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リモートワーク時代に「エンジニアの幸せ」のためにマネジメントは何ができるか

コロナ禍で「フルリモート」へ舵を切ったヤフーとクリエーションラインの試行錯誤
エキスパート向け 2020/12/22 12:00

 2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大が、社会のあらゆる領域に大きな影響を与えました。4月には政府による緊急事態宣言のもと、不要不急の外出、公共交通機関による出勤の自粛が強く要請され、われわれの生活、働き方も変化を強いられました。これまで以上に大規模かつ急速に「リモートワーク」が一般化する中で、エンジニア組織を抱える企業は、どのようなチャレンジを行い、これからの課題をどのように捉えているのでしょう。今回、ヤフー取締役常務執行役員の仲原英之氏と、クリエーションライン代表取締役の安田忠弘氏に「リモートワーク時代のマネジメント」をテーマに語っていただきました。

リモートワーク時代に変化を求められるエンジニア組織のマネジメント

仲原:ヤフーの仲原です。自己紹介をさせていただくと、キャリアの最初は、メーカーで半導体のソフトウェアエンジニアをやっていました。主にBtoB領域の仕事だったのですが、将来的にはお客様に直接サービスを提供するBtoCの仕事をしたいと考えていました。その後、パソコン通信サービスを提供する会社に移り、世の中がインターネットにシフトしていくのに併せて、ある程度の規模がある会社でお客様にインターネットのサービスを届けたいという思いから、2003年にヤフーへ転職しました。

 ヤフーでは多くのサービス開発に関わり、さまざまな役割を経験してきました。2014年に、データセンター、ネットワーク、基盤システムといった、ヤフーが提供するサービスのインフラ全体を担当するシステム統括本部の統括本部長に就任しました。2019年からは、取締役、そしてテクノロジーグループ長として、グループ全体をまとめつつ、経営に対しても責任を持つ役割を担っています。

 ヤフーのテクノロジーグループには、システム統括本部に加えて、マルチビッグデータ処理のためのデータ基盤を受け持つデータ統括本部と、それを利活用するサイエンティストが在籍するサイエンス統括本部があり、各サービスの成長や、新規サービス立ち上げに寄与するマルチビッグデータ基盤を提供しています。本日はよろしくお願い致します。

仲原英之(なかはら・ひでゆき)氏

 ヤフー株式会社 取締役 常務執行役員 テクノロジーグループ長 兼 テクノロジーグループ システム統括本部長。2003年にヤフーに入社。R&D統括本部フロントエンド開発本部長、スマートデバイス戦略室スマートデバイス開発本部長などを歴任し、2014年4月より執行役員 システム統括本部長に就任。2019年4月よりヤフー株式会社 常務執行役員、同年10月よりヤフー株式会社 取締役に就任し現職。

安田:クリエーションラインの安田です。こちらこそよろしくお願いします。私は2000年に、当時ソフトバンクグループだったブロードメディアという会社に入りました。ブロードバンドが世の中でようやく立ち上がり始め、まだビジネスニーズも少なかったころに、ブロードバンドを利用するためのヤフーBB系のサービスや、オンラインストレージなどを提供するような仕事をしていました。

 その後、2006年に独立して、クリエーションラインを設立しました。会社経営には紆余曲折があり、存続の危機にさらされるような時期もあったのですが、今では約170名の社員を抱える企業としてビジネスを行っています。事業としては、アジャイル開発支援サービスとサブスクリプションサービスを主軸にしており、社員の約8割がエンジニアという技術集団です。

 今回の対談のテーマは「リモートワーク時代に、エンジニアが幸せに働ける組織を作るマネジメント」と伺っています。私自身は、以前は現場での仕事もしていたのですが、現在はマネジメントに専念しており、社内では特に人事制度の設計や、社員のモチベーションをどうすれば上げていけるかといったことに注力しています。

安田忠弘(やすだ・ただひろ)氏

 クリエーションライン株式会社 代表取締役。1972年熊本県生まれ。2000年に当時ソフトバンクグループだった「ブロードメディア」へ入社した後、2006年に独立してクリエーションラインを設立。「IT技術によるイノベーションにより顧客と共に社会の進化を実現すること」をミッションとして、アジャイル開発支援サービス事業、サブスクリプション事業を展開する。クラウド、OSS、アジャイル、DevOpsなどについて多くの経験と知識を有する技術者170名を率いる。

