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【デブサミ2018】セッションレポート(AD)

企業文化まで変えたDevOps発想の働き方改革ツール、スムーズな導入の鍵とは?【デブサミ2018】

【16-D-2】NRIの働き方改革 - 開発スタイルから文化まで変えた軌跡

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 現在、世を挙げて「働き方改革」が叫ばれている。この成否に関わる要因の一つがコミュニケーションだ。だがほとんどの企業は会議やメール対応に多大な時間を取られ、本質的なビジネスに関わるコミュニケーションは思うように進んでいない。野村総合研究所(NRI)では、2022年に向けた長期経営ビジョンの柱の一つである「生産革新」の実現に向けて、こうした課題にシステム開発部門による対応を進め、大きな成果を挙げつつある。ここで活用されているのが、ビジネスにおける生産性向上で定評のあるアトラシアンのツール群とNRIが独自に開発した機能やノウハウだ。これらを組み合わせた開発管理統合ツールを、これまでにNRIとパートナーあわせて9000名近くの関係者に導入。開発スタイルや社内外のコミュニケーションのあり方、企業文化を変革するとともに、そのツールを外部の顧客に販売するまでに至っている。

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DevOpsの改革プロセスをビジネスの世界にも積極的に応用

アトラシアン株式会社 ビジネスマネージャー 新村剛史氏
アトラシアン株式会社 ビジネスマネージャー 新村剛史氏

 初めに登壇したアトラシアンの新村氏は、自社のツールを「企業のチームのコミュニケーションおよびコラボレーションを支援し、あらゆるチームの可能性を解き放つもの」と説明する。これまでも情報共有やアジャイルなど、時代の要求に応えるさまざまなツールをリリースしてきた同社が現在重要なテーマの一つとして掲げているのが、「DevOps」だ。

 言うまでもなくDevOpsとは、開発担当者と運用担当者が連携しながら、ユーザーとデベロッパー双方の視点にもとづいて最適化されたソフトウェアやサービスの実現を目指す開発手法である。

 計画・設計から開発、運用、結果のフィードバックといった一連のサイクルの中で、開発プロジェクトに関わる全員が常に情報を発信し、参照しあうプロセスを通じて、製品はよりユーザーの要件に合致したものへと磨き上げられていく。アトラシアンでは近年、このDevOpsにおけるソフトウェア開発のPDCAサイクルを、ビジネスの世界に転用していく試みを積極的に進めているという。

DevOpsではソフトウェアのライフサイクルが繰り返し循環する

DevOpsではソフトウェアのライフサイクルが繰り返し循環する

 新村氏は、「働き方改革、すなわちこれまでのむだが多く合理性に欠けた働き方を、より賢くスマートに変えていくためには、ツールを導入するだけでは十分ではありません。私たちは、働き方やビジネスの本質、すなわち企業文化そのものを変えることがもっとも重要だと認識しています」と語る。

 ではその「企業文化の変革」のキーとなるものは何だろう。新村氏によると「異質なものを受け入れる姿勢」だという。事実、アトラシアンではここ数年、積極的にさまざまな国や文化を背景に持つ人々を社員に加えてきた。だがこれは、同社が成長期にあり、従業員を増やし続けるフェーズにあってこそ実現できたものだ。日本の多くの企業にとって、人材の流動性を高めたり、従業員規模を継続的に拡大したりすることは難しい場合もある。

 「そこで、いきなり人を変えるのではなく、企業のコラボレーションやコミュニケーションを支援するITツールを導入し、その展開を推し進めていくことが、企業文化の変革にチャレンジする上では賢明な選択肢の一つになりえます。今回のNRIのトライアルは、まさにその好例といえるでしょう」(新村氏)

自社の働き方改革を目指してアトラシアンのツール導入を決定

株式会社野村総合研究所 生産革新ソリューション開発一部 主任テクニカルエンジニア 中川直樹氏
株式会社野村総合研究所 生産革新ソリューション開発一部 主任テクニカルエンジニア 中川直樹氏

 NRI では現在、企業理念である「未来創発」の実現に向けた長期経営ビジョン「Vision2022」を推進中だ。その重要な柱の一つが「生産革新」であり、今回の「働き方改革」も、そうしたイノベーションの延長線上に位置付けられている。

 だが、いざ取り組もうとした時点で非常に多くの課題に気づいたとNRI 中川氏は振り返る。同氏が所属する生産革新本部は「最先端の生産開発技術に精通し、NRIグループ全体としての生産性と品質の向上を実現する」部署であり、今回の働き方改革プロジェクトでも主導的な役割を担ってきた。

