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Mozilla ViewSource Conferenceレポート

オープンなWebのカルチャーをVRに取り入れたい――WebVR開発者、ジョシュ・カーペンター氏に聞く

Mozilla ViewSource Conference特別インタビュー

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 Mozilla主催のフロントエンド開発者のためのカンファレンス「ViewSource Conference」が、北米・オレゴン州ポートランドにて11月2~4日に開催された。カンファレンスでは、Mozillaが現在開発中の、Webブラウザで体験できるバーチャルリアリティ(仮想現実:VR)技術「WebVR」に関するセッションとデモ展示が行われた。今回は、WebVRの開発に携わるジョシュ・カーペンター氏に、WebVRの特徴と今後の展望についてインタビューを実施した。

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  • 聞き手:近藤佑子(編集部)、矢倉眞隆氏
  • 協力:清水智公氏(Mozilla Japan)、浅井智也氏(同)
ジョシュ・カーペンター(Josh Carpenter)氏
ジョシュ・カーペンター(Josh Carpenter)氏

WebVRはステーキに対する寿司。レスポンシブなVRを目指す

――WebVRの概要について教えてください。

 WebVRはMozillaの研究プロジェクトとして始まりました。VRをWebで表現するために、パフォーマンスは十分か、他に何が必要なのかなどを検証しています。Oculus Riftなどのヘッドセットを認識するためのプラグインも開発しています。

 私たちがサンプルで作っているコンテンツは、ヘリコプターに乗って北極を見る「The Polar Sea」など普段行けないところを体験するものや、センサーの一つであるLeap Motionを活用し、虹色の顔に触れるとぐにゃぐにゃ動かせる「Rainbow Membrane」などがあります。

Rainbow Membraneを筆者が体験しているところ
Rainbow Membraneを筆者が体験しているところ

 通常コンテンツは、見る人と見られるものが分かれていますが、VRだとコンテンツの中に入ることができるので、情報の密度が全く違います。

 さらに「レスポンシブなVR」を目指しています。Oculus Riftのみならず、スマートフォンにはジャイロセンサーがついているので、それをCardboardなどに装着しても見ることができます。さらに、PCだけで見ることも可能で、HALO(Xboxで展開される一人称視点のシューティングゲーム)のような感じでVRの空間を体験できます。

 ヘッドマウントディスプレイを持っているコア層だけを対象にしているのではなく、色々なユーザーに対してVRの体験を届けることを大事にしています。

――UnityやUnreal Engineなど、他にもVRコンテンツを作れるプラットフォームがありますが、それらとWebVRの違いはなんでしょうか?

 Unity/Unreal EngineとWebVRは相互補完的なものです。UnityやUnreal Engineを使うととても作りこんだコンテンツが作れますが、コンテンツのインストールが必要になります。WebVRの一番の特徴はインストールしなくていいこと。リンクをクリックするとすぐVRのコンテンツを使えるのが特徴です。インストールもいらないし、すぐ試せます。

 言うなれば、Unity/Unreal Engineはステーキ、WebVRは寿司のようなものです。世の中にあるVRはステーキ、ステーキ、ステーキ……とリッチなものばかり。ステーキもいいのだけど、私はファストでスモールに実装できる寿司も見てみたいと思い、WebVRに取り組んでいます。

WebのオープンなカルチャーがWebVRのコンテンツを加速させる

――開発者は、WebVRのコンテンツをどのように作ることができるのでしょうか。

 例えばWebGLやThree.jsで作ることができます。これらを使って、JavaScriptのコードでシーンを表現したり、VR内にオブジェクトを配置したりできます。スクラッチでWebGLに書くとパワフルな表現ができますが、複雑で少々敷居が高いので、もう少し抽象度の高く、敷居の低いツールもあります。

 例えばVizerは、WebVRのコンテンツをWeb上で作ってシェアできる開発環境です。さらにグーグルのエンジニアが提供しているWebVR boilerplateには、さまざまなサンプルがあるので、それらを参考にして作るといいでしょう。

 そして私は今回のカンファレンスで、WebVRの開発環境「A-FRAME」を発表します。A-FRAMEは12月に正式リリース予定です。A-Frameは、HTMLのタグでシーンを定義するもので、プログラミングが詳しくない人でもWebVRのコンテンツを開発することができます。それを実現しているのがWeb Componentsという技術で、特定の意味をもった要素を開発者みんながシェアできるようにするためのものです。

――Unityのアセットストアのようなイメージでしょうか。

 その通りです。A-FRAMEは拡張性の高さも特徴です。例えば、誰かが木のモデルを作ったとして、木を100本植えたものを「森」という新しいコンポーネントとして定義するようなことができます。

 GitHubのリポジトリやNodeのnpmのような、WebのシェアのカルチャーがWebVRにも反映されています。

A-FRAMEのサンプル「Sky」(出典:A-FRAME EXAMPLE : SKY)

A-FRAMEのサンプル「Sky」(出典:A-FRAME EXAMPLES : SKY

  • A-FRAME EXAMPLES(A-FRAMEのサンプルがリンクされているページ。アセットのアップロードも可能)

――最後に、日本の開発者やクリエイターにメッセージをお願いします。

 1992年にバブルガムクライシスというアニメを見て衝撃を受け、ずっと日本のSFアニメに触れてきました。私がいま開発しているWebVRは、AKIRAや攻殻機動隊などの、ホログラムのUIからインスパイアを受けています。ゲームもすごくいいですね。日本のクリエイターはとても面白いです。

 今はWebVRに参加するとてもいいタイミングです。ちゃんと固まってるわけでもないので、まずは参加して、いろんな面白いもの、奇妙なものを作り、シェアしてもらえるととっても嬉しいです。

――ありがとうございました。

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この記事の著者

近藤 佑子(編集部)(コンドウ ユウコ)

株式会社翔泳社 CodeZine編集部 編集長、Developers Summit オーガナイザー。1986年岡山県生まれ。京都大学工学部建築学科、東京大学工学系研究科建築学専攻修士課程修了。フリーランスを経て2014年株式会社翔泳社に入社。ソフトウェア開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集・企画・運営に携わる。2018年、副編集長に就任。2017年より、ソフトウェア開発者向けカンファレンス「Developers...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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