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周囲の音をメッセージで教えてくれるLINE BOT「おとみどりちゃん」を作った名工大生にインタビュー

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2017/05/31 07:00

 2016年12月から翌年3月にかけて開催されたLINE BOT AWARDS。さまざまなLINE BOTが応募された中で、聴覚障害者やお年寄りなど聴覚に難を持つ人のために音やモノの動きを通知するLINE BOT「おとみどりちゃん(Sound Messenger)」を制作したのが名古屋工業大学・工学部情報工学科の佐竹寛弥さん、杢谷拓哉さん、松岡和樹さん、橋口拓也さんによるTeamSMです。受賞には至らなかったものの、このユニークなコンセプトのLINE BOTについてお話をうかがいました。

音を視覚化するシステムの開発をLINE BOTに応用

――まずは「おとみどりちゃん(Sound Messenger)」の概要について教えてくださいますか? また、作成したきっかけは何だったのでしょうか。

佐竹:「おとみどりちゃん」はユーザーの身の回りで発生した音やモノの動きをセンサーによって検知して、それらをLINEでユーザーに通知してくれます。「おとみどりちゃん」を登録していただき、モノにセンサーをつけるだけでシステムを利用することができます。

おとみどりちゃん

 各センサーごとに通知メッセージやセンサーの設定を自由にデザインすることで、まるでモノとお友達になったような感覚を味わえると思います。特に、メッセージのデザインがLINE上から簡単なボタン操作で行える点が特徴的です。

 メインの想定ユーザーは聴覚に何らかの障害や難を持つ方です。また、騒音環境下で音を聞き逃してしまう方もですね。

LINE画面

 当初は大学の演習課題の一環として、音の視覚化(Sound Visualization)を目的としたシステムの開発を考えていました。聴覚障害者やお年寄り、騒音環境下の方を対象にして、音を視覚化することで危険察知を促すシステムです。

 実際にどういったプラットフォームで利用してもらうと使いやすいのかを考えた時、操作性に優れ、多くの人に馴染みがあり、かつ利用できるコンテンツが豊富なLINEを思いつきました。

 通知にも指向性があり、通知対象のユーザーを選択できます。情報を必要とするユーザー個人に、的確に情報を届けることが可能だと考えたんです。

どのような環境で開発したのか

――「おとみどりちゃん」の開発環境はどうでしょうか。バックエンドの構成や利用したデバイスなどを教えてください。

佐竹:バックエンドには、仮想サーバーとしてHerokuというPaaSを使用しています。サーバーには、自分たちで作成したLINE BOT動作用のPHPプログラムと、通知するユーザーIDリスト、通知メッセージデータを置いています。

 また、PHPプログラムはReply用とPush用の2種類を作成しています。Reply用には通常時での返答動作やキーワード入力による通知メッセージ変更動作が含まれており、もう一方のPush用には各センサーごとのメッセージ通知動作が含まれています。

 他には、音とモノの動きを検知するための入力部分として、モノワイヤレス株式会社が販売しているTWELITE 2525Aという無線加速度センサを使用しています。ボタン電池一つで使用可能で、サイズもほぼ10円玉と変わらないほど小型です。センサーには動きの検知以外にも、「タップ」や「ダブルタップ」といった特殊な動きを検知する機能も入っています。

 LINE BOTの動作プログラムにはPHPを使用しました。センサーの設定や、センサーからのLINE BOTプログラムの呼び出しにはPythonを使用しています。

 ちなみに、開発期間は全体で約2ヵ月です。企画と設計に3週間、実装とテストに5週間ほどかかりました。大学の演習課題の一環ということもあり、あまり長い時間をかけることはできませんでした。

TeamSM
名古屋工業大学・工学部情報工学科 TeamSMのメンバー

LINE BOTを作ってみて

――LINE BOTを作成する際、使いやすかった機能やよかったポイントは何ですか?

佐竹:LINE@ Managerが非常に使いやすかったです。通知メッセージの設定やボタンなどのリッチコンテンツを簡単に作成できるので、設計初期段階におけるデザイン決定ではとても便利でした。

 また、Messaging APIもリファレンスが充実しており、プログラム言語ごとの記述も掲載されていたため、使いやすかったです。対応可能なプログラム言語の多さも魅力の一つでした。

――どんなことに気を配りましたか?