「働き方改革」は長期経営ビジョンの理念にもとづいている
「働き方改革」は長期経営ビジョンの理念にもとづいている

 「むだな会議や縦割り組織によるコラボレーション欠如、現行業務を変えることへの抵抗感、Excel中心の文書管理など問題がありました。調査したところ、1日の約半分が会議とメール処理で終わっている部署もありました。まさに生産性向上のための改革は急務だったのです」(中川氏)

 生産革新本部では、直ちに自社の要件に適したツールの選定を開始。入念な検討を重ねた結果、「チャット」「タスク管理」「情報共有」「分散型バージョン管理」の機能を提供する、4つのアトラシアン製品の導入を決定した。

今回導入されたアトラシアンのビジネス向け製品とNRI社内での展開パッケージ形態
今回導入されたアトラシアンのビジネス向け製品とNRI社内での展開パッケージ形態

 2015年4月からツールの展開がスタート。2016年後半からはトップダウンによる各部署への導入が決定し、利用者数が急増した。2018年2月現在では、NRI社内だけで1780名、NRIとパートナーを合わせると9000名近くに達している。

メール量の劇的な減少と情報検索・収集のスピードアップを達成

 中川氏は、導入にあたって苦労したポイントを3つ挙げる。

(1)反対勢力の存在

 導入予定の各部署から「実績はあるのか?」「数年後にまた変えるのでは?」「使いこなせない気がする」といった抵抗があった。そこで新しいもの好きや若手が多い小さなプロジェクトをターゲットに突破口を開き、徐々に実績を作りながら拡大した。

(2)各部署から「わからない」の声

 大規模プロジェクトだけに、「使い方がわからない」というユーザーからの大量の問い合わせ対応にも苦心した。これには「生産革新本部が管理者となり設定を反映する」「機能制限を加えつつお勧めテンプレートを多数作成する」「根気よく説明会やハンズオンを実施」「軽めのツールから展開していく」といった施策を、ユーザーに寄り添い繰り返し行った。

(3)「現行保証」の要求

 本格展開にあたっては、「現行保証」、つまり「新しいサービスを利用してこれまでの業務が行えることを保証してほしい」「生産革新本部が展開していた既存ツールの機能は保証してほしい」といった声があった。これには現行業務のヒアリングを行い、新しい業務フローの提案を進めた。またプラグインを作成し、既存の機能保証と同時に標準化を図った。Excelを使いたいとの要望には、Excelの情報をJIRAに反映させるExcelマクロを外部ツールとして提供した。

 続いて中川氏は、ツール導入がもたらした改革の成果を紹介。中でも注目すべきは「メール量の劇的な減少」と「情報検索・収集に要する時間の大幅削減」だ。

 「拠点間のコミュニケーションにチャット機能を利用できるようになった結果、メールだけでなく電話時間も減りました。またアトラシアンの情報検索機能は強力なので、ツールにプロジェクト情報を格納しておき、必要なときにすぐに検索・利用できるのも大きな改善でした」(中川氏)

 生産革新本部がツールに対する評価を社内でヒアリングした結果、総合評価では5点満点の平均4点以上と、高いスコアをマークした。また時間削減効果は平均30分以上と、大きな改善が見られた。さらに専用ツールを利用して業務アプリケーションの利用状況を分析した結果でも、30分以上削減されたとの結果が出ている。

トップダウンとボトムアップの合わせ技で企業文化を変える

 今回の「働き方改革」が組織文化にもたらした変化を、中川氏は3つ挙げる。

  1. 縦割り文化の解消:他チームとのコラボレーションが自然発生。
  2. チーム文化の統一:各チームで同じツール、同一の管理を導入した結果、全社レベルでの標準化が進行。
  3. 気兼ねないコミュニケーション:チャットの方がメールよりも心理的なハードルが低い。

 そして最後に中川氏は、アトラシアン製品を導入・普及する際に意識すべき3つのポイントを挙げた。

  1. トップダウンでの導入推進とボトムアップでの普及:トップの意思決定で反対勢力を抑え、現場や若手からの推進で口コミが広がる。
  2. 導入するソフトウェアの順序を意識する:簡単に使えるソフトから導入を実施。
  3. アトラシアン ネイティブを作る:若手や新入社員にとって「アトラシアンのツールを使うのが当たり前」の文化を醸成する。

 NRIでは自社での導入成果をもとに、アトラシアン製品と自社で培った大規模プロジェクト・高品質の管理のノウハウを組み合わせた業務改革・生産性向上のためのパッケージ「aslead(アスリード)」をリリースした。これについて中川氏は、「私たちが自ら取り組み、成果を体感したベストプラクティスは、業務のむだやチームワークの問題で悩んでいる方々のお役に立つと確信しています」と力強く語り、セッションを終了した。

お問い合わせ

 アトラシアン株式会社

 株式会社野村総合研究所

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://codezine.jp/article/detail/10707 2018/03/12 14:00

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