規模、企業の数から考えると大きな成長要因になると思いますので、いずれ置きたいとは考えますが、まだ2014年の計画としては決定していません。長期的な私たちの目標、もしくはロードマップ上には載せています。

――SoftLayerの技術情報はどこを参照するとよい?

 主にオンラインで多くの情報を提供しています。我々の顧客ベースを考えると、技術的な質問に対していち早く答えが必要なケースが多いからです。

 Wikiも運営していますし、技術的な質問に答えるサポートチームもいます。APIや各製品のエキスパートもいます。

――ありがとうございました。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://codezine.jp/article/detail/7558 2014/01/20 16:39

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