安田:ちなみに、ヤフーのテクノロジーグループは、どのくらいの規模なのですか。

仲原:人数で言えば1500人くらいですね。マネジメントの観点で何をやっているかと言えば、まず、ビジネス側では個別にKPIを持っていますので、それを達成するためにどうすればいいかということを一番に考えています。

 併せて、個々のエンジニアが成長できるような環境作りも意識しています。ヤフーは、エンジニアが作ったサービスを多くのお客様に使ってもらえるという点で恵まれています。お客様から直接フィードバックを頂けるので、それらを参考にサービスを改善することで、エンジニア自身も成長し、さらに良いサービスを生みだすことにつながるという環境を作っていきやすいのではないでしょうか。その中で、私のような管理職がやっていくべきことは、チームの事業への「貢献」を部門の内外に対してどのように見せていくかを考えることだと思っています。

 エンジニアチームが良い環境で作ったものを世の中に提供し、それを通じて本人も成長が実感できるような場を作ることをやっていきたいですね。

安田:グループとして1500人を束ねるというというのは、ヤフーならではの規模感ですね。仲原さんは、より現場に近いところでのマネジメントも経験してこられたと思いますが、どのようなスタイルを心がけておられたのでしょう。

仲原:自分がチームを率いていたときには、分かりやすく言えば「家族」みたいなチームづくりを心がけていましたね。チームが同じ方向を向き、同じ価値を共有できることが大切だと考えていました。

 自分がメンバーに対してよくする質問に「あと何年第一線で働けますか? 代表作を作れるチャンスは何回ありますか?」というのがあるのですが、メンバーの一人ひとりが、「これはしっかり作れた」と胸を張って言えるような代表作を、チームで作っていきたいという思いがあるのです。

 そして、チームが健全であれば、たとえ、一度失敗してしまったとしても、再度挑戦できる機会は必ずやってきます。サービスをリリースはしたけれど、チームは疲弊しきってしまい、次につながらないような事態は避けたいですよね。「このチームなら、また挑戦できる」という状況を作ることは、常に意識してきたと思います。

安田:「家族」のようなチーム作りというのは、目指したいマネージャーが多い一方で、難しい課題でもあると思います。仲原さんが、家族的なチームを作るために、何か実践されていたことはありますか。

仲原:具体的にやっていたことというと、メンバーが何かに迷っていたり、決断をしなければならなかったりするような時に、先輩や上司としての立場からアドバイスするのではなく、本人に問いかけをすることで、自分で気付くチャンスを与えるようにするということですね。

 課題へ真剣に向きあっている人は、多くの場合、どうするべきかの答えを、おぼろげながら自分の中に持っているものです。でも、それが正しいか分からなかったり、自信がなかったりする。そういう人には、問いかけをすることで、結果的に本人の中で、努力する方向や、進んでいく方向が明確になります。何より「自分で気付けた」という経験と自信は、本人の成長にもつながりますね。

 安田さんは先ほど、会社をマネジメントする中で、かなり厳しい時期があったとおっしゃっていましたが、その時期をどのように乗り越えられたのでしょうか。

安田:自分について言えば、それまでにとってきたマネジメントスタイルが、2013年に、一度完全に崩壊したという経験が、今に大きく影響を与えています。当時は30人ほどの会社だったのですが、大きく3つのチームがあり、互いが極めて険悪な状態でした。コミュニケーションは取れず、プロジェクトにも遅延が頻発。一部の社員は、SNSに社内の状況について、あることないことを投稿すると言った状況で、組織としてはボロボロでした。そうしたことが同時に起こって、一時は自分自身も会社をやめようと本気で考えるほどでした。

 その当時、なぜそんな状況になってしまったのかの原因を、自分なりに考え続けていたのですが、至った結論は「目先の利益にあまりにも目を奪われてしまい、社長である自分自身が、この会社の理念やビジョンを描けていなかった」ということでした。それに気付いた時に、「これではダメだ」と本気で自分自身を変えようと決心しました。

 それ以降、マネジメントの方針としては「人」を中心にした会社を目指しています。働く人たちと、そのコミュニケーションを大切にする会社ですね。ここ数年で、組織の状況はようやくまともになってきたと思っています。

 理念として掲げているのは「HRT+Joy」です。「HRT」(Humility、Respect、Trust)は『Team Geek』(オライリー・ジャパン)から、「Joy」は、自分が特に強く影響を受けたリチャード・シェリダン氏の『ジョイ・インク』(翔泳社)から引用しています。

