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小説執筆をプログラムで支援する(前編)~各段階におけるソフト編

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 小説家として2016年にデビューして、2冊目の小説が出ることが決まりました。プログラマーとして、どのように小説執筆をプログラムで支援しているか。前編では、各段階においてどのようなソフトがあるのか、実際に利用しているのかといった情報を、共有したいと思います。

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小説執筆とIT化

 いつもは『マンガで分かるプログラミング用語辞典』を描いている、クロノス・クラウンの柳井です。昨年、松本清張賞の最終候補に残った私の小説が、『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』として出版されました。その続編『顔貌売人 ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』が、2017年8月7日に出版されることになりました。前作は、プログラマの心理に肉薄した騙し合いになっていましたが、今作はそれだけでなく、情報技術を駆使した、犯人とのチェイスを描いています。

 デビューしてからはまだ1年ですが、小説を書いている期間自体は10年以上になります。そのあいだ様々なソフトを試したり、自作したりしてきました。ソフトウェア開発でも、開発段階によって様々なツールを使用するように、小説執筆でも段階によって様々なツールを利用します。

 本稿では、小説の執筆段階を分解しながら、その各段階でどのようなソフトを用いるのか解説していきます。小説だけでなく、記事やブログの執筆、技術的な文書の作成にも役立つ情報だと思います。

 では、各段階に分けて、話を進めていきます。

シリーズ2作目:顔貌売人 ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬
(文藝春秋刊、2017年8月7日発売、予約受付中)
シリーズ1作目:裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬
(文藝春秋刊、絶賛発売中)

企画/プロット

 まずは、小説を書く以前の段階です。企画をしたりプロットを書いたりするところです。この段階は大きく分けて、「情報を収集/蓄積する」「情報を整理する」「小説の設計図を作る」の3つの作業に別れます。

  • 情報を収集/蓄積する。
  • 情報を整理する。
  • 小説の設計図を作る。

情報の収集/蓄積

 情報の収集/蓄積は、大きく分けて「Webから」「本から」「リアルから」の3種類に分かれます。

Webから

 「Webから」の場合は、Webブラウザを使って情報を検索して収集します。私の場合は「Google Chrome」を利用しています。

 Webから情報の収集/蓄積を行なうツールには、「Evernote」のような情報集積ツール、古くは「紙copi」のようなツールがあります。

 私の場合は、こうしたツールを利用せず、調べたWebページのタイトルとURLを、テキストファイルに保存しています。その際、「Google Chrome」の拡張機能「Keyconfig」を使い、「Shift+C」でタイトルとURLを得られるようにしています。また、たまに「Keyconfig」では、タイトルとURLを取得できないWebページもあります。その際は、自作のブックマークレットを使い、タイトルとURLを取得しています。

Keyconfig
タイトルとURLを取得するブックマークレット

 また、直接文章をメモしておきたい場合は、タイトルとURLの後に、コピペして保存しています。Webページ自体を保存しておきたい場合は、Webページを「Ctrl+S」で保存することもあります。ただその場合、ファイルサイズが大きくなるので、開発者ツールで広告などを削除したあとPDFで保存することが多いです。

 特に、古いWebサイトで、そのページにしか情報がないような場合は、数年後にサイトごと消滅している可能性があるので保存するようにしています。ひどい時にはメモしていた情報が、1か月後に無料ホームページのサービスごと消滅したことがあるので、気を付けるようにしています。

 また、情報を調べる際は、なるべく辞書サイトでもその言葉を引くようにしています。辞書の情報の方が信憑性が高いのと、最近のWeb検索は新しい情報を優先的に表示して、信憑性が高い情報を必ずしも表示してくれるわけではないためです。

 Webで検索した情報が、Wikipediaの情報だった場合は、そこから用語を拾って、他のサイトをなるべく多く調べるようにしています。時々、ネットで出てくる情報が、全てWikipediaと同じ場合もあります。その際は、信憑性が著しく乏しいので、別の方法を検討する必要が出てきます。

 Wikipediaで役立つのは文献情報です。特定のジャンルを調べている場合は、購入予定の本のリストを作る際に活用します。また、Google翻訳を手軽に使えるようにブックマークレットを作っておき、各国語のWikipediaの内容を読み比べるのも役立つことが多いです。歴史的な出来事では、国の立場によって情報ががらりと変わっていることもあります。日本語のWikipediaの中には、英語のページの一部を翻訳したものもあります。また、英語の情報の場合は、Google Booksが役立つことも多いです。

本から

 「本から」の場合は、出先で読んでいることが多いので、紙の本ならスマホのカメラで撮影して、「Dropbox」経由でパソコンに保存しています。電子書籍の場合は「Kindle」を使っているので、コピーして「Dropbox」経由でパソコンに送り、あとでテキスト起こしをしたりしています。

リアルから

 「リアルから」の場合も、スマホのカメラで撮影して情報を記録します。あとは、メモ用紙にメモを取っておき、帰ってからパソコンに入力しています。鞄から、すぐにメモ用紙とシャープペンシルを取り出せるようにしています。リアルからでは音声の記録が手薄なので、音声レコーダーの購入を検討していますが、まだ実現していません。

 基本的には、なるべくテキストで情報を保持するようにして、あとで検索可能にしています。

 次ページからが、本格的なITの活用になります。様々な情報を整理するソフトウェアなどを使っていきます。

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この記事の著者

柳井 政和(ヤナイ マサカズ)

クロノス・クラウン合同会社 代表社員http://crocro.com/オンラインソフトを多数公開。プログラムを書いたり、ゲームを作ったり、記事を執筆したり、マンガを描いたり、小説を書いたりしています。「めもりーくりーなー」でオンラインソフト大賞に入賞。最近は、小説家デビューして小説も書いています(『裏切りのプログラム』他)。面白いことなら何でもOKのさすらいの企画屋です。 

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/10307 2017/08/01 14:00

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