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Japan Product Manager Conferenceで語られた、エンジニアならではのスキルをプロダクトマネジメントに生かす方法

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2016/11/16 14:00

 サイバーエージェント・アドテクスタジオでプロダクトマネージャーを務める渡辺雄作氏。10月25日に行われた「Japan Product Manager Conference」では、「エンジニアがプロダクトマネージャーに進化すると何が起きるのか」というタイトルでセッションを行った。プロダクトマネージャーとしての業務の中で、エンジニアの経験がどのように生かされているのか―――数々のエピソードが語られた。また、これからプロダクトマネージャーを目指すエンジニアに対し、エンジニアならではの強みの生かし方について提言した。なお、内容は渡辺氏個人のケースであり、アドテクスタジオ全体が同様に動いているわけではないとの前置きがあった。

株式会社サイバーエージェント アドテクスタジオ 渡辺雄作氏
株式会社サイバーエージェント アドテクスタジオ 渡辺雄作氏

 渡辺氏はサイバーエージェントで「アメーバブログ」「アメーバピグ」などの開発を経験した後、2013年よりアドテクスタジオにてアドテクノロジー事業に携わっている。現在のアドテクスタジオに「プロダクトマネージャー」という役職はまだ正式に存在しないものの、渡辺氏は実質的なプロダクトマネジメント業務を務めている。

なぜ、アドテクスタジオで「プロダクトマネージャー」が生まれたのか

 「アドテクスタジオだけでなく、サイバーエージェント全体に言えること」と、渡辺氏は前置きした上で、「できる人がリーダー業務を幅広く行っていることが多い」と語った。ただその中でも、ポジションの種類は大きく3つに分類されるという。

  1. 事業責任者:売り上げに責任を持ち、ビジネス、つまり事業戦略を考える役目。営業出身者が多い。
  2. ディレクター:開発とビジネスの橋渡しを行う重要なポジション。両者にバランスよく精通。
  3. 開発責任者:文字通りエンジニアのリーダーで、システム全体を把握する必要がある。

 これらリーダーのもとに、開発やビジネスのチームが存在するが、チーム間にはコミュニケーションロスが発生しがちなのだという。トップダウンで「事業責任者がやりたいこと」を現場のエンジニアまで伝える場合、非常に時間がかかる。一方、ボトムアップでエンジニアが「高度な技術を提供できる」とアピールしても、ビジネスサイドが「顧客のニーズに合わない」と判断するケースもしばしば発生する。また、エンジニアが中長期的な成長を見込んで技術アイディアを提示したとしても、事業責任者はキャッシュフローを考慮する必要があり、受け入れにくいと感じる。

コミュニケーションロスの例
コミュニケーションロスの例

 エンジニアだけでは「マーケット・顧客視点の考え」が不足し、ビジネスだけでは「技術的な取り組み」ができなくなってしまう。このようなコミュニケーションロスを減らすために、幅広い知見を持ったプロダクトマネージャーのニーズが生まれたのだという。

 では、プロダクトマネージャーに必要とされる幅広い知見とは具体的にどのようなことなのだろうか。渡辺氏は代表的な5つの例を挙げた。

  1. ビジネス:マーケティングや経営の知識。
  2. 広告テクノロジー:広告に特化した、ユーザーにとって有益な情報を届ける技術。
  3. テクノロジー:Webに代表されるようなネットワークの一般的な技術。
  4. クリエイティブ:ユーザーに訴求する広告を考慮するためのクリエイティブな知識。
  5. サイセンス:データサイエンスや、経済学的なアプローチする際に必要となる、アカデミックな知識。

プロダクトマネージャーとしての業務具体例

 渡辺氏は自身の業務内容についての割合を示した円グラフを提示した。ビジネスストーリー(事業戦略の立案)、チームマネジメント、プロダクトデザイン、プロジェクトマネジメントといった、プロダクトマネージャー的な業務は全体の67%を占める。

渡辺氏の各種業務の割合を示したグラフ。赤枠で囲まれた箇所がプロダクトマネジメント関連業務。
渡辺氏の各種業務の割合を示したグラフ。赤枠で囲まれた箇所がプロダクトマネジメント関連業務。

 渡辺氏はこれらの具体的な業務内容と、エンジニアがプロダクトマネージャーを目指す際に気を付けるべきポイントを説明した。

ビジネスストーリー

 プロダクトマネージャー業務の中で、最も時間を割いていることがビジネスストーリーだ。言い換えると事業戦略を立てることであり、その中でも「どんな社内資源を使って事業を行うか」という点を渡辺氏は重要視している。サイバーエージェントはグループ企業であるため、豊富な社内資源が既に存在している。これらをうまく利用すれば「素早い新規事業のスタートが可能」となるのだという。

チームマネジメント

 渡辺氏がチームをマネジメントする際に意識していることは「フォーメーション」だ。例えば、「フロントエンド」「バックエンド」「問い合わせ対応」の各担当に対して、状況に合わせ戦略的にエンジニアを配置するということなどである。

 チームマネジメントもプロダクトマネージャー業務の中で大きなウェイトを占めているが、「エンジニアはマネジメントに苦手意識がある」と渡辺氏は述べる。しかし、「チームマネジメントも技術であり、プログラミングと同様に勉強し、実践で失敗しながら経験を重ねることが重要」と、マネジメントに対して積極的に取り組む必要性を説いた。

プロダクトデザイン

 「エンジニアは物事を構造的に考えることが得意」と渡辺氏は述べる。プロダクトを生み出す過程では「お金になる」「顧客からのニーズが高い」など、さまざまな状況が点として存在している。それらの依存関係をマインドマップやシーケンス図にして線や面になどに落とし込み、構造的に理解した上でビジネスの計画を立てる方法を提案。このようなアプローチはエンジニアならではの手法だという。

プロジェクトマネジメント

 プロダクトマネジメントに集中するため、「プロジェクトマネジメントに割く時間は短くしたい」。これが渡辺氏の考えである。そこで、スクラムをベースに開発プロセスを構築している。スクラムはチームメンバーの自立を促す手法であり、マネジメントの負担を減らすことができる。

 また、開発・システムコンセプトを明確にし、システムの見通しを最優先に考えることも重要だ。システムに一貫性がなくなると見るべき箇所が多くなり、フットワークも重くなる。そうなると少人数チームでの開発は困難になってしまう。

事業運営にも技術を

 渡辺氏はプロダクトマネージャーであると同時に事業責任者でもある。エンジニア出身ならではの手腕は、プロダクトマネージャーの業務以外でも発揮されているという。事業運営業務にも技術は活用でき、例として「ChatWorkでbotを動かして自動で営業報告を行う」「売り上げ報告のレポートを自動で作成する」という2点を挙げた。「日々発生するオペレーションを自動化できるのはエンジニア出身のプロダクトマネージャーならでは」と渡辺氏は語る。

エンジニアならではのスキルでビジネスを成功させる

 テクノロジーを駆使することができるエンジニアがプロダクトマネージャーに進化すると、より本質的なプロダクトマネジメントに集中することが可能となる。また、エンジニアリングな現場寄りの思考で、エンジニアをより良く活用することができる。

 ただし、冒頭でプロダクトマネージャーが生まれた理由を述べた際に触れた通り、プロダクトマネジメントだけでは市場に参入はできない。市場をよく知る強力なビジネスチームを持つことの重要性についても説き、渡辺氏はセッションを締めくくった。



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