 仲原さんが指摘された「失敗しても、再挑戦できる」ことの大切さは、ジョイ・インクの中でも「Make Mistakes Faster」という表現で触れられています。これは「素早く失敗して、素早く改善していく」という姿勢のことですが、日本だと文化的な違いもあり、理解してもらえなかったり、うまくなじまなかったりすることもありますね。ただ、僕らの会社では、それを推奨していくということを、明確に掲げるようにしています。

仲原:マネジメントにおいて、人を中心とするスタイルは、これからあらゆる領域で重要になるでしょうね。私は執行役員になったタイミングで、グループにどんなメンバーがいるのか、改めて見直してみるということをやったのですが、その時、ヤフーという企業は、本当に優秀なエンジニアたちの支えによって成り立っているのだという思いと、感謝を強く持ちました。

緊急事態宣言以降、現在も続く「組織マネジメント」の試行錯誤

安田:コロナ禍の影響で、特に4月の政府による緊急事態宣言以降には、企業にリモートワークの実施が強く要請されました。ヤフーは、対応方針の決定や実行も早く、的確だったように思います。当社でもいろいろと参考にさせていただきました。

仲原:ありがとうございます。リモートワークという意味では、2014年から「どこでもオフィス」という取り組みをスタートしていました。これは、エンジニアを含む社員が、月に5回まで、オフィス以外の好きな場所で業務ができるという制度です。子育てや介護のようなライフステージの変化と仕事との両立など、いろいろな視点で新しい働き方を模索してみようという試みでした。その点では、以前からリモートワークの土台があったといえます。

 緊急事態宣言以降は、原則として全社員が在宅勤務をすることになったのですが、当初は「会社に出社しなければできない業務に携わっている人」に対しての環境が十分に提供できていないなど、いろいろと課題も出てきました。そこから、業務範囲や会社のポリシー、セキュリティルール、社員の安全性など、いろいろな要素を改めて見直して、大急ぎで環境を整えていきました。結果的に、5月の大型連休明け以降には、業務への大きな影響もなく、リモートワークを全社規模で実施することが可能になりました。

安田:ヤフーでは、リモートワークの取り組みと並行して、アンケートのような形での状況調査も行われていますよね。

仲原:リモートワークの開始後、社員の働き方や健康面、業務の状況や効率について、どのような影響が出ているのかについては、社長もかなり気にしていました。そこで、社員に定期的なアンケートを行って、それらを把握するという取り組みを行っています。

 開始当初は、業務の面にも、また社員のメンタル面にも、いろいろと混乱があったのですが、次第に環境が整い、リモートワークに慣れてくるに従って、状況は落ち着いてきました。現在でも、社員の95%が在宅勤務を続けており、92.6%が「リモートワークでも業務のパフォーマンスに影響がない」あるいは「向上した」と考えているという結果が出ています。

 今後、コロナ禍の状況が改善した後でも、この変化はもとに戻ることはないだろうという判断の下、10月1日からは、回数制限やコアタイムを撤廃した「無制限」のリモートワークを実施しています。

 安田さんの会社におけるリモートワークの状況はどうですか。

安田:僕らも以前から、部分的にリモートワークを取り入れてはいたのですが、コロナ禍のタイミングで完全リモートワークに切り替えた形ですね。3月から現在までの間で、社員のオフィス出社率は1~2%に抑えています。

 完全なリモートワークを導入する際に、当初懸念したのは、お客様との共同作業におけるパフォーマンスの低下でした。われわれはお客様のシステムをアジャイルで作っていく中で、フェイス・ツー・フェイスで対話しながら進めていくことを重視していたので、リモートワーク化が、それを阻害する要因になるのではないかと思ったのです。

 ただ、実際に蓋を開けてみると、それは問題ではなかったことが分かりました。業務のパフォーマンスに大きな変化はなく、お客様からの評価も良かったのです。実際に社員にとったアンケートでは、リモートワークで業務のパフォーマンスが「変わらない」と感じている人は全体の60%、「上がった」と感じている人は36%に達するという結果が出ています。

リアルに代わるコミュニケーションスタイルの確立が今後の課題

仲原:社員間のコミュニケーションについては、現在も試行錯誤されているとのお話でしたが、どんなことを試されているのですか。

安田:僕らは、偶然の出会いや、何気ない会話からコミュニケーションが生まれる場としての「オフィス」を非常に大事にしていた部分があるので、そこに集まることができない以上、代わりにできること、使えるものはないだろうかというのは今も考え続けていますね。

