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フィギュアの制作も3Dモデリング・3Dプリントの時代へ――デジタル原型師スーパーバイザー(藤縄)×人気絵師ニリツ対談

『デジタル原型師養成講座 プロとして通用するフィギュア作成技法』発売記念

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 高精度な3Dプリンターの普及とモデリングソフトの使い勝手の向上により、フィギュアの造形もアナログからデジタルに移行しつつあります。5月18日に翔泳社より刊行した書籍『デジタル原型師養成講座 プロとして通用するフィギュア作成技法』では、フィギュアのモデリングから3Dプリンターでの出力、さらにプロとして必要な知識までを解説しています。本書の発売記念対談として、著者のスーパーバイザー(藤縄)さんと、本書で作成するフィギュアの原画制作者であるイラストレーターのニリツさんに、書籍作りで苦労した面やこれからデジタル原型師を目指す方に向けたアドバイスなどについて、お聞きしました。

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デジタル原型師養成講座 プロとして通用するフィギュア作成技法

仕様
  • 販売サイト:Amazon / SEShop
  • 本書の特設サイト:3DCGJapan
  • 著者: スーパーバイザー(藤縄)
  • 出版社: 翔泳社
  • 頁数: 304ページ
  • 定価: 2,980円(+消費税)
  • 判型: B5版
  • 色数: 4色
  • 刊行日: 2015年5月18日
  • ISBN: 978-4-7981-3991-3

イラスト特有の矛盾をいかに立体化するかが腕の見せどころ

――今回作画していただいたフィギュア(本書の書影に掲載のもの)の原画のイメージはすぐにわきましたか?

ニリツ 打ち合わせで、キャラクター設定についてしっかりと時間を掛けて練り込みをしたので、イメージはすぐに固まりました。書籍になることが前提にあったので書籍にした時に見栄えするキャラクターを描くことにこだわりました。

 キャラクターのオーダーは「武器を持った中華風の女子高生」という設定でしたが、単に制服を着ただけのキャラクターでは面白くありません。「もう少し個性がほしい」と感じ、半日くらい手でラフを描きながらイメージを固めました。

 実際にイメージが固まってから原画への落とし込みは早かったですね。1日で書き上げました。イラストの完成まで一番時間がかかる部分は、コンセプトを決める部分です。商業イラストの場合、クライアントからの依頼は、もっと細かいケースもあります。

――藤縄さんのほうからの事前の指定はありましたか?

藤縄 今回の例でいえば、「スカート部分」「三つ編みの部分」「メカパーツの部分」が別々の作業工程になり、本誌に載せたかったポイントですので、「事前に織り込んで欲しい」という依頼はしました。

――原画を元にした原型データ作りでたいへんだった部分について教えてください

藤縄 原画のラフをいただいた段階から、「立体に落とし込んだ時にどうなるのか」ということをイメージしていました。

 たとえば、「原画の特定部分のパーツが破損しやすい」など、立体にした時の強度についても考えておかねければなりません(今回の書籍では、そのあたりをイラストの段階でニリツさんに修正してもらいました)。

 次にフィギュアの見栄えの問題です。今回の書籍であれば「おかもち」の部分です。ラフの段階では、「縦気味」になっていました。そこで立体にした時をイメージして、「思いっきり傾けると勢いがでるのでないか」という提案をニリツさんにお願いして、対応していただきました。

――ポーズも重要な部分になると思います。販売されている商業フィギュアの場合も、ポーズは購入者に興味を持ってもらえるポイントかと思いますが?

藤縄 ポーズについては、原型師のアレンジを大幅にきかせて、絵に似ていなくてもイメージ優先のモデル作りをするやり方と、イラストを忠実に再現しつつ、立体に落とし込んでいく方法があります。

 どちらにしても、ここで注意すべき点は、イラストレーターの方から来るイラストには、構図上の「絵の嘘」という部分がどうしても出てきてしまいます。そうした「絵の嘘」の部分を立体にした時、どう解決していくのかを考える必要があります。イラストの原画から立体にした時に矛盾のないようにしていかなければなりません。

――「矛盾をなくす」という作業において。アマチュアの方とプロフェッショナルの方で境界線みたいなものはありますか?

藤縄 「絵の嘘」をなくす方法は、経験がものを言います。アマチュアの方でもトライ&エラーで、10回ほど行えば、1つよいものができあがるかと思います。プロフェッショナルの場合は、アマチュアの方に比べて、トライ&エラーの回数が経験上少ないので、時間的にも早く作成できます。

――プロフェッショナルの方はもう道筋が見えているということですね? 実際に、ニリツさんと藤縄さんのやりとりを見ていますと、そうした的確な修正依頼が多かった印象を受けています。

ニリツ 具体的には「この部分はY字の構図になっていて、立体にした時に映えるだろうな」という部分などです。今回の書籍のイラストでは、そうしたことも含めて「ぎりぎり」のところを攻めています。

 ギリギリで「セーフ」と「アウト」のラインが生まれていて、アウトの部分で藤縄さんから修正依頼が来ていたのだと思います。ピッチングに例えるなら「インコースをかなり攻めていた」のですが、その点はいかがだったでしょうか?

藤縄 はい。大丈夫でした。

ニリツ 実際、スケールフィギュアのポーズがY字の構図だったので、倒れないようにするのが大変だったと感じています。またイラストの原画では、風になびくというより、物が舞っている感じ(いわば重力に反している箇所)をどこまで表現できるかという部分もあったので難しかったのではないでしょうか?

藤縄 オカモチの部分を例にあげれば、原画を見てイメージしたのは、円を描く感じでなびかせてあげればよいと思いました。(アナログ原型を経験していなくて)CGのみの経験しかない方にとっては、この辺りはイメージしにくい部分かと思います。

 一方で、アナログ原型を行っている人であれば、立体的にイメージして作成できると思います。そういう意味で、アナログ原型を行っている人がCGを覚えたほうが、デジタル原型師には向いていると思います。

プロフィール

左:ニリツさん、右:藤縄さん

左:ニリツさん、右:藤縄さん

スーパーバイザー(藤縄)

 商業フィギュア原型師。高校生当時、第1次フィギュアブームで株式会社海洋堂のフィギュアに感銘を受けてフィギュア制作を開始。バンダイコンテストにも入賞するまでになる。その後、フリーランスの手原型師として15年以上活動した後、2010年よりデジタル原型に移行。2013年、艦これ・島風のデジタル原型で一躍脚光を浴びる。主な使用ソフトはZBrush3D-Coat

ニリツ

 神奈川在住のイラストレーター。

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翔泳社 書籍編集部(ショウエイシャ ショセキヘンシュウブ)

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