佐竹:「ユーザにどのようなメッセージとして通知するか」です。もちろん、「音を視覚化する」という目標に対して、正確に音やモノの動きを検知することも重視しました。

 しかし、速く・正確に伝えてこそ、危険察知において最重要であるという結論に至ったんです。具体的には、スマートフォンのホーム画面を確認するだけで、「何が発生したか」が一目で分かるように意識しました。そのため、初期設定のメッセージは最も端的に音を伝える言葉として、擬音語やオノマトペにしています。通知する方法としてスタンプや写真などの利用も考えはしました。

 実は最初の設計段階で、「どうすれば必要な情報を正確に検知することが可能か」という点に苦労しました。危険察知のために音を視覚化し通知するためには、音が発生したことだけでなく、音が発生した位置や音の種類も必要な情報であると考えたためです。

 これらの情報の特定は音センサーだけでは実現が難しかったため、別のセンサーの利用や新しいセンサーの開発など、様々な方法を検討しました。最終的には、音の発生には必ずモノの動きを伴うという点に着目し、動きを検知するための加速度センサーを導入することになりました。

 バックエンド側のプログラミングには初めて挑戦したので、Messaging APIの利用やセンサー側のプログラムとの連動の実装などでとても苦労しました(笑)。

チャットボットの可能性

――「おとみどりちゃん」で自信があるのはどんなところでしょうか。

佐竹:音の検知に加速度センサーを使用したことです。また、センサーを取り付けるだけですぐに使用できるので、取り付ける対象(モノ)は選びません。どんなモノに対しても、このシステムを簡単に導入することが可能です。

 さらに、メッセージはユーザーが設定できるので、自分だけのLINE BOTを作ることもできます。

メッセージデザイン

 ただ、メッセージの通知(Push)をメインに開発したため、チャットボットの魅力の一つである会話(Reply)のコンテンツ充実させられませんでした。会話コンテンツとしては、話しかけることでモノの状況を教えてくれる、ちょっとした日常会話ができるなどの機能を検討していました。

 LINE上からセンサーの感度設定を行えるような機能や、新規のセンサー登録や通知するセンサーの選択といった機能も検討していましたが、今回は実装には至りませんでした。

――今後、LINE BOTなどチャットボットにどんな期待をしていますか?

佐竹:LINE BOT AWARDSに参加した中で最も強く感じたのは、「チャットボットは話しかけてこそ真価を発揮する」ということです。これはつまり、チャットボットを手にしてもらい、話しかけてもらうことが前提となっています。考えてみれば、チャットボットにおいては当たり前のことです。

 しかし、チャットボットというと「こちらから話しかけると自動的に答えてくれるもの」「AIがまるで人間のように喋るもの」というイメージが強いと思われます。今や多種多様なチャットボットが開発されており、高機能で非常に便利なものがありますが、まだまだ多く人にとっては面白くて興味はあるけれども必要はない、遠い存在でしょう。だからこそ、話しかけたときだけ魅力を感じられるのではなく、その存在自体に魅力が感じられるようになればと思います。

 さらに言ってしまえば、チャットボットがまるでドラえもんのような存在になればいいですね。のび太はよく秘密道具に助けられていますが、のび太にとってドラえもんの存在意義は秘密道具だけではないでしょう。

 のび太はむしろ、1人の友人としてドラえもんを必要としています。チャットボットも、まるでのび太にとってのドラえもんのように、誰もにとって大切な友人になることを期待しています。

――最後に一言いただけますか?

佐竹:実際にLINE BOTの開発に挑戦したことは、チャットボットの可能性の大きさやサービス開発・提供の奥深さを知る機会になりました。これをきっかけとして、人が使いたくなるようなシステムの開発にどんどん挑戦してみたいと思います。

 LINE@ ManagerやMessaging APIのおかげで、僕たちのような学生でもチャットボットの開発に挑戦しやすい環境になっています。ぜひとも、オリジナリティあふれるチャットボットがたくさん生まれてほしいですね。

LINE BOTを作ろう!

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Messaging APIを使ったチャットボットの基礎と利用例

著者:立花翔
発売日:2017年5月11日(木)
価格:3,024円(税込)

本書について

チャットボットの開発は今や注目のテーマです。ユーザーが最も多いLINEで動くチャットボット「LINE BOT」への需要は今後ますます高まることでしょう。本書は、今すぐ使えるサンプルを作りながら、実装方法を楽しく学べる1冊です。

 



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著者プロフィール

  • 渡部 拓也(ワタナベ タクヤ)

     翔泳社マーケティング広報課。MarkeZine、CodeZine、EnterpriseZine、Biz/Zine、ほかにて翔泳社の本の紹介記事や著者インタビュー、たまにそれ以外も執筆しています。 Twitter@tiktakbeam

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