 当社では、「業務の一部として、業務と関係のない雑談をする時間を作る」というルールを作っています。このルールは、OKR(Objectives and Key Results)のひとつとしており、あえて「業務時間の3%を雑談に当てる」という数値目標を設定しています。

 並行して、物理的なオフィスの代わりになるようなバーチャルオフィスはないだろうかといろいろ試してみています。これまでに使ってみた中では「oVice」というサービスが面白かったですね。いわゆる、チーム向けのコミュニケーションツールなのですが、リアルなオフィスを模した要素を取り入れていて、仮想オフィス内にいる人同士の「距離」によって会議や会話がスタートするような仕組みがあります。

 現在も検討は続けているのですが、課題感としては、チームや組織の一体感、会社の文化のようなものをどう維持するか、社員のモチベーションをどうすれば高められるかといったところが中心ですね。

仲原:われわれの課題感も、安田さんと近いところにあると思います。

安田:ちなみに、ヤフーに設置されているオープンコラボレーションスペースの「LODGE」については、現在どのように運営されているのでしょうか。

仲原:LODGEは本来、社内と社外のみなさんに開放していたのですが、現在、一般のお客様には利用をご遠慮いただき、ヤフーが所属するZホールディングスのグループ企業・社員や、ヤフーも加盟しているIT連盟加盟団体および加盟企業が利用できる形にしています。

安田:リモートワークが常態化すると、経営の立場としては、今後、物理的なオフィスを、これまでと同じ規模で維持していくかどうかという判断も必要になると思います。ヤフーでは、そのあたりの方針は出ているのですか。

仲原:具体的に決まっていることはないのですが、恐らく、段階的に縮小していくことにはなるだろうと見ています。

安田:なるほど。ヤフーで、リモートワーク下において、社員間のコミュニケーションを維持するために試してみた施策はありますか。

仲原:チームでの親睦会費用を、会社が一定額補助するという制度は以前からありました。ただ、今はリアルに集まることができない状況なので、オンラインでの親睦会を実施して、参加者に同じ食べ物が届くよう、宅配サービスを利用して、一定の費用を負担するといったことをやってみましたね。

 安田さんがおっしゃるとおり、オフィスでの雑談は、とても重要だと思います。ちょっとした時間に、隣の席にいる人やフロアが近い人のところに行って、気軽に声を掛けられる環境に代わる何かについては、われわれも模索しています。リモートワークが長く続くと、チームへの帰属意識のようなものは、どうしても薄れてきますよね。その中で、目標について意識合わせをしたり、各自のコンディションを確認したり、悩みを解決したりする機会は大切です。そのためのコミュニケーションを維持するために何かできるのかというのは、今後も考えなければいけませんね。

 あと、もうひとつの大きな課題は、新しくチームにジョインしてくるメンバーとの関係をどう作っていくかという点でしょうか。以前からオフィスで顔を合わせていて、既に知っている人とのリモートコミュニケーションには、それほど大きな問題はなさそうだということは分かってきました。ただ、チームに入って日が浅かったり、これから入ってきたりするような新しい人に、どうやってチームに溶け込んでもらうかは悩ましいですね。直接、顔を合わせられない状況で、互いに相手がどういう人物なのかを理解し合うためにどうすればいいかは、真剣に考えていくべきテーマだと思います。

安田:たしかにそれは難しいですね。クリエーションラインにも、数名ながら、今年度の新入社員がいるのですが、僕自身も、リアルには、彼らと1度しか会えていません。アンケートをとったり、他のメンバーとの「雑談」の時間を強制的に作ったり、業務指導とは別のメンター制も取り入れたりしながら、コミュニケーションの機会は確保するようにしているのですが、それですべてが解決できるかと言えば、そうではありません。幸い、今のところ、1人も離脱せずに会社に残ってくれているのですが。

 ただ難しいのは、「リモートでのコミュニケーションで十分」と考えている人が、特に若いメンバーに多く、「もしかして、今はリモートが普通?」と感じることもあるのです。われわれが心配しているほどには、リモート環境が若いメンバーのモチベーションに影響を与えていない可能性も考慮すべきなのかなと迷っているところです。

 いずれにせよ、われわれは今、これまでだれも経験したことがなく、どう対処するのが正解かも分からない課題に直面しているわけですから、これからも迷いながら良いと思われるやり方を試し、ダメならば改善するということを続けていくしかないのだろうと思っています。われわれの規模の組織でも、難しさは実感していますので、ヤフーの規模になるとさらに大変だと思うのですが、そのあたりはいかがですか。

仲原:大きい組織だからこそ、ミドル層の管理職も多くいますので、私一人で難題に立ち向かわなければならない状況ではない点は助かりますね。ただ、この組織規模がゆえに、職種やチームごとに、同じ社内でも本当にさまざまなカラーがあります。そのすべてに対して一律で同じルールを適用することは、あまりふさわしくないだろうとは感じています。

 むしろ、それぞれの組織の中で、今後を担っていく若い人たちを中心に新しい文化を作ってもらい、それに対して、われわれ管理職がどんなサポートをできるかを提案してもらいたいという気持ちがありますね。

安田:たしかに、こうした状況の中では、経営側、管理職側が、若い人の意見をどんどん取り入れていくというスタンスを積極的に見せていくというのが大事かもしれません。

ニューノーマルな社会でエンジニアが外部で活躍するための制度

安田:ヤフーでは、無制限リモートワークと合わせて、「副業人材」(ギグパートナー)制度の導入も発表されていましたね。

仲原:はい。ヤフーでは、会社に根付いた固定観念を壊すような、外部からの意見を取り入れたいという思いで、副業人材を受け入れる体制を整えてきました。それが、今回のギグパートナー制度です。

 今回の発表以降は、社内の人たちに対しても、副業を積極的に推奨するようにしています。リモートワークによって、オフィスに出社する必要がなくなったことで、一定の時間的余裕が生まれた社員も増えました。それを有効に使って、業務とは違うことに挑戦したい、自分の成長機会にしたいと考えている人を支援するものです。

 ですが、社員に金銭的な報酬だけでなく、できる限り多くの成長の機会を与えたいと思う反面、それにはどうしても限界があります。成長の機会を、主体的に増やしていってほしい。それを支援していけたらと考えています。

安田:クリエーションラインでも社員の副業は認めており、外部からの受け入れも行っています。基本的に、副業ができる人というのは、仕事の中で高いバリューを出せる人です。会社としても、そうした場所や制度を用意することで、外から新たな知識を得たり、新しい技術を取り入れたりするきっかけが生まれるという点でメリットを感じています。

 今後、社会的に副業は増えていく方向にあると思いますが、エンジニアは、そのメリットを特に大きく受けられる職種ではないでしょうか。ビジネス全般で、ITが付加価値の源泉と捉えられるようになっており、これまでITとは距離が遠かったプレイヤーも、ITを武器として活用するようになってきています。それに伴って、エンジニアを取り巻く環境も、大きく変わっています。旧来のように「社内の情報システムを守る人」としてだけでなく、「ビジネス価値を生むために技術を活用できる人材」として、高く評価されるようになってきているのです。

 エンジニアには、こうした環境の変化を捉えて、積極的に活躍の場を広げていってほしいですし、会社としても、そうした動きを後押しできるような場を作っていきたいと思っています。

それぞれに持つ強みを生かしながら「幸せに働ける」職場を目指す

仲原:今日は、お互いにマネジメントの立場から、安田さんと有意義な意見交換ができたことをうれしく思っています。ヤフーは比較的大きな規模の会社なので、リモートワークに関することを含め、マネジメント面での取り組みにも注目していただけることを、ありがたいと思うと同時に、スピード感をさらに高めていきたいとも思っています。

 個々のメンバーの働き方や組織のあり方など「多様化」を実現していくというのは、われわれにとっても今後の課題です。そのために、より多くのアイデアを出し、実行に移すというサイクルを、クリエーションラインに負けないよう、今まで以上のスピード感でチャレンジしていきたいですね。

安田:仲原さんのおっしゃるとおり、この状況下で、コンパクトな組織だからこそチャレンジできることは多くあると思います。コロナ禍の影響をチャンスに変えられるような前向きな取り組みに、失敗を恐れずにチャレンジしたいですね。「Make Mistakes Faster」の精神で、会社そのものがコケない程度の失敗を、たくさんしていくつもりです(笑)。もちろん、今後もヤフーの取り組みは参考にさせていただきたいと思っていますので、引き続きよろしくお願いします。


著:高橋美津

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